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2024/8/16 19:30

一人暮らしの自炊にまず必要なものは?絶対用意すべき調理器具・調味料と買い出しのコツ

一人暮らしは、自分らしい生活を楽しむ第一歩。新生活への期待に心が躍る一方で、初めての環境には不安や疑問がつきものです。この連載では、「一人暮らしの○○の基本」をテーマに、一人暮らしの衣食住にまつわるさまざまなヒントをジャンル別にまとめ、紹介していきます。

 

第1回は「料理の基本」。前編となる今回は、一人暮らしアドバイザーで料理家の河野真希さんに、自炊を始めるにあたって用意しておきたいものや、買い出しのコツについて紹介します。

 

 

一人暮らしこそ自炊すべき理由

 

日々の仕事に忙しく、外食やテイクアウトのお弁当、惣菜を買って済ませることが多いかもしれません。しかし、それだけだとどうしても偏った食生活になってしまいます。

 

栄養が偏りがちな一人暮らしこそ、取り入れたいのが自炊。河野さんは自炊のメリットについて、「一番は安く健康的な食事ができること」と話します。

 

「外食やテイクアウトの食事に頼る生活を続けていると、食費が高くなるだけでなく、野菜不足やカロリー過多により栄養バランスも偏りがちです。その点、自炊をすれば食費を節約しながら、栄養バランスを意識した食事を取ることができます。
ご飯と汁物、おかず一品という一汁一菜スタイルにすると、必要な栄養が整いやすく、自炊も続けやすくなります。毎日のことなので、無理なく自炊を取り入れてほしいですね」(一人暮らしアドバイザー 兼 料理家・河野真希さん、以下同)

 

総務省統計局の「家計調査」(2024年)によると、2023年の34歳以下の働く単身世帯の食費は、外食やテイクアウトも含め1カ月で平均3万8668円。2022年の3万5014円と比較すると、月平均で約3500円も増加しています。

 

物価高騰の影響もあり、家計の負担が増加している昨今。支出の中でも大きな割合を占める食費を抑えるためにも、自炊は非常に効果的です。これまで料理をしたことがない人も、一人暮らしを機に自炊にチャレンジしてみましょう。

 

初めて料理をする前に
料理ビギナーが揃えておきたいアイテム

自炊を始める前にまずやらなければならないのが、必要な道具を揃えることです。料理初心者の方が揃えておきたい基本のキッチンツールやキッチン家電の選び方のポイントについて、河野さんに教えていただきます。

 

自炊中心で生活する人はもちろん、外食やテイクアウトの頻度が高い方も、道具はある程度揃えておくと安心です。キッチンツールの多くは100円ショップでも購入できます。初めから高いものを揃えても使いこなせないことがあるので、まずは必要最低限のものを安く購入して、自炊に慣れてきてから買い足しや買い替えを検討してもいいでしょう。

 

■ キッチンツール

 

・包丁・まな板
「包丁は肉・魚・野菜すべてに使える三徳包丁が1丁あれば十分です。1000~2000円程度のもので、刃渡り18cmほどの、扱いやすいステンレス製の包丁を購入しましょう」

 

・フライ返し・お玉・菜箸・トング
「フライ返しやお玉、トングは耐熱性の高い樹脂製やステンレス製のものを選びましょう。菜箸は箸の先に滑り止めの凸凹があるものを選びます」

 

・ざる・ボウル
「電子レンジで使用できる、耐熱性の高いものがおすすめです。同じサイズのざるとボウルがセットになっているものが便利です」

 

・ピーラー・キッチンバサミ
「包丁やまな板がなくても手軽に食材をカットできるので、非常に重宝します」

 

・計量スプーン
「基本的には大さじ・小さじがセットになっています。とくに料理初心者の方は、調味料などはレシピの分量を守って計るようにしましょう。計量カップもあると便利です」

 

・フライパン
「直径20~26cmの深型を選びましょう。主に焼く・炒める調理で使うイメージがあるフライパンですが、深型のものなら鍋の代わりに用いることもできるので、煮込む・茹でるなど調理の幅が広がります。フタがセットになっているものがおすすめです」

 

・鍋
「直径16~18cm程度の片手鍋があると良いでしょう。フライパン同様、フタつきのものをおすすめします」

 

■ キッチン家電

自炊の頻度に関わらず、用意しておきたいのが冷蔵庫と電子レンジです。ライフスタイルに応じて、炊飯器などその他のキッチン家電も検討しましょう。

 

・冷蔵庫
一人暮らし向けの冷蔵庫の容量の目安は100~150Lですが、自炊の頻度によって、購入する容量の目安が変わります。
「外食やお弁当、お惣菜を購入することが多い方は、コンパクトな100~150Lのモデルがおすすめです。もし飲み物を入れるときくらいしか使わないという方であれば、100L以下のモデルも販売されています。日常的に料理をする方であれば、少し大きめの150~200L、またはそれ以上のモデルを選ぶと良いでしょう」

 

・電子レンジ
主に単機能レンジとオーブンレンジ、スチームオーブンレンジがあります。一人暮らしの場合は容量20L以下のオーブンレンジがおすすめです。
「単機能レンジは比較的安く購入することができますが、その名の通り温め機能のみのシンプルなレンジなので、やはり料理の幅は狭くなります。家電はなかなか買い替えができないので、初めからオーブン機能やグリル機能、トースター機能などがついたオーブンレンジの購入をおすすめします」

 

・炊飯器
炊飯器は必須ではありませんが、あると便利な調理家電です。
「お米は鍋やレンジでも炊くことができるので、炊飯の量や頻度が少ない場合は炊飯器がなくても困らないかもしれません。もし購入する場合は、3合炊きがちょうど良いと思います。最近の炊飯器には、ボタンひとつで調理できる機能がついたものもあります。圧力調理なども簡単にできるので、幅広い用途に使いたいという方にはおすすめです」

 

料理道具研究家が愛用する料理の厳選7つ道具と便利グッズ

 

まずは基本の「さしすせそ」から!
あると便利な食材・調味料

料理に欠かせない調味料ですが、いざ自炊を始めるとき、どんな調味料を揃えておけば安心なのでしょうか? 一人暮らしでよく使う調味料や、常備しておきたい食材を河野さんにピックアップしていただきました。

 

■ 必須の調味料は「砂糖、塩、酢、醤油、味噌」

 

最低限用意すべきなのは、「砂糖、塩、酢、醤油、味噌」。和食の味付けの基本となる調味料で、『料理のさしすせそ』という、頭文字を取った語呂合わせでも知られています。

 

「とくに味噌は、余った野菜などを入れて味噌汁を作れば、簡単に汁物を一品追加することができます。だし入りの味噌も販売されているので、ぜひ常備してください」

 

■ あると便利な調味料

 

・ケチャップ・マヨネーズ・ソース
「料理の味付けや仕上げなどに使うのはもちろん、購入した惣菜などにかけて楽しむこともできるので、一人暮らしの方は持っておくととても便利です。ケチャップとマヨネーズをまぜてオーロラソースにするなど、ほかの調味料と組み合わせることで使い方の幅が広がります」

 

・焼肉のたれ・めんつゆ・ポン酢
「加工調味料にはさまざまな調味料が調合されています。たくさんの調味料を揃えなくても手軽に本格的な味付けを楽しむことができる、使い勝手の良い調味料です。どれかひとつでも持っていると、幅広い料理に応用できます」

 

・食用油
「油は炒め物などの加熱調理には欠かせません。いろんな種類の油がありますが、まずは使い勝手の良いサラダ油を用意しておくと良いでしょう。料理の幅が広がってきたら、用途や好みに応じてごま油やオリーブオイルなどの購入も検討してみてください」

 

■ 常備しておきたい食材

スパゲティのほか、じゃがいも玉ねぎなどの野菜や、わかめなどの乾物、缶詰類など、常温で長期保存が可能な食材を常備しておくといいでしょう。冷蔵品であれば、“充填豆腐”と呼ばれる水が張られていないパックの豆腐や、納豆、卵、チーズ、ソーセージは、比較的日持ちするのであると便利です。

 

また、インスタントやレトルトの食品ゼリー飲料なども、常備しておくと災害時や急病時の非常食としても使えます。賞味期限は定期的にチェックし、見直しをしておきましょう」

 

無駄遣い&食品ロスをしない
かしこい買い物のコツ

 

一人暮らしの場合、購入した食材は基本一人で食べ切らなくてはなりません。食材を余らせてしまうと、「気がついたら期限が切れていた」「鮮度が落ちて悪くなってしまった」と処分せざるを得なくなり、食費を抑えるために自炊を始めたはずが、かえって損をしてしまう結果に。食材を無駄なく使い切るためにはどうすれば良いか、買い物のコツを教えていただきました。

 

1.冷蔵庫の中身を把握する

「買い物に行く前は、必ず冷蔵庫の在庫をチェックしておきましょう。メモを取る、または冷蔵庫内の写真を撮影しておくと、買い物中に都度確認できるので、買い忘れや買いすぎが防げます」

 

2.使い切れるサイズのものを購入する

少量タイプや小分けタイプの調味料食材なら少量パックやカット野菜などを選ぶといいでしょう。大容量のものと比べると割高に思えるかもしれませんが、頻繁に使うものでなければ無駄なく使い切ることができるのでむしろ経済的です」

 

3.余った食材はカットして冷凍する

「野菜などをまとめ買いしたときや、食材が余ってしまいそうなときは、使う分を残して冷凍しておきましょう。使いやすい大きさにカットして、フリーザーバッグなどに小分けして冷凍しておくと、調理の手間も省けます」

 

4.鮮度の良いものを選ぶ

「生鮮食品を購入するときは、色が悪いものは選ばないようにしてください。とくに肉や魚は、長時間置いておくとドリップと呼ばれる赤い液体が出ることがあります。これは食品中の組織が破壊され、水分とともに流れ出したもの。品質が低下している証拠なので、安くても手に取らない方がいいでしょう」

 

 

食材やキッチンツールを揃えたら、次は料理の基本を抑えていきましょう。後編では、引き続き河野さんにお話をうかがい、下ごしらえや火加減など、料理をするにあたって知っておきたい基本知識について解説していただきます。

 

 

Profile

一人暮らしアドバイザー・料理家 / 河野真希

自らの一人暮らし体験を元に取材や研究を重ね、2001年からWebを中心に各種メディアで暮らしに関する情報を発信。料理や家事、インテリアなど、気持ちのいい暮らしを作る、始めるためのライフスタイル提案を行う。『ひとり暮らしで知りたいことが全部のってる本』(主婦の友社)、『きほんから新発想まで 家事ずかん750』(朝日新聞出版)ほか、執筆や監修本多数。流行や思い込みにとらわれずに、無理なく持続可能で快適な、自分らしい暮らしづくりを応援している。2016年4月からは『料理教室つづくらす食堂』も主宰。
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