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2017/11/30 21:00

プロレスラー内藤哲也「カラ回りの人」から「人気沸騰」に至ったワケ「リスクを考えなくなった瞬間、流れが変わった」

内藤哲也選手は、新日本プロレスでいま大ブレイク中のプロレスラー。新日本のトップスター、棚橋弘至選手と対戦した際も、棚橋コールをかき消すほどの大声援を集めるまでに成長。リーダーを務めるユニット、「LOS INGOBERNABLES de JAPON」(ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン)はプロレスファンの絶大な支持を集めており、試合後に観客と行う「デ・ハポン」の大合唱は、その日、もっとも盛り上がるポイントのひとつとなりました。

 

同ユニットのグッズもバカ売れで、その勢いは、かつて大ブームを巻き起こしたユニット「nWo」に匹敵すると言われるほど。内藤選手自身、8月の「G1 CLIMAX 27」で優勝し、新日本プロレス最大のイベント、1月4日の東京ドーム大会で、IWGPヘビー級王座に挑戦することも決定しています。

↑挑戦権利書を手にする内藤選手
↑挑戦権利書を手にする内藤選手

 

と、いま人気絶頂の内藤選手ですが、11月5日放映のアメトーク「プロレス大好き芸人」でも触れられていた通り、かつてベビーフェイス(※)だったころはブーイングの嵐だったそう。それがいま、なぜこれほどまでに人気を集めるに至ったのでしょうか。1.4東京ドーム大会への意気込みとともに、本人にじっくり聞いていきましょう!

※ベビーフェイス…善玉レスラーのこと。ヒール(悪役)に対応する存在。

 

PROFILE

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内藤哲也(ないとう・てつや)

1982年6月22日生まれ、東京都足立区出身。身長180cm、体重102kg。00年より5年間、アニマル浜口ジムにて基礎を学ぶ。05年、新日本プロレス公開入門テストに合格し、06年に宇和野貴史戦でデビュー。08年、裕次郎(現:高橋裕二郎)とNO LIMITを結成。第22代IWGP Jr.タッグ王者に就く。その後はヘビー級に転向し、10年にIWGPタッグ王者。12年には右膝前十字靱帯断裂の大ケガを負い、長期欠場を余儀なくされる。13年「G1 CLIMAX 23」にてG1初優勝を果たすも、ファン投票の結果、翌年の1.4東京ドーム大会メインイベンターの座を明け渡す屈辱を味わう。15年5月のメキシコ遠征の際、現地でラ・ソンブラやルーシュらのユニット“LOS INGOBERNABLES”(ロス・インゴベルナブレス)に加入。メキシコから帰国後の同年11月、ユニット“ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン”を結成する。17年8月、東京・両国国技館大会「G1 CLIMAX 27」優勝決定戦で、ケニー・オメガを撃破。4年ぶり2度目の優勝を果たし、18年1.4東京ドーム大会メインイベントでのIWGPヘビー級王座挑戦権を獲得。宿敵のオカダ・カズチカに挑む。得意技は「デスティーノ」。決めゼリフは「トランキーロ」。

内藤選手のツイッターはコチラ

 

メキシコに行くまでは自分の人気の無さを実感していた

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――現在、圧倒的な支持を得ている内藤選手ですが、ここ1年の人気の高まりはご自身でも感じますか?

 

内藤 それは感じますね。会場でも、ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンのグッズを身につけてるお客様が、全国どこの会場に行っても多いですし。いま、新日本プロレスで入場時に、名前のコールが起きるのは僕だけです。それが東京だけじゃなくて、地方に行っても起こるんです。だから「支持されてるんだな」というのは毎試合、感じています。

 

――人気に火が付いたと実感されたのはいつ頃ですか?

 

内藤 僕の転機はメキシコでロス・インゴベルナブレスというユニットに加入した2015年5月ですね。それまでは自分でいうのもなんですけど、まあ人気がなかった(笑)。

 

――当時、ご自身でも実感されていたんですか?

 

内藤 感じていました。元々、棚橋(弘至)選手、中邑(真輔)選手がいて、次は内藤だと言われていた時代があって、僕もそうなると思ってたんです。でも2012年の1月、オカダ(・カズチカ)が帰国して、一気に抜かれてしまった。そこから2015年までの3年間は、この状況がどうしたら覆えせるのか、自分でもわからないまま、なんとなくプロレスをしていた時期ですね。

↑第65代IWGPヘビー級王者、オカダ・カズチカ選手  ©新日本プロレス
↑現IWGPヘビー級王者、オカダ・カズチカ選手  ©新日本プロレス

 

ファンの反応を気にしすぎてカラ回りする悪循環に陥る

――2014年の1.4東京ドーム大会では、ファン投票によるメインイベンター降格という悔しさも味わいました。そんななか、2015年にメキシコへ行かれたんですよね。

 

内藤 思い悩んでメキシコに渡ったんです。向こうで当時、すごく勢いのあった「ロス・インゴベルナブレス」というユニットに誘われて。彼らがやっていたプロレスは、まわりの目を一切気にせず、自分たちが表現したいことをそのままリング上で表現するというスタイル。そのイキイキとした姿を見たときに、「せっかく海外に来たんだし、自分もまわりを気にせず、やりたいプロレスを表現してみよう」と思ったんです。

 

――それまでは、やりたいプロレスができていなかったんですか?

 

内藤 僕はずっと、まわりの目を気にしながらプロレスをしていました。「いま、これが求められてるから、こうしたらウケるだろう」と考えて、動きやマイクパフォーマンスをやっていました。お客様ありきというか、いつもお客様の反応を気にしながらプロレスをした結果、逆にウケないという悪循環に陥ってたんです。

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――気持ちだけがカラ回りしていて、お客さんがついてこなかったというか……。

 

内藤 はい。それがメキシコで、彼らに混ざって気にせずにやってみたら、歓声も起きるし、ブーイングも起きる。そこにすごく充実感を感じて。

 

――ちなみに、内藤選手がよく口にする「トランキーロ」も、現地の経験からきているんですよね。

 

内藤 そうなんです。メキシコで彼らのスタイルに合わせて試合したときに、とにかく楽しくて楽しくて。僕がどんどん前に出ていっちゃうんで、仲間に「内藤、トランキーロ!」ってよく言われてて。「落ち着いて」とか、「冷静に」という意味の言葉なんですけどね。その言葉が頭にずっと残っていて、日本に帰ってきてから、ぽろっと出たのが始まりなんです。

 

メキシコで掴んだプロレスを貫いたらビックリするぐらい伝わった

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――なるほど。「トランキーロ」は、「プロレスが楽しくてたまらない」という経験から生まれた言葉なんですね。

 

内藤 はい。僕はメキシコでプロレスの楽しさを再認識して、「これをメキシコだけで終わせるのはもったいない」と思ったんです。「これを日本でもやってみよう。伝わらなかったら、もうプロレスラーとして終わるかも知れないけど、試してみよう」という覚悟で帰国しました。

 

――日本に戻って来られてからは、メキシコで掴んだやり方を日本で貫いたんですか。

 

内藤 はい。やりたいようにやって、思っていることを言うことにしました。そうすると、ビックリするぐらい伝わったんです。いままで僕の思いなんか、ぜんぜん伝わらなかったのに。「表現の仕方、伝え方をちょっと変えただけで、こんなにも反応が違うのか」と思いました。15年の6月に帰ってきて、その年の10月に両国で棚橋選手と戦ったころからお客様の反応も変わった。そのあと、ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンを結成して、そこからですね。日本で「プロレスが楽しいな」と感じるようになったのは。

↑ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンのメンバー。後方左からSANADA選手、BUSHI選手、EVIL選手、手前左から髙橋ヒロム選手、内藤選手 ©新日本プロレス
↑ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンのメンバー。後方左からSANADA選手、BUSHI選手、EVIL選手、手前左から髙橋ヒロム選手、内藤選手 ©新日本プロレス

 

「手のひら返しかよ!」ファンを「お客様」と呼ぶ複雑な心境とは?

――ちなみに、内藤選手はいつもインタビューなどでファンを「お客様」と呼びますよね。それはどうしてなんですか?

 

内藤 メキシコに行く以前はいつもブーイングを受けてたんですけど、それが15年の10月ごろからいきなり歓声に変わったんです。だから、最初は「手のひら返しかよ!」と思いました(笑)。そういう皮肉も込めて「お客様」と言い始めたんです。でも、それだけじゃないのもわかっていて。僕も昔からプロレスファンでしたから、「いい試合を作り上げるのは、リング上のレスラーだけではムリだ」ということを知っています。プロレスの雰囲気は会場に来ていただいている方、全員で作るものだと思うので、その感謝の意味も込めて。皮肉半分、感謝の気持ち半分で、「お客様」と言うようにしているんです。

 

――内藤選手といえば、会社批判だったり、オーナー批判だったりと、歯に衣着せない発言も注目されていますが、メキシコのロス・インゴベルナブレスもそういった部分があるんですか?

 

内藤 いいえ。その辺りは、僕のオリジナルですね。

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――振り返ってみると、ご自身でも「言い過ぎたかな」と思うこともありますか?

 

内藤 結構、ギリギリでしたね(笑)。でも、思ってることをため込んでもしょうがないですから。言ってよかったと思うし、そのときの自分があったから、いま、これだけの支持につながっているのかな、と。

 

――とはいえ、物事をはっきり言うことって、なかなか難しいですよね。上の人に睨まれるかもしれないし、言ったからには責任を持ってやらなきゃいけない、とか……。その辺りはいかがでしょうか?

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内藤 もちろんリスクはあるんですけど、思っているだけじゃ、なにも伝わらないですからね。「踏み出す勇気」こそ、共感してもらえるいちばんの方法だと思うんです。口に出したり、行動で示さないと。迷っている人には、「伝えたいならリスクは恐れずに踏み出せよ」と言いたいです。

 

――内藤選手はそうすることで変わることができた、と……。

 

内藤 そうですね。僕もそれまでは自分の本音をさらけ出せず、リスクを考えながら動いていました。だからやることなすこと全部ダメだったんですが、最後の最後の賭けでうまく流れを掴むことができた。リスクを考えなくなった瞬間、流れが変わったんです。

 

オカダ選手には「焦らせてみろよ」と言いたい

――さて、新日本プロレス最大のイベント、1.4東京ドーム大会が近づいてきました。対戦相手であるIWGPヘビー級王者オカダ・カズチカ選手についてはどんな印象をお持ちですか?

 

内藤 僕は一度、IWGPヘビー級王座を巻きましたけど、彼はもう1年以上、ベルトを巻き続けているわけで。偶然で防衛できるほど簡単なベルトではないので、力がある選手なのは間違いない。でも、かつて、オカダ・カズチカは、僕にとって、どうしたら彼と並べられるのか、考えても考えても答えが出ないほど巨大な存在だった。それが今は、彼の姿を見てもなにも焦らなくなってしまった。彼が小さくなったのか、僕が大きくなったのかわかりませんが。ムリだとは思うんですけど、かつての僕が焦らされたオカダ・カズチカが、1月4日、僕の前に立っていてくれたらうれしいですね。

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↑オカダ・カズチカ選手(左)と内藤選手による1.4東京ドーム大会の記者会見 ©新日本プロレス

 

――「焦んなよ」ではなく「焦らせてみろよ」というわけですね(笑)。ちなみに、これまで内藤選手は、インターコンチネンタル王座のベルトを破壊するなど、ベルトを雑に扱うイメージがあるんですが、IWGPヘビー級王座のベルトを奪取できたら、どのように扱いますか?

 

内藤 …逆に、僕がベルトを取ったらどうすると思いますか?

 

――うーん、どうでしょう……。やっぱり今回も雑に扱うような気が…いや、意外に大切にするかもしれないし……。

 

内藤 そう、それ! いまの時間ですよ! その「考える時間」がプロレスファンにとって最も楽しい時間であり、最も贅沢な時間ですよね。1月4日までまだ時間がありますから、それまで「内藤がベルトを取ったら、どうするんだろう?」ってことを予想しながら楽しんでほしいです。その答えは、もちろん…「トランキーロ! あっせんなよ」

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メキシコ遠征を機に、周囲を気にせず、リスクを恐れないことで人生が変わったという内藤選手。1.4東京ドーム大会では、ついに夢に見たメインイベンターを務めます。きっとこの大舞台でも、やりたい放題の試合を見せてくれるはず。みなさんもぜひ「お客様」として参加し、内藤選手とともに、忘れられない試合を作ってみてはいかがでしょう。

撮影/黒飛光樹(TK.c)

 

【内藤選手がメインを務める試合情報はコチラ】

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WRESTLE KINGDOM 12 in 東京ドーム

2018年1月4日(木)@東京ドーム
OPEN 15:30/START 17:00

特設サイトはコチラ

毎年恒例、国内最大のプロレス興行 イッテンヨン東京ドーム大会の開催が今年も決定! メインカードは、王者のオカダ・カズチカに『G1 CLIMAX 27』覇者の内藤哲也が挑戦するIWGPヘビー級選手権。

 

東京ドームにおけるオカダvs内藤戦といえば、2014年1月4日にもIWGPヘビー級選手権が実現しているが、当時行われた“ファン投票”によって中邑真輔vs棚橋弘至のIWGPインターコンチネンタル選手権に敗れて、実質的なセミファイナルに降格した経緯がある。

 

そこから、4年。
両国のメイン終了後に、内藤が「2018年1月4日東京ドーム大会のメインイベント、IWGPヘビー級選手権試合は、オカダ・カズチカvs内藤哲也でよろしいでしょうか?」とファンにアピールすると大歓声が巻き起こったように、新日本プロレスの雌雄を決する両者による“ビッグカード”となって、オカダvs内藤によるタイトル戦が再び激突する。

 

オカダは昨年6月に大阪城ホールで内藤からIWGPヘビー王座を奪還して以来、なんと破竹の8連続防衛を記録中。どの試合でも壮絶な好勝負を残してきた“超人”オカダにとって、“最大の挑戦者”となる内藤をどう迎え撃つのか?

 

一方の内藤は、昨年6月のIWGPヘビーから陥落以降は、IWGPインターコンチネンタル王座を保持していたものの、常にIWGPヘビーを意識した発言を繰り返しており、今回は待望の再挑戦となる。因縁の両者による、因縁の舞台での再激突。新日本プロレスの流れを左右する大注目の一戦となりそうだ。