スポーツ
ランニング
2022/12/28 11:30

ランニングと食事の関係。食前・食後ランの話、おすすめの料理メニューは?

運動不足の解消やダイエットを考えたとき、まず思い浮かべるのが手軽に始められるランニング。特別な道具を用意する必要がなく、時間や場所も自由に選べるトレーニングですが、基本的に1人で行うアクティビティのため、なおさら自己管理が必要です。

 

例えば食事。食事を摂る前に走るのか、食事を摂ってから走るのか。食べた後すぐに走って良いのか、走った後は何を食べれば良いのか、疑問は尽きません。

 

そこで今回は、アスリート向けの食事や一般の人向けの健康的な食事を提供している管理栄養士を取材。その疑問を解消していただきました。

 

<識者紹介>

東京アスリート食堂 神田錦町本店
管理栄養士:加藤健嗣さん

高校時代サッカーに打ち込むもケガが多く、その要因が食事にあることを知りスポーツ栄養士を目指す。大学卒業後に国家資格である管理栄養士の資格を取得。給食委託会社の病院で食事を提供する部署で約2年間勤務し、2022年3月に「東京アスリート食堂」に入社。自身の経験から、「ケガして好きな競技ができないのは本人も悔しいし、もったいないので、そういった方々を少しでも減らしたい」とアスリートに効果的なメニューを日々提供している。

 

食後すぐに走るのが良くない理由

ランニングを始めるきっかけはさまざまですが、まず注意したいのが走り始めるタイミングでしょう。朝夕を問わず、食後すぐに走るのはNGとされています。

 

食事をした後は胃や腸の働きを邪魔しないよう、激しい運動を控えるのは理解できますが、ではどのタイミングで走り始めれば良いのでしょう。

 

「食後すぐに走ると消化不良を起こしたり、脇腹痛を起こしたりします。ランニングの前に食事を摂るなら、走るまでに一定時間の間隔を空けましょう。軽食なら、摂取後30分~1時間程度空ければ大丈夫ですが、通常の食事の場合は摂ったあと2時間は空ける必要があります。」(加藤さん)

 

食前にランニングを行う場合のメリット&デメリット

■食前ランニングのメリット

早朝にランニングを始める場合、食事を摂る前に軽めのランニングを行えば体も頭もすっきり目覚める感覚があります。

 

「その人の目的や目標によって変わりますが、ダイエットや健康を意識した人であれば食前にランニングを行うのがおすすめです。食事の前は、体内のエネルギーが枯渇している状態です。その状態で走り始めると脂質をエネルギーに変えて、脂肪燃焼という、脂肪を燃やす時間が早まる効果があります。」(加藤さん)

 

しかし、寝起きや仕事からの帰宅後すぐにランニングモードに切り替えるのはやや大変ですが、コーヒー、それもブラックで飲んだり、苦めのチョコレートを摂取することで体の準備ができるとのこと。

 

「ダイエットが目的なら特に、コーヒーはおすすめです。カフェインには興奮作用があり、脂肪燃焼効果を上げ、運動能力の向上も研究結果として出ています。カカオ成分が70%以上のチョコレートでも同じような効果が見込めます。」(加藤さん)

 

■食前ランニングのデメリット

食前のランニングで気を付けないといけないのが、空腹で集中力が低下するというデメリット。その予防のためには、素早くエネルギーを補給できるチョコレートのほか、飴を1つ口に入れるだけでも効果があるそうです。

 

「食事前のランニングは脂肪を燃やしやすくする一方で、空腹で集中力が低下します。集中力が低下している状態で走るとケガをするリスクが高まるので気を付けましょう。

 

めまいや体調不良となり、最悪その場で倒れてしまいます。そういう人の場合、飴を1つ舐めるだけで血糖値は上がるので、走る前に摂っておくと良いでしょう。」(加藤さん)

 

食後にランニングを行う場合のメリット&デメリット

■食後ランニングのメリット

食後は糖分と脂肪の2つのエネルギー源があるため、速く長く走ることができます。 食前に比べると、より高いパフォーマンスを発揮できます。 栄養をすでに補給しているので、めまいや集中力の低下も防ぐことができます。

 

トップアスリートの場合は、練習時間や試合の時間に合わせて食後の間隔を取っています。箱根駅伝などスタート(午前8時)が早い場合は、当日の午前2時、3時に起きて食事を摂っているそうです。

 

「人間の体は最初に炭水化物、脂質をエネルギーに変えて走るので、それらが枯渇しているとパフォーマンスは上がりません。運動の質が上がると消費カロリーや燃焼できる脂肪が増え、タイムアップだけでなく筋力アップにもつながります。」(加藤さん)

 

■食後ランニングのデメリット

前述したように、食後すぐのタイミングで運動をすると脇腹の痛みや吐き気などを引き起こしてしまうことが挙げられます。トップランナーはランニングのパフォーマンスを上げるため、食後にしっかりと間隔を取って練習や大会への準備をします。

 

しかし、ファンランナーとしてランニングを楽しむ人は、学校や仕事などで十分に間隔を取るのが難しいでしょう。そんなときは、軽食を摂ることでパフォーマンスの向上が図れます。

 

「糖質が豊富に含まれている『バナナ』だったら1本。ほかにも、脂質が低くて糖質が多く含まれている『カステラ』、『おにぎり』などの補食を摂り、30分~1時間くらい間隔を空け、走り終わってから普通の食事を摂っていただく方法もあります。」(加藤さん)

 

食前にランニングを行った場合の食事間隔

食前に走り終わったら、早めに疲労回復につながる食事を摂取する必要があります。ランニング後のメニューに関しては、後ほどたっぷり紹介します。

 

「ランニング後はエネルギーや筋肉に含まれるたんぱく質が枯渇している状態なので、なるべく早く食事を摂ったほうが良いでしょう。30分~1時間以内に食事を摂ることで、疲労回復や筋肉の合成につながります。」(加藤さん)

 

食後にランニングを行う場合の食事間隔

食後にランニングを行う場合、メニューよりも重要なのが食後の間隔です。

 

「食事の内容にもよりますが、一般的に定食と言われるような、ご飯と味噌汁が付いて、あとはおかずが何品かあれば600kcal程度。その場合、食後の間隔は2~3時間と言われています。しかし、脂分が多い揚げ物系、唐揚げやポテトフライなどを摂った場合は3~4時間空ける必要があります。」(加藤さん)

 

ランニング後に食べたい食事メニューは?

ランニング後のおすすめメニューは、疲労回復に役立つたんぱく質が中心になります。ここからは『東京アスリート食堂』の加藤さんならではのおすすめメニューを伺いました。

 

■その① 豚の生姜焼き

「豚肉に含まれる“ビタミンB1”と、タマネギに含まれる“アリシン”というのが疲労回復に効果的な栄養素なので。豚肉からはたんぱく質も摂れます。豚肉を摂るアスリートは多いですね。」(加藤さん)

 

■その② 鶏の照り焼き、棒棒鶏(バンバンジー)風のサラダ

「鶏のむね肉もおすすめです。むね肉も低脂質、高たんぱく。鶏のむね肉に含まれる“イミダゾールジペプチド”はアミノ酸の一種で、こちらも疲労回復に効果的です。なので、鶏のむね肉も摂るアスリートは多いですよ。

 

鶏のむね肉のメニューでしたら、シンプルに焼いて、醤油大さじ1、酒大さじ1、みりん大さじ1でできる『鶏の照り焼き』。ちょっとアレンジを加えて野菜も取り入れて『棒棒鶏風のサラダ』。」(加藤さん)

 

■その③ 鶏ハム

「鶏のむね肉を低温でじっくり茹でる『鶏ハム』という食事もあります。低温でじっくり茹でると柔らかく仕上がります。本当にハムのような食感です!」(加藤さん)

 

ランニング後には素早いエネルギーの補充、疲労回復につながる食事を摂ることが重要です。しかし、ランニング後に素早く調理したり、事前に用意するのが難しい人のためにコンビニなどで手軽に用意できる食材も教えていただきました。

 

「コンビニなどでも買える『サラダチキン』は味がすでに付いていますし、片手でいけるスタイルなのですぐに摂取できます。鮭とか鶏肉などたんぱく源が入っているおにぎりもおすすめです。」(加藤さん)

 

ほかにも、疲労回復に効果がある“セサミン”を含んだゴマも効果的で、食事やおにぎりにかけることで摂取できます。

 

「走る前後、そして途中でも水分補給もお忘れなく。走るとナトリウムとカリウムなどの電解質が失われます。そこで効果的なのがスポーツドリンク。足がつったり、筋肉がけいれんしたりといったことに対して、水分とたんぱく質、カリウムを摂取することで予防効果が期待できますよ。」(加藤さん)

 

<取材協力>


東京アスリート食堂 神田錦町本店

住所:〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3-21 10 OVER 9 1F
TEL:03-3233-1555

 

撮影/中田悟 イラスト/奈良裕己 文/マイヒーロー