文房具
筆記用具
2023/2/12 20:45

ノック1回だけで書き続けられるシャープペン「オレンズ」の新作ATがフラッグシップより優れているポイントは?

高性能なシャープペンシルには、自動芯出し機能を搭載している製品がある。自動芯出し機能とは、「いちいちノックをしなくとも、芯を常に最適な長さで露出させる」という機能で、“オートノック”なんて呼ばれ方もしている。

 

特に試験などで1秒のロスも減らしたい! といったシーンだと、もしかしたらわずか数回のノック時間を省くことで、合否が分かれる可能性だってあるだろう。大げさと思われるかもしれないが、少なくとも神社で学業御守りを買うよりは、自動芯出しシャープを買う方が現実的な合格ルートへの道かもしれない。

 

オートマ仕様の新「オレンズ」登場!

筆記具メーカーのぺんてるから、2023年1月24日に発売された「オレンズAT デュアルグリップタイプ」(以下、オレンズAT)は、自動芯出し機能を搭載した新型シャープペンシルだ。「AT」とは「Automatic Technology」の頭文字である。

ぺんてる
オレンズAT(オレンズエーティー) デュアルグリップタイプ
0.5mm径
2000円(税別)

 

ぺんてるの自動芯出しシャープといえば、同シリーズのフラッグシップとして2017年に発売された「オレンズ ネロ」を思い出す人も多いだろう。ただ、こちらは金属の削り出しチャック(芯を固定するための、シャープペンシルの心臓部)を搭載するなど、ハイスペックながら量産には向かない構造の、いわばスポーツカーのようなものだった。

↑オレンズネロ(下)との比較。外見上の大きな違いはグリップだけだが、内部構造はパーツ数なども含めて別物となっている

 

対して新しいオレンズATは、チャックを樹脂化し、より普及モデルらしい造りになっているのがポイントだ。

 

そう聞くと、オレンズネロの単なる廉価モデルかと思えるが、さにあらず。メーカー曰く「樹脂チャックでも精度を落とさないよう、かなりの開発期間をかけて製品化した」とのことで、むしろ普及モデルとはいえ非常に手のかかった1本と言えそう。

↑書き出しで一度ノックをすれば、あとは芯切れまで延々と書き続けることが可能

 

オレンズシリーズの自動芯出しは“パイプスライド式”と呼ばれる方式だ。まず書き出す際にノックを1回。するとコーンに収納されていたガイドパイプと芯がスルッと出てきて、筆記可能となる。

 

あとは筆記によって芯が減るにつれてパイプも一緒に軸内に後退し、芯先が紙から離れると、バネの力でパイプと芯が元の位置まで引き出される……という仕組み。

 

つまり、最初にワンノックだけしたら、以降は書き続ける限り芯が1本なくなるまでノック不要、ということになる。

↑ずっと書き続けると、芯の減り具合に合わせて先端パイプがどんどん後退し……

 

↑ペン先を紙から離すと、パイプと芯は元の長さに復帰。ペン先が紙に触れると芯先が露出して、また書き始めることができる

 

パイプスライド式は、ものによっては紙にパイプが引っかかる感覚が出てしまい、それを不快に感じることもある。(パイプスライドが苦手、という人は意外と一定数存在する。)

 

ただ、個人的な感覚ではあるが、オレンズATのパイプスライドはノイズが少なく使いやすい印象。少なくとも、普通に文字を書き続けるぐらいであれば、ほぼパイプスライドを意識せずに済むのではないだろうか。

 

低重心、かつグリップ感抜群のグリップもメリット

このシャープでもうひとつ特徴的なのが、金属とラバーを組み合わせたぺんてる独自の「デュアルグリップ」だ。

↑低重心ですわりが良く、さらにグリップ力も強いデュアルグリップ

 

↑よく見ると、グリップ(十二角形)のカドに合わせて、ラバーの頭も山型になっている。細かな部分だが、カッコイイ作り込みだ

 

十二角形の金属グリップに開けられた穴からラバーの突起が付き出しており、さながら鬼の金棒もしくは釘バットといった、やたらと強そうな風貌である。

 

もちろん見た目のインパクトだけでなく、金属の重みで低重心化を狙いつつ、ラバーでグリップ感を出す。このコンビは強度の“指スベラー”(手汗などで指が滑りやすい人)の筆者も納得の握りやすさだ。

自動芯出し機能+なめらか純正芯が好相性!

もうひとつ、オレンズATの発売とタイミングを合わせて、ぺんてるのシャー芯ブランドが13年ぶりのリニューアルを果たしたのも、見逃せないところ。

ぺんてる
Pentel Ain(ぺんてるアイン)
200円(税別)
0.5mm芯 40本入り。芯径0.2〜1.3mmがラインアップ。

 

↑開閉は縦→横の2段階スライドで、勝手に開かないよう安全性を確保。大きく開くので、芯も1本ずつつまみ出しやすい

 

シャープペンの替え芯はそもそも「濃さ」と「減りにくさ」、「なめらかさ」と「折れにくさ」、「消しやすさ」と「汚れにくさ」のように、それぞれ性能にトレードオフ関係がある。例えば濃い芯は減りやすいし、折れにくい芯はなめらかさに欠ける、といったような感じ。

↑従来のAin シュタイン芯(左)と書き比べると、新Ain芯(右)のスルスルと走る感覚に驚かされる

 

新しい「Pentel Ain」は、新製法によってそのすべてを高い次元でバランス良く達成しているのがポイント。特になめらかさが大きく向上しており、芯のエッジが筆記によって崩れてきたあたりからのスルスル感がとても気持ちいい。

 

このなめらかさは、ぺんてるの従来芯や他メーカー品と書き比べてはっきり認識できるレベルで違いが感じられるはずだ。

↑芯詰まりなどのトラブルも減らせるはずなので、特にこだわりがない限りは純正の組み合わせが良さそうだ

 

このスルスル軽く書けるなめらかなAin芯と、止まらず書き続けられる自動芯出しのオレンズATは、かなりの好相性。なにより、メーカーもシャープペンシルの動作確認や耐久チェックは自社の芯で行っているわけで、製品本来の性能をフルに味わいたいのであれば、やはりメーカー純正芯を使うのが正解だろう。

 

この組み合わせで損をすることはまずないはずなので、できればオレンズATとAin芯、セットでの購入をオススメしたい。