文房具
2023/8/15 20:00

文房具総選挙2023で選考委員が注目した“裏本命”は何だった? 2023年の文房具トレンド予測も!

2023年4月8日、イオンモール幕張新都心で開催されたリアル投票イベントで、選考委員会の中心的存在である文房具の有識者3名によるトークイベントが行われた。そこで、文房具総選挙2023にノミネートされた文房具から、各々が注目したアイテムを起点に、傾向と今後の展開について語り合ってもらった内容をプレイバック。惜しくも入賞を逃した文房具も見逃せない!

 

【ノーカット版を動画でチェック!】

この3名のトークは、4月8日にイオンモール幕張新都心で開催された「文房具総選挙2023」投票イベントで繰り広げられた。トークの全編は、下の動画でチェックできる。

 

↑参加したのは、左から放送作家・ライター 古川耕さん文具ソムリエール 菅未里さん文房具ライター きだてたくさん

 

“文房具の概念” を拡張したノミネート作

古川 文房具総選挙も11回目。初回開催当時と比べ文房具への向き合い方が一般層と文房具ファン、審査員たちと、ほぼ変わらなくなってきたように感じています。今回のノミネートラインナップを、おふたりはどう見ていますか?

 

 専門性の高い商品ではなく、自宅でも職場でも使える活躍シーンの多い文房具が多く候補に上がったという印象です。新型コロナウイルスへの対応が一段落し、人出が戻ってきたなかで、屋外で活躍する文房具がさらに増えるかもしれないと予感させる内容ですね。

 

きだて 昨年大賞に輝いた「海のクレヨン」など、ここ何年かは画材が人気を博していましたが、そろそろ文房具として “変化球” 的な商品も主流になってくるのではないでしょうか。特に今回は、新たに導入された部門がありますからね。

 

↑スカパーJSAT「海のクレヨン」 2420円

 

古川 その名も「推し活がはかどる文房具部門」。

 

きだて 半ば雑貨のようなものも多かったノミネート商品のなかでも、エレコムの「推しごとバックパック」は、3人とも「欲しい!」となったんですよね。

 

 全員がその場で価格を調べましたからね(笑)。

 

きだて ファスナーで “蓋” をされている状態だと「お仕事」に使えて、休日に蓋を取り払うと、カバンの中身が見える状態になって「推しごと」に使える、と。

 

 缶バッチを付けても傷まないようなメッシュの中材が入っていたり、ポケットがたくさん付いていたり、純粋にバッグとして機能が優れていますね。

 

↑「推し活がはかどる文房具部門」第5位・エレコム「推しごとバックパック Mサイズ」 2万2231円

 

古川 もともとエレコムはパソコン周りのポーチをたくさん作っているので、実用性は抜かりないわけですよね。ほかにも、3人一致して「これは良い」と言ったものとして、切る・貼る・綴じる部門の「フィットカットカーブ多機能料理はさみ」がありました。

 

 ピーラーが付いていたり、分解すると1本のナイフとしても機能して、何より使いやすい!

 

古川 分解が簡単で、洗うのもすごくラクなんですよね。

 

きだて 食洗機に放り込めるし、めちゃめちゃラクですよ! あと刃に細かいギザギザが付いているんだけど、このノコギリ歯のおかげでグッと噛んで切れるので、切り損ないが少ない。

 

古川 グリップも大きいから、濡れた手でも取り回しが簡単。料理はさみはいま、これが一番良いんじゃないかなって思っています。

 

↑プラス「フィットカットカーブ 多機能料理はさみ」 2970円

 

シャーペンの進化が著しい一年に

きだて 今回はシャープペンシルが、キッズの勉強がはかどる文房具部門に移りました。個人的に今回はシャーペンこそが “アツかった” んじゃないかと思うんですが、そんななかで注目なのがぺんてるの「オレンズ AT デュアルグリップタイプ」。「AT」とはオートマチックのことで、要は自動芯出しシステムのこと。この商品が、ほかのオートマ商品よりちょっとお安く作りやすい樹脂チャックで自動システムを実現したことを考えると、今後は千円台とかそのあたりのシャーペンにまで導入できるんじゃないかと期待しています。

 

↑「キッズの勉強がはかどる文房具部門」第2位・ぺんてる「オレンズAT デュアルグリップタイプ」 2200円

 

古川 三菱鉛筆の「クルトガ ダイブ」も名作ですよね。 “キャップ付きのシャーペン” という時点で特殊ですし、ホビー用の大人向け高級シャーペンというジャンルがこれで初めて誕生したんじゃないかなと思うほど。昨今のシャーペンというジャンルの進化を象徴するような一本です。

 

↑「キッズの勉強がはかどる文房具部門」第1位・三菱鉛筆「クルトガ ダイブ(KURUTOGA DIVE)」5500円

 

きだて もし “シャーペンの教科書” があったら必ず載るでしょうね。対して、昨年は個人的にボールペンがやや不作な状況にあったと思っていて。というのも、その前年に異常なほど良いものが出すぎて、メーカーとしてもちょっと落ち着いた時期だったのではないかと。そういう状況下で僕がすごくハマッたのが、サンスター文具のゲルインクボールペン「タンク」。あえて日本では珍しいキャップ式にして、軸をまるまるインクリフィルにすることで、従来の5倍というインク量を実現しています。

 

 “インクダバダバ系” ですね! 書いたとき、滑らかさと気持ちの良い書き心地に驚きます。

 

古川 ゲルインクはインクがすぐなくなっちゃうから不安、という方にとっても相当な安心感がありますよね。

 

きだて 中高生がノートを書くときに色分けしやすいような配色になっているので、発色がすごく鮮やか。色の違いがパキッと分かる感じで、すごく良いです。

 

↑「書く・消す部門」第5位・サンスター文具「タンク」 各165円

 

 逆に、インクの色がとにかく薄いことが強みになっているのが「サラサナノ スモークカラー」ですね。0.3mmのボールペンなんですけど、ボディカラーの淡い色がそのままインクとして出てくる。これの良さは、外出先でプライベートな内容を手帳に書きたい時に、インクの薄さがのぞき見防止機能になって、気にせずに書き込めるというところ。

 

古川 スマホののぞき見防止機能を、インクでやっているイメージ。

 

↑ゼブラ「サラサナノ スモークカラー」 各220円

 

 見られても良い内容は濃いインクのペン、それ以外はこのペンという使い分けもできそうです。視認性の高いペンが主流のなか、あえて “見えにくさ” を謳っている発想に斬新さを感じて、面白いなと思いましたね。それから筆記具で言うと、「タッチミー! アートペン」も良かった。世界の名画をデザインにしたシリーズですが、「タッチミー!」と言うだけあって、表面の凹凸によって触感から絵画が再現されている。そういうコンセプトもすごく素敵ですし、まず筆記具としての性能が良い。

 

きだて ゴッホの絵画がデザインされた商品もありますが、油絵でグルグルが描かれたところが滑り止めに良くて、グリップ機能も利いてる(笑)。

 

古川 最近はミュージアムショップで売られているようなペンでも、基本性能の良さが大前提になっている時代になりました。今後もいろいろなミュージアムショップで、どんどん導入されていくでしょうね。

 

↑ペノン「タッチミー! アートペン」 1500円

 

アフターコロナの文房具シーン、その行方は?

古川 では最後に、今年から来年にかけてどういった文房具が出てきそうか、トレンドになっていきそうかを、我々で予想してみましょう!

 

きだて 最近までは「在宅ワーク」が文房具業界においても大きなテーマになっていましたが、このあたりから風向きがちょっと変わってくるだろうと思います。狭い空間でも快適に暮らせるように、という在宅ワーク文房具の特長をさらに推し進めたような “整理系” の文房具が面白くなっていくんじゃないでしょうか。それこそ「1冊でも倒れないブックスタンド」のように、 “自分の身の周り1m以内を快適化してくれる文房具” が、今後のキーポイントになりそうな気がしています。

 

 なるほど。私は、コロナ禍にオンラインでの授業や会議に慣れたことで、以前よりも音に敏感になった方が多いと思うので、文房具も “静音系” の需要が高まると思います。ノック音やクリップを開ける音に気をつける習慣が根付いているので、静音系のオフィス用品で新しいものが出てくるんじゃないかと。

 

古川 周囲に対するエチケットはもちろん、自分の立てる音によるストレスを予防するにも有効ですね。僕は近年文房具のトレンドとして “シンプルさにこだわって色味や素材感で差異をつける” というのがあったと思うので、今後はさらにそのマナーを踏襲しつつ、ギミックや特徴的なカラーリングなどで差別化を図っていくような動きが見られるんじゃないかと予測しています。

 

※価格はすべて消費税込み。