【きだてたく文房具レビュー】自分が書いた線にうっとりできるペン
ぺんてるの「ハイブリッド」と言えば、1990年代ゲルインキボールペンブームの立役者と言っていい、名ボールペンである。
発売当時はゲルではなく“中性ボールペン”(水性と油性の中間、という意味)と呼ばれていたが、ともかく水性のサラサラ感と油性のにじまないところ、両方の良いところを合わせました! ということでハイブリッドと名付けられたわけだ。
ちなみに発売前の商品名候補には「ザ・中性」というのもあったと聞く。ハイブリッドで良かったと心から思う。
そしてハイブリッドと言えば、’96年発売の「ハイブリッド・ミルキー」(現在は廃盤)を思い出す人も多いのではないだろうか。主に30代以上の加齢勢に限っての話だが。このハイブリッド・ミルキー、ゲルインクに修正液の成分である酸化チタンを混ぜたことで、黒い紙や写真の上にも書けるかわいいパステルカラーインクペン……というもので、しばらく後にやってくる第一次プリクラブームの波頭に乗って、当時の女子高生界隈に大ヒットした。
で、それから20年以上を経た2017年。またもミルキー級に女子ウケ来るんじゃねぇか? と思えるハイブリッドの新シリーズが登場した。それが、「ハイブリッド・デュアルメタリック」だ。
……とは言ってもこのデュアルメタリック、実は海外向けに発売されていたものを国内で限定販売します、というもの。これがどういうペンかというと、端的に言えば“ギッラギラ・ビッカビカ・ラメラメペン”だ。
そう、いまあなたが直感した通り、我々おっさんには実用性ほぼ皆無のヤツである。
今までこの連載では、「一見すると実用性の薄そうな文房具も、こう使えば便利だよ」的なちょっとひねりを加えた提言をすることがあったが、今回はガチだ。おっさんが日常品として使いこなすのは、まず無理だと思う。
しかし、それでも紹介したいのである。だって実用性は皆無だけど、筆者のような40代半ばのおっさんでも思わずウットリして「ヤだ、キレイ……」って言っちゃうぐらい、すごい発色をするから。
デュアルメタリックは、「ブラック+メタリックレッド」「ブルー+メタリックグリーン」「グリーン+メタリックブルー」「バイオレット+メタリックブルー」「ピンク+メタリックピンク」「オレンジ+メタリックゴールド」「ゴールド+ゴールド」「シルバー+シルバー」の8色展開。なぜ違う色が+でつながれているのかというと、実はこのインク、染料インク+ラメ顔料インクの混合インクなのである(つまり、ここが“デュアル”)。
この色の組み合わせが本当に独特で、例えば「ブラック+メタリックレッド」の描線は、一見すると黒と赤が混じって紫じみた赤黒という感じ。が、ちょっと見る角度を変えると、黒い下地の上でラメがギラッと光って、なんともいえない深みのある赤になる。これがまぁ、本当に美しいのだ。
面白いのが、白地と黒地で描線の見え方が違ってくるところ。「ブルー+メタリックグリーン」を白い紙に書くと、染料インクが強いのでブルーのラメっぽく見えるのだが、黒い紙に対しては染料はほぼ下地をマスキングしないので、ラメ顔料のメタリックグリーンがぐっと存在感を増す。逆に「グリーン+メタリックブルー」は白い紙だとグリーンに見えるが、黒い紙にはメタリックブルーになるのだ。
また、紙が染料インクを吸う量によっても表情がガラッと変わるので、ついついいろんな紙にグリグリと書いてしまう。
ラメ系ペンは、基本的にインクフローがドバドバなのだが、もちろんデュアルメタリックもかなりのドバドバ。さらに従来のラメインクと比較しても、かなり多めにラメ成分が入っているので、書いているとインクが紙の上で盛り上がっているのがはっきりわかるほど。
結果としてインクの消耗は早いが、イラストやぬり絵など広い面積を塗るのはかなりやりやすい。ギッラギラでビッカビカのぬり絵はあきらかに印象が別物で面白いし、なによりいろんな角度から光らせつつ眺めているとこれまたキレイだ。
仕事がはかどるわけでなく、作業がスピーディになるわけでもない。ただ「ギラギラに光ってキレイ」なだけのペンなのだが、でも、このラメ感はぜひ体感してもらいたい。これまでの人生でラメに興味を一切抱いてこなかった人ほど、ハマるはずだ。
普通に生活している限り、自分が書いた線の色がキレイでうっとりする……なんてことはないだろう。そういう非日常的な体験もたまにはしてみるといいよ、という意味で間違いなく“買い”のペンである。
ただ、先にも書いた通り、ハイブリッド・デュアルメタリックは数量限定販売。9月下旬の出荷から早くも売り切れのお店が続出しているという噂なので、見つけたら即ゲットで間違いないと思う。
【著者プロフィール】
きだてたく
最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、