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万年筆
2019/10/28 19:30

機構もデザインも斬新!個性際立つ、注目台湾ブランドの万年筆&ガラスペン

【きだてたく文房具レビュー】台湾メーカーの個性派万年筆2モデル

いま、台湾の文房具がかなり面白い。まず前提として、台湾は文房具好きが多いお国柄らしく、特にここ数年は、日本と同様にかなりアツめの文房具ブームが起きているようだ(実際、首都・台北には文房具のセレクトショップなんかも多い)。

 

そうやって需要が高まると、製品が増えるのは道理。6~7年前に、日本の展示会で初めて台湾製のおしゃれマスキングテープやノートを目にした時は、「へぇー、いま台湾が頑張ってるんだねぇ。紙製品ばっかりだけど」などとぼんやりしたことを言っていたが、今やそれどころの話ではない。

 

近頃では、個人デザイナーがハイセンスな文房具シリーズを立ち上げたり、海外有名ブランドのOEMを数多く手がけてきたメーカーが独自製品を打ち出してきたり、という動きが活発なのである。今回は、そんな台湾文房具の中でも特に面白いヤツを紹介しておこうと思う。

 

インクを一瞬で吸入する万年筆「ツイスビーゴー」

昨年ぐらいから万年筆好きの間で話題になっているのが、台湾の万年筆メーカー「TWSBI(ツイスビー)」。海外ブランドのOEM万年筆を請け負ってきた会社なのだが、最近は自社ブランドで機能性の高い製品をいくつも展開しているのだ。その中でも、最近発売された「TWSBI GO(ツイスビーゴー)」が非常に面白い。

↑TWSBI「TWSBI GO」3400円(税別)
↑TWSBI「TWSBI GO」3400円(税別)

 

製品自体はプラスチッキーでいささかチープな雰囲気なのだが、よく見ると軸の中に謎の“巨大なバネ”が内蔵されている。実はこれが、「TWSBI GO」のキモである、弾力吸墨式……つまりバネ式インク吸入機構である。

 

万年筆がインクを吸う機構にはこれまでも、回転吸入式、プランジャー式などいろいろな方法があったのが、このバネ式はそのどれとも違う。まぁ、かなり大胆かつ画期的なやり方なのだ。

↑見慣れないとまずギョッとする巨大なバネ。これが非常に良い仕事をする
↑見慣れないとまずギョッとする巨大なバネ。これが非常に良い仕事をする

 

まず、ペンの根元にあるインク吸入口をインク瓶にドブンと浸ける。ここまでは、従来と同じだ。

 

そして、軸を外して露出したバネをグッと押し込んで、放す。すると、弾力によりバネに付いているピストンが一気に戻り、同時にインクをジュボッ! と吸い込むのである。

 

その一瞬で、軸内のタンクはインクで満タン。これを最初に見たときは思わず「マジか!」と声が出てしまったほどだ。

↑インク瓶の中でバネを押し込んで離すと、次の瞬間にはもう大型タンクが満タンになる
↑インク瓶の中でバネを押し込んで離すと、次の瞬間にはもう大型タンクが満タンになる

 

そもそも「TWSBI GO」は1.5mlとインクタンクが異様にデカい。ごく一般的なパイロットのインクコンバーター「CON40」(パイロットコーポレーション)と比較すると4倍近くは入る計算になる。

 

インクタンクが大きいということは、1回の補充でより長く書き続けられる、ということでこれは立派なメリットだ。

↑大量の水が出し入れできるので、ペン洗浄も1分あれば完了。速い!
↑大量の水が出し入れできるので、ペン洗浄も1分あれば完了。速い!

 

これだけの巨大タンクと、一瞬でそれを満たすバネ式の吸入機構が組み合わさると何が便利かって、インクの入れ替えがやたらとラクなのである。

 

例えば万年筆に黒インクを入れていて、ちょっと気分を変えたいから赤のインクに入れ替えよう、という場合があったとする。このとき、中の黒インクを抜いてすぐに赤インクを吸わせるわけにはいかない。タンク内の黒インクが完全に無くなるまで、何度も水を吸わせて吐き出して……を繰り返し、きれいに洗浄する必要があるのだ。

 

ところが「TWSBI GO」なら、大量の水をジュボッと一瞬で吸って、それをまた一気に排出することが可能。つまり洗浄もあっという間というわけ。

]↑元々がOEMメーカーというだけあって、3000円台でも「これなら不満はないかな」という書き心地
↑元々がOEMメーカーというだけあって、3000円台でも「これなら不満はないかな」という書き心地

 

多彩なインクを楽しむファンが増え、「インク沼」なんて言い方も広まってきたが、「TWSBI GO」はまさに、インクを楽しむのに最適な仕様と言えるかもしれない。

 

透明度の高いボディは中のインクもよく見えるし、吸入/入れ替えも超高速。インク沼にハマりたいなら、一本は持っておくべき万年筆と言えそうだ。

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きだてたく文房具レビュー

持ち歩きできるガラスペン「デビル ディップペン」

インクを楽しむという点では、持っていると便利なのがガラスペン。“つけペン”なので、万年筆のようにいちいちインクを吸入する手間なく、ペン先にインクをつけてそのまま書ける。インクのテスティングをするには、手軽で最適なのだ。

 

ただ、ガラスペンは名前通りガラス製なので、繊細な先端に衝撃が加わると、折れたり砕けたりしてしまう。基本的には持ち歩きせずに、屋内で楽しむためのものと言えるだろう。

↑GeckoDesign「デビル ディップペン」1万円(税別)
↑GeckoDesign「デビル ディップペン」1万円(税別)

 

そんなこれまでの概念を覆したのが、台湾のデザイン文房具ブランドGeckoDesign(ゲッコーデザイン)の「デビル ディップペン」。なんと持ち運びを前提に作られたガラスペンだ。

 

構造は、木製の軸にガラス製のペン先をはめ込んだだけ、と非常に単純。ただ、ガラスの繊細さと木軸の素朴な力強さが同居するデザインはさすが、個性的なインク瓶などで知られるGeckoDesignだけはある、といった感じ。

↑木軸には固定用のゴムリングがはまっており、ペン先パーツはこの圧力で固定されているだけ。抜き差しは簡単だ
↑木軸には固定用のゴムリングがはまっており、ペン先パーツはこの圧力で固定されているだけ。抜き差しは簡単だ

 

持ち運ぶためのギミックも単純で、ガラスペン先を外して、逆向きにして木軸に差し戻すだけ。「あ、なーんだ」というレベルの単純さである。

 

とはいえ、これなら繊細なペン先は完全にガードされるし、このままペンケースに入れても破損の心配は少なそうだ。

↑ペン先を水洗いすれば、すぐに別のインクが使えるという手軽さは、つけペンならでは。インク遊びには最適だろう
↑ペン先を水洗いすれば、すぐに別のインクが使えるという手軽さは、つけペンならでは。インク遊びには最適だろう

 

インク沼の住人たちは、めいめいでインクを持ち寄ってテスティング会を行っている。そういったときには「デビル ディップペン」がかなり役立ちそうだ。

 

元々、かなりニッチな需要の道具ではあるが、台湾デザイン文房具の良さを味わうという意味では、これもオススメである。

 

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