ブランディングをビジュアルで支える写真とデザイン
フォトグラファーの辻田さんも、柴﨑さん同様にかつてはバンドマンとして活躍。脱退後はまちづくりを目指す地元企業で働きながら写真活動を始め、2018年に独立しました。2020年にはクリエイターチーム「aicco design works」を設立し、2022年にHikUへ加入。HikUではブランドに関する撮影のほか、キャンパーのスナップや記念撮影などを行っており、好評を博しています。

「特に、ファミリーキャンパーの方に重宝いただいています。HikUが大切にしているテーマに“家族”があるという点も大きいのですが、お客様に話を伺うと、キャンプ中はじっくり写真を撮る機会が少ないという声があるんですね。そうして気付いたらお子さんが大きくなって、キャンプの思い出が写真で残ってないと。こういった思いに応える形で撮影サービスを始めました」(辻田さん)
琵琶湖をテーマにした辻田さんの作品のなかで、HikUがキービジュアルに採用しているのが「生命の木」。HikUの製品購入時にはこの写真もセットになる仕様になっており、HikUユーザーのなかでは実際に「生命の木」の見物に訪れたり、Instagramでシェアしたりといった共感が生まれているといいます。

「こうした活動に行政の方々も共感いただき、2023年の10月7日から22日まで、長浜駅前の『えきまちテラス長浜』で初の写真展を開催することが決定しました。ここには『HikU GALLERY & OFFICE』もあるのですが、僕自身写真展はすごく楽しみにしています」(辻田さん)

グラフィックデザイナー兼イラストレーターの前川有季さんは、建築系の大学を卒業後、立体物以上に平面の美しさに魅了されデザインの専門学校へ。広告デザイン制作会社を経て2021年6月に独立し、2022年にHikUの一員となりました。


「イラストレーターは小さいころからの憧れでした。HikUを機に積極的に挑戦するようになり、代表作がオリジナルキャラクター『ハイキングモンキー』です。ステッカーやTシャツを販売したり、スマホ待受画像の無料配布やイベントでの子ども向け塗り絵企画をしたりしています」(前川さん)

「ハイキングモンキー」のテーマは、「生きづらい世の中をもっと優しくやわらかく」。体のパーツや表情の一つひとつは、他者への優しさを象徴したものとなっています。
「大きな耳、左右非対称の顔、胸にあるハート。相手の心の声に耳を傾け不完全なところも受け入れて、愛と優しさをもって接する。そんな人がひとりでも増えたら、きっと世の中はもっと優しくやわらかくなるというメッセージを込めています」(前川さん)
なぜHikUにはECや価格表記がないのか
売り切れ必至の人気を誇るHikUのアイテムですが、実は公式オンラインショップはなく、InstagramでのDMを中心としたコミュニケーションでの販売が中心となっています。これはほかの「ガレージブランド」にはみられない特徴ですが、理由を中村さんが教えてくれました。
「ありがたいことに好評をいただいており、大々的に作って積極販売していくほうがビジネス的には正しい戦略でしょう。ただ僕らとしては、一つひとつ丁寧にコミュニケーションし、ずっと愛着を持って使っていただける方に買っていただきたい。モノだけではなく想いも届けたくて、価格を表に出してない理由もそこにあります。そもそもハンドメイドなのでたくさんつくれないという事情もあるのですが、販売チャネルのプラットフォーム化は検討段階ですね」(中村さん)

今後の展望を聞くと、「いま決まっている大きなイベントは辻田君の写真展。成功させるのはもちろん、メンバーそれぞれが個々の力をさらに発揮していく一年にしたいですね。中長期的にはより長浜の発展に貢献していくために、多くの方を巻き込んでいけるよう、いっそう活動の幅を広げていきたいです」と中村さん。暖かい春夏のキャンプシーズンを迎えるこれからの時季、HikUのスポット販売やイベントに、ますます注目です。
@hiku_story (https://www.instagram.com/hiku_story/)
撮影/辻田新也