【きだてたく文房具レビュー】倒れにくい&小物を取り出しやすい立体型ペンケース
2019年になっても相変わらず、文房具好きを悩ませ続けているのが「で、結局ペンケースどれにすればいいのよ」問題である。
なにせ、我々ユーザーが持ち歩ける文房具は有限だ。たかだかペン数本のために容れ物ばっかり何個もあっても仕方ないが、それでも便利そうなペンケースの新製品情報は、次々と耳に入ってくる。(この連載でもガンガン新製品の紹介をしているので、筆者も皆さんの迷いを広げている戦犯の一人だ。ごめんなさい)
ひとまず、現在のペンケースを取り巻く状況を説明しておこう。最初に断言しておくが、平成が終わる今年になってもまだ、ペンケースの進化ラッシュは続く。実際、まだうわさ話レベルでチラ聞こえする新製品情報だけでもかなりの量だから、大変だ。
ただ、機能性ペンケースのメインストリームといえる「立つペンケース」「ペントレー変形型」に関しては、それぞれ“便利”の仕様はだいぶ固まってきたように思う。となると次に来るのは、細かなブラッシュアップの時代である。
これまでに発売されてきた機能性ペンケースは便利だけど、でも残念ながら完璧ではなかった。実際に使っている人には、いくつか細かな不満も感じられたことだろう(だからこそ、迷いが止まらないのだ)。そういったユーザーの「ここ、なんとかしてくれたら嬉しいのに」を解決したブラッシュアップ版機能性ペンケースを、①立つペンケース ②ペントレー変形型の2回に分けて紹介したいと思う。
まず今回は、従来の不満を解消してきた最新の立つペンケース2点。
1. 立つのに、倒れにくい「オクトタツ」
“立つペンケース”の利点といえば、もちろん自立すること。狭いデスクスペースでも展開できて、さらに収納した文房具が取り出しやすい、ということで人気が高まったわけだ。
しかし、その自立がちょっと問題になる場合もある。細長いペンケースを立てる構造上、どうしてもグラグラと不安定だったり、倒れたりする危険性があった。もちろん従来の立つペンケースも、安定させるために底面を広く変形させるなどの工夫がされた製品は多くあったが、それだと「狭い机に省スペースで展開できる」という利点が損なわれがち。
そこでキングジムは、とにかく「底面積が少ないままで倒れない」ことに焦点を当てた新ペンケースを作ったのだ。
「オクトタツ」は、透明のPET素材の細長い円筒型ペンケース。パッと見は、どうしても安定して自立するようには思えない形状である。普通にこのまま立てても、ちょっと机が揺れたら、パタンと倒れて転がってしまうだろう。
ところが、実際に立ててみるとこの通り。机が揺れるどころかここまで斜めになっても倒れず自立し続けるのである。
その倒れない秘密は、本体の底にある。底面のフタを開くと現れるポリウレタン製の吸着パッドが、置くだけで机の天板にピタッとくっついて自立するので、ちょっとした揺れではビクともせずに安定して立っていられる、という仕組みなのだ。
吸盤と違って、多少ざらつきのある木製の天板にも吸着してくれるのはありがたい。埃や汚れには弱いので、立てる前にはサッと天板を拭いておく方が安心だろう。パッドが汚れて吸着力が落ちたときは、濡れた布などで軽く拭いてやれば元に戻る。
ただ、吸着パッドはまっすぐ引き上げる力には吸着力をフルに発揮するが、傾ける方向に力を加えると、端から簡単にペリッとはがれてしまう。これでは、ペンを取り出すときなどフチに手をかけるだけで、簡単に倒れてしまう可能性がある。
そこでもう一つの工夫として備えられたのが、吸着パッドとケース本体をつなぐ衝撃低減バネ。このバネがサスペンションのように傾く力を吸収することで、手が触れたり、机が揺れるなどの衝撃も受け止めてくれるのだ。
ちなみに収納力は、Mサイズでペン15本、Sサイズで8本ほど。ハードケースタイプということもあって、あまりギチギチに詰め込むよりは収納限度より1割ほど少なめに使うほうが、出し入れもスムーズで使いやすいだろう。
さらにMサイズは、キャップ内に消しゴムやクリップなどの小物が収まるようになっている。立つペンケースは、小物が底に沈んで取り出しにくいというのも不満のひとつだが、その辺りもいちおうクリアしたと言えるだろう。ただし小物収納はかなり浅く小さいので、消しゴムなどはコンパクトなものを選ぶ必要がある。
Mサイズでもペットボトルより一回りはスリムなので、カバンに入れるにしても机に立たせるにしてもスペースは取らず、それでいて意地でも倒れないド根性。これまでに、立たせるペンケースが倒れてイラッとした経験があるなら、こういうチョイスも面白いかもしれない。
2. 立つペンケースなのに小物収納が充実した「ネオクリッツ シェルフ」
先ほど「立つペンケースは小物が取り出しにくい」という点に言及したが、これも従来品では大きな不満点となっていた。
立たせる=底が深くなるので、消しゴムやクリップといった小物が中に沈んでしまうと、取り出すのが困難になる。また、そもそもそういった小物収納があまり考えられていない製品も存在し、運用がしにくいと感じることも多かっただろう。
立つペンケースブームの火付け役となった、コクヨ「ネオクリッツ」の新バージョンとして発売された「ネオクリッツ シェルフ」は、そういった小物の収納を、新たに“棚”を設けることで解決した、画期的な立つペンケースなのだ。
どういうことかと言うと、ジッパーを開けて展開してみれば一目瞭然。この通り、スタンドとなるペン収納スペースに加えて、横2段の小物収納棚が存在するのである。
しかも、棚と言っても申し訳程度のポケットではない。浅い上段には消しゴムやクリップ、深い下段はテープのりや小型のステープラーまで収まってしまう、かなり広くしっかりとした棚なのだ。
特に鉛筆やシャープペンシルを多用する人の中には、これまで立つペンケースを運用したくても大きい消しゴムが使いにくいから……と躊躇していた人もいるだろう。しかしこの棚なら、もういつも使っている角形の消しゴムだって、すぐに取り出すことができるのだ。
収納力の高さもだが、何よりも小物をきちんと分別して収めておける“整理能力”が素晴らしい。
必要な時に中をごそごそ探す必要がなく、サッと手が届くアクセスの良さは、ペンケースというジャンル全体で見ても最強レベルと言える。実際に運用してみれば、そのスムーズさに驚くはずだ。汚れや無駄めくれが心配だった、ふせんやマスキングテープも安心して収納できるわけで、これもかなりありがたい。
ここまで整理収納環境が整っていると、もはやこれは“ペンケース”というより、持ち運びもできる便利なツールスタンドと考えて良いかもしれない。
ペン収納スペースは、普通のペンでだいたい8~9本がベストな容量といったところ。このペン収納にもささやかながら一工夫がある。硬い側面にゴムベルトが備わっているため、ここに定規やはさみなど、ペンと分けておきたいツール類がストックできるのだ。
特に幅の広い定規類は、一緒くたに収納していると、ペンを取り出すのに意外と邪魔なもの。わざわざ別ポケットを設けるほどではないが、常用のペンとそれ以外のツールをゴムベルト1本で分別できるのは、かなり便利だと感じた。
問題点があるとしたら、ケース自体の大きさと厚みだろうか。ポーチ型としてもわりと大きめサイズなので、カバンの中でもなかなか主張してくる感じだ。
また、展開しても棚が広がって底面積を出すので、カフェなどの極端に狭い机で使おうとすると、やや圧迫感を感じるかもしれない。(その代わり、転倒の心配はほとんど感じられないが)
この辺りで、整理収納を取るか、スマートさを取るかはユーザーの判断次第。だが、ペン以外にもツールをあれこれ持ち歩きたい派には現時点でベストかも、とオススメできるケースである。