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2022/11/12 18:00

洗濯物は5時間以内に乾かす! 部屋干しの生乾き臭・戻り臭を根絶する方法

降水量では梅雨を上回る量の雨が降る秋。梅雨と同様、部屋干しの機会が増えますが、悩ましいのが“臭い”です。部屋干しに効果的な洗剤の選び方や、臭いを発生させない干し方、空調の活用法など、臭わせないためのコツを知っておきましょう。さらに、それでもしつこい「戻り臭」に効く最後の一手はとは? リネットお洗濯アドバイザーの関澤磨衣子さんに教えていただきました。

 

部屋干しで洗濯物に生じる「生乾き臭」と「戻り臭」

天日にさらす外干しに比べて、洗濯物の臭いが悩みのタネの部屋干しですが、そもそも部屋干しにすると、なぜ臭いが生じやすいのでしょうか? まず臭いの種類を整理しておきましょう。

 

・雑菌の排泄物による「生乾き臭」

「部屋干しの際の生乾き臭は、衣類に残った雑菌、モラクセラ菌が原因で、雑巾のような臭いが生じます。モラクセラ菌は洗濯物だけでなく、ヒトや動物の口や鼻などの粘膜にいる常在菌で、菌そのものは臭いません。部屋干しをすると臭いが気になるのは、モラクセラ菌が洗濯物に付着した後、温度20〜40℃、湿度60%以上の環境で水分や皮脂を栄養に繁殖し、排泄物を出すから。この排泄物が臭いを発生させています。

部屋干しの場合、外干しに比べて洗濯物が完全に乾くまでに時間がかかるため、長く菌が繁殖しやすい環境に置かれることになります。臭いを発生させないためには、一般的に5時間以内に乾かすのが理想です」(リネットお洗濯アドバイザー・関澤磨衣子さん、以下同)

 

・汗によって雑菌が活性化する「戻り臭」

一度洗濯物が乾いて臭いがなくなったように感じても、着用しているうちにふたたび臭いが気になることのある、いわゆる戻り臭も気になるところ。戻り臭はなぜ生じるのでしょうか?

 

「モラクセラ菌の特徴としては、乾燥や紫外線に強く、一度衣類で増殖すると外干しをしても一部は残ること。衣類に雑菌がたくさん残った状態だと、汗などが付着することで再び衣類に水分が含まれるので、菌が活性化してしまいます。そうして排泄物が増えるとまた臭いが気になってくるのが、戻り臭と呼ばれるものです。モラクセラ菌は熱には弱いという特性があるので、戻り臭が気になる場合は、熱をうまく利用して撃退するといいでしょう」

 

衣類に雑菌が残ってしまう2つの原因とは?

部屋干しの生乾き臭も戻り臭も、洗濯後に衣類に残った雑菌が臭いの元になっているとのこと。では、なぜ綺麗に洗濯したはずの洗濯物に雑菌が付着しているのでしょうか? その原因は2つあるようです。

 

1.洗濯で落としきれなかった

「きちんと洗濯をしたつもりでも、繊維の奥に残った汚れがあると、そこから雑菌が繁殖してしまいます。すすぎが足りず皮脂汚れが落としきれてなかったり、洗濯の水温が低くモラクセラ菌が死滅していなかったり、一度にたくさんの量の洗濯物を洗うことで洗濯機が本来の能力を発揮できていなかったりすることが要因として挙げられます」

 

2.洗濯槽のカビ

「洗い残した衣類に残っている雑菌だけでなく、洗濯槽の黒カビが衣類に付着することで臭いの原因になります。合成洗剤の溶け残りや衣類に付着した皮膚のタンパク質や汚れなどが空気中のカビの栄養となり、洗濯槽の中で黒カビを発生させています。黒カビが繁殖しやすい洗濯槽は、洗剤のカスを除去し、湿気を取ることを意識することが大切です」

 

原因を知ったところで、その菌を付着させない、またしっかり落とす洗濯のコツを教えていただきましょう。

 

臭いの原因を断つ! 今日からできる洗濯テクニック

臭いを防ぐためには、何と言っても臭いの原因となる汚れ、雑菌対策をしっかりすることが大切。洗濯をするときに手軽にできるテクニックとは?

 

1.洗濯時の水の温度は高めに!

「洗濯をする際、水を40度くらいの高めの温度にすることで、皮脂汚れを落としやすくし、雑菌の繁殖を防ぎます。エコの観点からお風呂の残り湯を使う場合には、皮脂が浮いていたりするので、『洗い』にのみ使うようにした方がいいですね。『すすぎ』にはきれいな水を使って、汚れを流しきりましょう」

 

2.重曹をプラスする!

「『炭酸水素ナトリウム』『重炭酸ソーダ』とも呼ばれる重曹。弱アルカリ性の重曹は、皮脂や油など酸性の汚れに強く、漂白・消臭・吸湿作用も期待できます。いつもの洗剤に重曹を加えて洗濯をすると、汚れを落としやすくなり、体臭や食べ物の臭いの消臭にも役立ちます。水量10リットルに対して重曹大さじ1杯程度を目安に入れるといいでしょう」

 

3.一度にたくさん洗濯をしない!

「洗うときは、洗濯機の中に洗濯物を詰め込み過ぎないように気をつけましょう。目安としては、洗濯機の容量の7〜8割になるように洗濯物を入れて洗うのが最適です。性能の優れた洗濯機を使っていても、洗濯槽に目いっぱい詰め込んでしまうと、衣類が動かずうまく攪拌できなくなってしまいます。そうすると洗濯機の洗浄力が極端に低下し、汚れが落ちにくくなります」

 

4.洗濯槽をこまめに洗浄する!

「洗濯槽の黒カビが臭いの原因になるので、1か月に1度は洗濯槽を洗浄しましょう。徹底的にカビを防ぐなら、『塩素系漂白剤』や『クリーナー』。塩素系漂白剤には劣るが、強い発泡力で洗濯槽にこびりついたカビや汚れを落としてくれ、酸素系漂白剤よりも刺激が少ない『酸素系漂白剤』。環境に優しく槽洗浄をしたいなら『重曹』と『クエン酸』。それぞれのメリットやデメリットを知った上で洗浄方法を選択し、洗濯機のメーカーや機種によっても槽洗浄の方法が異なる場合があるので、必ず洗濯機の取扱説明書を確認してカビ予防に取り組みましょう。定期的に掃除をしてもカビが発生してしまったら、最も効果的なのは、各洗濯機メーカーから発売されている塩素系専用クリーナーです。次亜塩素酸ナトリウム配合で、殺菌力が高いので、カビを分解して除去してくれます」

 

生乾き臭・戻り臭を防ぐための洗剤の選び方

臭い対策には、洗剤選びも重要です。ところが、ドラッグストアに行っても、最近は洗剤の種類が豊富なため、どんな洗剤を選べばいいのか迷ってしまいますよね。「部屋干し臭を防ぐ」と謳った商品も数多く並んでいますが、どんな洗剤を選べばいいのでしょうか?

 

・弱アルカリ性洗剤

「中性洗剤よりアルカリ性洗剤の方が洗浄力に優れているので、汚れをしっかり落とすのにはおすすめです。ただし、普通の洗剤に比べて強い液体のため、衣類に負担をかけてしまうことも。色柄物やシルクの素材への使用は慎重におこない、洗濯表示もよく読んだ上で使うのが安心ですね」

 

・酸素系漂白剤

「過炭酸ナトリウムを主成分とした酸素系漂白剤も、アルカリ性が強く皮脂汚れを落としやすい特徴があります。普通に洗濯してもまだ臭いが気になる場合には、いつもの洗剤に酸素系漂白剤を足して洗濯するのがおすすめです。塩素系漂白剤と異なり、色柄物の衣類にも使え、洗剤と併用できるのが助かります。尚、生地を傷めたり色落ちの原因になることもあるので、必ず容量を守って使いましょう。酸素系漂白剤も弱アルカリ性洗剤と同様、衣類への負担は大きいので、毛や絹の繊維製品には使わない方がいいですね」

 

・部屋干し臭対策専用の洗剤

「最近は部屋干し臭対策専用の洗剤も多く発売されています。こうした、臭いに特化した洗剤を使うのはお手軽ですね。一方で、時短を推している洗剤に関しては洗浄力は弱めになっているので、十分な効果が期待できない場合も。臭いが気になる場合は避けた方が無難でしょう」

臭いが気になる衣類には洗浄効果・殺菌効果の高い洗剤、デリケートな素材には生地を傷めない洗剤を使うなど、目的に応じて洗剤の使い分けをする必要があります。

 

一人暮らしでつい洗濯物を溜め込みがち、臭いはどう対策する?

「洗濯物を溜め込まないようにするのが一番ですが、一人暮らしでこまめに洗濯をするのが難しいのであれば、脱いだらすぐに直接洗濯機に入れるのではなく、ハンガーなどに干して乾かしてから洗濯機に入れるようにするといいですね。また、洗濯物を溜めておく洗濯カゴを通気性の良いものにするのも効果的です。

ほかにも、40度くらいの高めのお湯で洗うと雑菌を撃退しやすくなります。お風呂の残り湯を上手に使えば、エコの観点からも無駄なく洗濯できます」

 

雑菌が繁殖する前に乾かす! 洗濯物の干し方

洗濯の仕方を工夫し、できる限り雑菌を落としても、洗濯物が乾くまでの時間が長ければ長いほど、湿気により雑菌が繁殖してしまいます。洗濯の仕方と同じくらい気をつけたいのが、「早く乾かす」ということ。関澤さんによると、少しでも早く乾かすためには、【温度・湿度・風】の3つをうまくコントロールすることがカギになるようです。

 

【温度】

「体感としてわかると思いますが、温度の高い夏の方が洗濯物が早く乾き、温度が低くなるにつれて乾きづらくなります。寒すぎる部屋では乾くのが遅くなるので、冬場は暖房が効いている部屋などに干すのがいいですね」

 

【湿度】

「ジメジメしているほど、洗濯物は乾きづらくなります。除湿機やエアコンの除湿を活用して、部屋の湿度を下げるようにすると乾きが早くなります。秋や冬など、もともと湿度が低い時期は湿度を下げる工夫は特に必要なく、温度や風をコントロールして乾きやすい環境をつくる工夫をするのが望ましいです」

 

【風】

「風が当たることで、衣類の繊維から水分を放出させやすくなります。窓が開けられる環境であれば、2箇所以上窓を開けて通気性をよくしたり、扇風機やサーキュレーターなど風を送れる電化製品を使用して洗濯物に満遍なく風を当てられるようにしたり。扇風機やサーキュレーターを使う場合は、洗濯物の『真下から風を当てる』のがポイントです。首を真上にも向けられるサーキュレーターは使い勝手がいいですね。冬も洗濯物を干す部屋と生活する部屋を分けるなどして、サーキュレーターや扇風機を回すのが望ましいです」

 

洗濯物を干すときのポイントとは?

POINT1.洗濯物同士の間隔を空ける!

「風通しを良くするという点では、洗濯物同士の間隔は最低でも拳1個分は空けましょう」

 

POINT2.部屋の真ん中に干す!

「間取りによってはちょっと難しいかもしれませんが、部屋の壁側や窓側ではなく、部屋の中央に干せるのがベストです。部屋の端は空気が動きづらいので、洗濯物が乾くのが遅くなってしまいます」

 

POINT3.洗濯が終わったらすぐに干す!

「脱水後の洗濯槽は、湿度が高く雑菌が繁殖しやすい環境です。洗濯機の中に洗濯物を長く放置するとその間に雑菌が繁殖してしまうため、洗濯が終わったら速やかに洗濯機の中から出し、干すようにしましょう」

 

POINT4.長いものを外側に、短いものを内側に干す!

「ピンチハンガーに複数の洗濯物を干すときは、スポーツタオルなど長さのあるものを外側に、靴下など短いものを内側に干してアーチ型にすると風が通りやすくなります」

写真提供=リネット

 

POINT5.アイテムごとに干し方を工夫する

・パーカ
「フードの部分の生地が重なり、乾きづらいアイテムです。パーカを干すハンガーとは別に、もう一本用意した針金ハンガーを輪状に曲げてフードの中に入れて干すと、生地と生地の間に風が通りやすくなります」

写真提供=リネット

 

・バスタオル
「バスタオルなどの大物は、特に部屋干しでは時間がかかって臭いが残りがちですが、早く干すためには、ピンチハンガーに蛇行するようにして干すのがおすすめです。二つ折りにすると風通しが悪くなり、乾きが遅くなります」

写真提供=リネット

 

・ズボン
「ズボンはポケットの中が最も乾きづらくなります。ポケットを外側に出して干しましょう」

 

POINT6.乾燥機を使用する

「乾燥機を持っていたり、浴槽に乾燥機がついていたりする場合は、部屋干しをするよりもそれらを使ってしまうのが一番手っ取り早いですね」

 

熱を使ったしつこい「戻り臭」の撃退方法

しつこい戻り臭は、さきほど解説いただいたように「モラクセラ菌には熱に弱い」という特性を利用すれば防ぐことができます。その方法を2種類教えていただきました。

 

アイロンの「熱」を活用する

「時間に余裕があれば、脱水が終わってすぐにアイロンをあてましょう。シワを伸ばせて殺菌効果もあるのでおすすめです。菌の増殖の原因となる水分が即座に蒸発します。ただし、濡れた状態でアイロンをかける場合は、焦げつき防止のため、洗濯表示を確認して素材に適したアイロン温度に設定し、同じ場所に長くアイロンをあてないよう注意しましょう。て洗濯物を干して乾燥させてからアイロンをしても同じような効果はあるのですが、乾いてからだとシワが伸ばしづらくなってしまうので、濡れた状態がベストだと思います」

 

粉洗剤で「つけおき洗い」

「戻り臭が気になる衣類は、40度くらいのお湯に粉洗剤を溶かして20分程つけおきすると効果的です。つけおきした後は通常どおり洗濯機に入れて他のものと一緒に洗濯をしてしまってOK。その場合は、いつもの洗剤量から粉洗剤の分を減らしておきましょう。弱アルカリ性やアルカリ性の粉洗剤は、洗浄力で言えば液体洗剤やジェル洗剤よりも優秀な傾向にあります。ただし、粉はうまく溶けていないと洗濯物に白く残ってしまうことがあるので、しっかり溶かして使うようにしましょう」

 

最後にこんなアドバイスもいただきました。

 

「雨の多い季節は洗濯方法や干し方を気をつけるだけでなく、コインランドリーに出したり、衣類によってはクリーニングを利用するなど、うまく使い分けることも大切です。そういったサービスでは大量の洗濯物を一度に洗濯でき、乾きづらい大物も短時間で乾燥させることができるので、負担感なく部屋干し臭を防ぐことにつながります。自分の時間もできるので、無理をしすぎず快適に乗り切りたいですね」

 

【プロフィール】

リネットお洗濯アンバサダー / 関澤磨衣子

繊維製品品質管理、クリーニング師、消費生活コンサルタント。アパレル業界で14年にわたり、販売、品質保証に関するお客様対応に携わる。現在は株式会社ホワイトプラスに勤務し、リネットお洗濯アンバサダーとして、お客様相談室の管理を務める。

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