近年、賃貸物件を含むほとんどの住宅の床にはフローリングが使われています。掃除が楽でどんなインテリアにもフィットしやすく、人気の床材ですが、ホコリや粉塵のほか、食べこぼしや皮脂などで、意外と汚れているもの。とはいえ、毎日水拭きする手間はかけられないし、強力な洗剤での洗浄を繰り返しているとフローリング自体を傷めてしまう心配が……。
今回は、お掃除のスペシャリストであるクリンネストの丸マイさんに、フローリングの正しいお掃除方法について教えていただきました。
そもそも「フローリング」とはどういう素材?
フローリング材には、大きく分けると「無垢(単層)フローリング」と「複合(合板)フローリング」の2タイプがあります。
「とくに賃貸物件では、ベニヤを張り合わせた合板の表面に化粧材を張り合わせた複合フローリングが多く使われています。無垢材のフローリングよりも安価でデザインのバリエーションが豊富。さらに遮音や床暖房などの機能性を持たせることができる点も人気の理由です。複合フローリングは掃除がしやすく、固く絞った雑巾であれば水拭きも中性洗剤の使用も問題ありません。
一方の無垢フローリングは、丸太から切り出して、自然な状態のままで製材・加工した材木のことです。“無垢”と言っても、多くが塗装を施されています。木のもつ美しい質感と肌触りが魅力ですが、自然塗装の場合は耐水性が弱く、汚れや染みになりやすいというデメリットがあります。今回は、一般的な賃貸物件で多く使われている、複合フローリングのお手入れについてご紹介します」(クリンネスト・丸マイさん、以下同)
フローリングの
普段の簡単お手入れ
まずは、日常的におこなうべきフローリング掃除について教えていただきました。
「ゴミやホコリ取りを取るために、掃除機やフローリングモップを使います。とくにダイニングなど汚れやすい場所は、フローリングモップで毎日掃除することで、人の動きや空気の流れでゴミを部屋中に広げることがなく、頑固な汚れにもなりにくいためオススメです。併せて週1程度の水拭き掃除も、掃除機やフローリングモップで落としきれなかった汚れまで落とすことができるので、効果的です」
1.掃除機をかける
「掃除機がけは週1〜2回行います。ポイントは、風上から風下に向かってかけていくこと。窓の方から始めて、下がっていくイメージです。風上から手前にかけていくことで、掃除した場所にホコリが戻りにくくなるのでおすすめです」
「ヘッド部分はWを描くように動かすと、効率よくゴミを吸い取ることができます」
2.フローリングモップをかける
「フローリングモップかけは毎日行います。フローリングモップも掃除機と同様、ヘッドはWを描くように動かすと、ホコリや髪の毛を簡単にオフできます」
3.水拭きをする
「水拭きは掃除機かけとセットで、週1回程度行います。このとき注意したいのが、硬く絞った雑巾やクロスで拭くこと。水気が残ることでフローリングを傷めないようにする工夫が大切です。木目に沿って、力を入れて拭きましょう」
洗剤を使う前に
雑巾やクロスの見直しを
丸さんは、フローリング掃除に洗剤を使うのは最後の手段だと言います。
「フローリングに水拭きでは取れない汚れがあるときは洗剤を使いますが、洗剤は最後の最後でよくて、その前に雑巾やクロスを見直していただきたいですね。古着を水拭きに使っている方がいらっしゃいますが、掃除には不向きです。例えばTシャツやシーツなど、生地が薄すぎると床との密着度がなく、手の中で丸まってしまいます。するとせっかく拭いても拭きムラが出てしまうんですね。私が愛用している水拭きクロスは以下の通りです」
「1つ目が、マイクロファイバークロスです。極細繊維を使用しており、 拭き跡がスッキリでキズがつきにくく、ホコリを残さずきれいに拭きとれます。糸クズも発生しないため、鏡やガラス面にも使いやすいのが特徴です。乾いた布で仕上げ拭きする必要もありませんので、とても便利ですよ」
「比較的新しい食べこぼし汚れなどであれば、洗剤を使わなくても、マイクロファイバークロスでキレイにすることができます」
「続いて、スポンジクロスです。セルロース製で繊維が細かく、材質にぴったりフィットするのが特徴です。吸水性があり、水拭き後の水残りもなく、クロス自体に速乾性もあるため、雑菌の繁殖を防げます。繊維が細かく密着度が高いので、少しの力でしっかり拭くことができます。洗剤を使わずに水拭きをしたい時には、スポンジクロスがおすすめです」
「万能なのが不織布でできたカウンタークロスです。丈夫で洗剤拭きに適しています。メッシュ素材で薄いので、乾きやすく衛生管理がしやすいのもポイントです」
洗剤を使う汚れとは?
洗剤はフローリングの素材を炒める危険を回避するためにも、水拭きではどうしても取れない汚れに留めるべきだという丸さん。洗剤を使う汚れには、どんなものがあるのでしょうか?
1.皮脂汚れ
「素足で歩くご家庭は皮脂汚れがつきやすいですね。水拭きである程度はきれいになりますが、黒ずみがひどい場合は、洗剤の液性をよく確認し、洗剤拭きを行います」
「洗剤は中性・弱アルカリ性程度のものを使用してください。ただし、必ず希釈して使います。希釈の目安としては、2リットルの水に対し、ペットボトルのキャップ(スクリューの上の線)2杯程度の分量の洗剤です。床に洗剤が残ってしまうとワックスの変色やシミの原因にもなるため、注意が必要です。
また、お子さんやペットがいるご家庭では、洗剤拭きの後に水拭き仕上げをおすすめします。
汚れ落としは、洗剤の力だけに頼らずとも、汚れによって、お掃除の頻度にメリハリをつけたり、前述のように掃除用のクロスを見直して水拭きだけで対応することもできます。汚れたからとすぐに洗剤を手に取るのではなく、環境や暮らし方のニーズに合ったお掃除方法を選択してみるのも、一つの方法だと思います」
2.カビ
「フローリングに塩素系漂白剤やカビ取りの薬剤は、木材を傷めたり変色の原因になったりするため使えません。まずは、除菌アルコールやエタノール水でそっと拭き取ってみましょう。水拭きで取れない場合は薄めた中性洗剤で洗剤拭きをしてみてください。軽度のカビであれば簡単に除去できますが、頑固な汚れはフローリングを傷める原因になってしまうので、専門家に依頼するのがおすすめです。まずは、湿気がたまらないよう空気の循環に努めたり、家具やモノの配置を見直すことも大切です」
3.クレヨンの落書き
「マイクロファイバークロスで水拭きすれば大抵は落ちそうですが、頑固な汚れは、薄めた中性洗剤をつけたクロスで拭き取ります。さらに溶剤としてエタノールを使うこともできます。エタノールは除菌用のアルコールに含まれますので、除菌用アルコールをクロスに含ませて落とすこともできます。ただ、時間の経過によっては落ちないものもありますので、落書きをしたらすぐに落とすことが肝心です」
フローリングを掃除するその前に
いくらフローリングをピカピカに磨いたとしても、そのほかの部分にホコリが溜まっていては、元も子もありません。
「私たちが掃除にかけられる時間は決まっています。だからこそ、たった1回の掃除でもしっかり効果を得ていただきたいと思っています。そのために大切なことが、上から下に向かって掃除していくということ。例えばこのブラシを使って、壁のヘリ(巾木)に溜まったホコリをオフしてからフローリングを掃除するのとそうでないのとでは、掃除の仕上がりに差が生まれると思いませんか。フローリングを念入りに掃除する前に、テレビボードのホコリを取るなど、周辺の汚れにも目を向けてみてくださいね」
フローリング掃除を継続する秘訣
きれいなフローリングを保つために欠かせないのが、継続的に掃除をすること。わかってはいても、この“継続”が難しいという方は少なくありません。無理なく掃除を続ける秘訣はあるのでしょうか?
「全体を掃除しなければ! と思うとついおっくうになり、結局後回しにしがちです。そこで、ダイニングテーブル周りやキッチンなどのよく汚れる箇所は毎日フローリングモップをかけ、それ以外のフローリング部分は週1回など、掃除の頻度を変えると気持ちも楽になりますし、効率的に作業できると思います。
また、掃除に適した道具を使うと仕上がりに差が出るので、掃除をすること自体が楽しくなってきますよ。ほかにも、何分でできるか時間を測って掃除をしてみると、意外に短時間でできることがわかりますし、継続すればさらに時間が更新され、モチベーションにもつながるのではないでしょうか」
フローリングに傷がついてしまったら?
続いて、万が一フローリングに傷がついてしまった場合のお助けアイテムについて、丸さんに紹介していただきました。
東山「リペア家具カラー6色セット」 1089円(税込・公式オンライン価格)
「フローリングはもちろんのこと、テーブルや椅子などの色落ちの補修を簡単に行うことができます。筆ペンタイプなので、細かな部分も自然な仕上がりに塗ることができます。色も6色あり、さまざまな木目調インテリアに対応可能です」
建築の友「かくれん棒ミニ・ヘラ付き4色セット」1139円(税込・公式オンライン価格)
「フローリングのキズににすり込んだ後、ヘラですき取ります。仕上げに木目を書き足せば、キズが目立たなくなります。かくれん棒同士で調色できるので、自然な色合いに。ペットやお子さんのいる家庭でも安心して使用できる、ロウタイプの補修材です」
建築の友「住まいのマニキュア ブリスターパック単色」各509円(税込・公式オンライン価格)
「フローリングのキズや色あせの補修におすすめ。初心者でも使いやすい、筆ペンタイプです。床暖房のフローリングにも使用できます。キズのへこみが気になる場合は『住まいのマニキュア』で色を合わせてから『かくれん棒』でキズをうめるときれいに仕上がります」
「水拭きをする際にはクロスを硬く絞り、水気を残さない」「洗剤を使うのは最終手段。使用する時には必ず希釈する」などのポイントを押さえれば、フローリングのメンテナンスはそれほど難しくないということがわかりました。適した道具を賢く使って、きれいなフローリングを保ちましょう。
【プロフィール】
整理収納アドバイザー・クリンネスト2級認定講師(お掃除スペシャリスト) / 丸 マイ
整理収納アドバイザー1級、整理収納アドバイザー2級認定講師、クリンネスト(お掃除) 1級、防災士。片づけが苦手な方やもっと片づけのスキルをアップしたい方に向けて、整理収納アドバイザー2級認定講座、片づけサービスを行う。日々忙しい方々の休日が、家事や買い物など平日の準備で終わらないために、効率の良い家事の動線と動作を考えた『片づけ』を提案している。夫、大学生、中学生のお子さんの4人家族。
HP