今年のW杯では初めてVAR(ビデオアシスタントレフリー)が導入された。
より正確な判定を下せるのかもしれないが、これまでのサッカーの常識を変える可能性があることから、賛否両論も寄せられた。そんな、今回のW杯を象徴するVARが話題になった場面を振り返っていこう。
ブラジル―コスタリカ戦、80分頃PA内でコスタリカの選手と接触したネイマールが転倒(動画の1分付近より)。ブラジルはPKを獲得したが、VARのアドバイスで確認の結果取り消しとなった。このときW杯の場で初めて、主審は一度出した判定を覆した。
ネイマールの転倒には「サッカーだから仕方ない」「わざと転んでいるように見える」等の意見が飛び交ったが、これもVARがもたらした影響の1つだろう。
ただVARで得点のチャンスを一度失ったブラジルだが、このコスタリカ戦では勝利を収めたので、結果的にはその影響は大きいものにならずに済んだ。
一方、VARではっきりと泣きをみたのがドイツだ。
ドイツはグループリーグの後がない状況で韓国と対戦。しかし、アディショナルタイムで先制点を決めたのは韓国だった(1分6秒付近から)。最初はオフサイドと判定されたが、VARによって判定が覆った。
主審がVARを確認しなかったことで物議を醸したシーンもあった。
決勝トーナメント1回戦、イングランド-コロンビア戦。57分、ペナルティエリア内での競り合いの末、イングランドがPKを獲得した。主審はこのときVARを確認しないまま判定を下したが、これを痛烈に批判したのがディエゴ・マラドーナ氏。「あれはPKではない」と主張し、VARを使用しなかった審判団を批判した(下の動画の15秒前後から)。
もちろん、VARを使っていたとしても、イングランドのハリー・ケインの転倒をどう見るかは主審にしか判断できない。マラドーナ氏は後にこの時の発言をFIFAから咎められ、後に謝罪をしている。またこの試合では、前半こんなシーンもあった。
FKの壁を巡る小競り合いで、コロンビアのバリオスがイングランドのヘンダーソンに頭突きを見舞った。主審はこのシーンを見ておらず、イングランドの選手たちはVARを要求。明らかな頭突きであれば一発退場もありえたが、主審はVARで確認することもなく、バリオスにイエローカードを提示するだけにとどめた。
結局試合は、1-1延長戦の末のPKでイングランドが勝利している。VARをきっかけに注目を浴びてしまったイングランドだが、DFのジョン・ストーンズはメディアに対し、守備の際に「VARから受ける影響はない」と答えている。
公式戦初の本格導入となったW杯で、様々なドラマを“アシスト”したVAR。FIFAのインファンティノ会長は今大会のVARの効果を高く評価したものの、今後の展開については明言を避けている模様。VARが今後どのように受け入れられていくのかは、様子を見ていくほかなさそうだ。