今年で38回目となる「バンコク国際モーターショー」が、3月27日のVIPデーを皮切りに、4月9日までの約2週間にわたって開催された。その模様や注目モデルを2回にわたってお届けする。前編では、バンコク国際モーターショーの概要と海外ブランド車を中心に紹介していきたい。
アジアで最も早く開催されるモーターショー
毎年1回、ほぼ同時期に開催されるこのショーには、東京モーターショーを大きく上回るおよそ170万人が来場する。来場者数で言えばバンコク国際モーターショーは世界有数のモーターショーでもあるのだ。
このショーの注目すべきは、アジアで最も早く開催されるモーターショーということ。つまり、前年に欧米各国で発表された新型車がアジアのどこよりも早く展示されるのだ。しかもタイは日本と同じ左側通行なので、“右ハンドル車としてのワールドプレミア”となることも少なくない。これこそがバンコク国際モーターショーならではの見所と言っていいだろう。
そして、このショーはもう1つの顔も持っている。それは単に新型車を展示するだけでなく、会場内で販売が行われるということ。東南アジア各国で開催されるモーターショーはどこでも同様の光景が見られるが、このショーでの受注は例年4万台前後にも上る。ショーとしての販売台数はほかのショーとは比較にならないほど多い。そのため、各社ともここぞとばかり、特別な販促キャンペーンを行うなど激しい受注合戦が繰り広げられるのだ。
それと忘れてはならないのがショーの華、コンパニオンである。これまで数々の海外モーターショーを見てきたが、ここはコンパニオンのレベルが高く、人数もほかのショーに比べてダントツに多い。新型車を見るのも楽しいが、それ以上にコンパニオン目当てに来場する人が多いというのも頷ける話だ。昨年10月にプミポン国王が逝去されたことで全体的落ち着いた印象ではあったものの、それでも“華”としての魅力は今年も健在だった。
とはいえ、モーターショーである以上、メインはクルマであることに変わりはない。ここからは「バンコク国際モーターショー2017」で話題となった事柄をピックアップしていこう。
憧れの2大ブランドのブースに大きな変化が!?
バンコクモーターショーで毎年、絶大な存在感を見せつけるのが現地でも憧れのブランドとなっているBMWとメルセデスベンツだ。タイ国内での両社のシェアは合わせても7%程度にとどまるが、ステータスの証しになっているのは日本と同様だ。
その両社に今年は大きな変化が起きた。なんと申し合わせたかのようにブースの大部分をPHV(プラグインハイブリッド車)が占拠していたのである。その理由は、タイ政府が昨年暮れに打ち出した「電気自動車生産奨励プログラム」にある。両社はそんな政府の動きともリンクしつつ、高所得者層に向けて先進性を訴える戦略に出たものと見られる。
メルセデスベンツのブースにはSクラスやCクラス、そしてSUVのGLEでPHV仕様を展開。充電システムも車両と一緒に並べ、日本よりも先にデビューした「Eクラスクーペ」などとともに大きな注目を浴びていた。価格は「S500 e Exclusive」で639万バーツ(日本円換算:約1950万円)、「E300クーペ AMG Dynamic」で454万バーツ(同:約1380万円)。
一方のBMW。PHV以外で注目されたのが新型「5シリーズ」だ。昨年デビューして以来、タイでも人気の高さでは群を抜く。大幅な軽量化のほか、車体の低重心化や前後50:50の重量配分による運動性能の向上は大きな関心を呼んでいるようだった。気になる価格は「530i M Sport」で日本より大幅に高い439万9000バーツ(同:約1350万円)となっている。
そんな憧れのブランドに分け入って支持を集めようと新型車で攻勢をかけたのがアウディ。今年3月のジュネーブショーで紹介された「Q2」の右ハンドル仕様をタイでワールドプレミアし、さらに昨年パリショーで登場した新型「Q5」をアジア初出展したのだ。いずれも日本より先行してのお披露目となった。今やグローバルでSUVは人気が高いが、そのなかでも特にこの2車の注目度は高かった。「Q5」は左ハンドルでの出展だったが、「Q2」はタイ国内で販売できる仕様で出展された。
これらはまだまだバンコク国際モーターショーのほんの入り口。後編では、日本車と前編では紹介しきれなかった海外ブランド車を紹介する予定だ。