大ヒット中のトヨタ・C-HRが優先したのはデザイン。コンセプトカーの雰囲気を損なうことなく商品化されたのはたいしたもの。その相反として、実用性ではある程度は覚悟すべきです。
昨年末に発売されると受注が殺到し、1か月あまりで5万台に達しました。このところの月間販売台数も上位に食い込んでいます。販売比率はハイブリッドのほうがガソリンモデルよりも圧倒的に高い比率。
世界で認められるよう鍛え上げたという走行性能も秀逸。自動車開発の聖地と呼ばれるドイツのニュルブルクリンクサーキットを走り込んだとのふれこみどおり、コーナーでも優れた挙動を誇ります。
今回は、「ハンドリング/取り回し」「乗り心地」「質感」「安全性」「居住性」「ユーティリティ」の6項目にわたって、各5点満点でモータージャーナリストの岡本幸一郎さんが徹底採点。国産コンパクトSUV購入の際の参考にしてください。
【今回はグレード「G」で採点】
トヨタ
C-HR
264万6000円~290万5200円
トヨタの新世代プラットフォーム「TNGA」を採用し、世界戦略を念頭に、デザインと走りを際立たせたSUVとして企画された新型車。プリウスと同じハイブリッド搭載車は2WD、オーリスと同じ1.2ℓ直噴ターボ搭載車は4WDとなります。デザイン最優先のクルマですが、実際にはそれなりに機能的なユーティリティスペースを持ちます。後席はCX-3より広いものの、狭め。荷室は十分な広さです。
【評価項目01】
ハンドリング/取り回し評価:4.0点
しっかりとしたステアリングの手応えがあり、正確性の高い操縦性を示します。また、コーナリングの限界域では粘り腰のグリップをみせます。
ハイブリッドモデルはモーターの強みで発進時から力強く加速。トヨタのハイブリッド車に見受けられる応答の遅れ感も小さく抑えられています。燃費はリッター30㎞超えと良燃費。
【評価項目02】
乗り心地評価:4.0点
荒れた路面でもフラット感が高く、乗り心地は良好。できるだけ誰も不快に感じることのないよう配慮して味付けされたことがうかがえます。
【評価項目03】
質感評価:4.0点
取材車両はベースグレードのため、競合モデルと比べると比較はやや不利。だが安っぽく感じません。非対称インパネなど外観に負けず個性的なキャビンはブラウンカラーを巧みにあしらい、上品さを演出。
ナビにTコネクト対応モデルを選択することで、スマホと連携した機能を使用できます。
【評価項目04】
安全性評価:4.0点
単眼カメラとミリ波レーダーを用いて、ステアリング制御も行う最先端の安全支援システムを搭載。このデザインゆえ、斜め後方と後方視界はあまりよろしくないのは覚悟したいところ。
オプションで相互通信可能!トヨタ・セーフティ・センス P
ミリ波レーダー&カメラで衝突回避支援を行います。オプション装着で道路や信号、他車から情報を得る高度道路交通システムに対応しています。
【評価項目05】
居住性評価:3.0点
頭上:コブシ0.5個分のスペース
膝まわり:コブシ2個分のスペース
足下:コブシ1個分のスペース
(身長172センチの男性が乗車した場合)
ステップ高のわりにヒップポイントは低め。ウインドウ形状と大柄なフロントシートの影響でやや閉塞感あり。足元では前席下のかさ上げされた部分の出っ張りが少々気になります。
後席は最適なパッド厚の追求で優れた座り心地に。前席の設置機構が工夫され足先は広め。
【評価項目06】
ユーティリティ評価:3.5点
荷室容量:通常時318L
テールゲートが重めで、開口部の下端が高めな点がやや気になりますが、フロアの奥行きや横幅は予想よりも大きめ。また、それほど広くはないですがアンダーボックスもあって使い勝手は良好です。
ガソリン車もハイブリッドモデルでも荷室容量は変わらず318Lで、最大で1112Lまで拡大可能。
【ここもスゴイ】
①ウィンドウスイッチが全席ワンタッチでオート操作可
コンパクトSUVながら全席にワンタッチで全開閉にできるオートパワーウインドウを設定するのは稀。
②重宝すること間違いナシあると便利なAC100V電源
このクラスで唯一無二! プリウスと共通の本格的ハイブリッドのおかげでAC100V 1500W電源が選べます。
【総合評価】
総合評価:22.5/30点
取り回し:4、乗り心地:4、質感:4、安全性:4、居住性:3、ユーティリティ:3.5
デザインの格好よさはもちろん意外な実用性も発揮
全身が個性のカタマリのようなクルマであり、SUVとしての機能よりも、デザインと走りを優先しています。それでいて実用性もほどほどに備わっているところがグッド。
【モータージャーナリスト岡本幸一郎さんオススメのグレード】
C-HR G
燃費に優れるハイブリッド押しあとは予算に応じて選びたい
「グレード体系はシンプルで、4WDを求めるなら直噴ターボを選ぶしかないが、駆動方式にこだわらないのであれば圧倒的に燃費に優れるハイブリッドがオススメ。上級の『G』はベーシックな『S』の約26万円高だが、見た目が上質であり装備面でも充実しており、十分に差額のモトは取れる」(岡本)
【パッケージ&グレード構成】
【解説してくれた人】
モータージャーナリスト
岡本幸一郎さん
1968年生まれ。矢継ぎ早に登場する新型車のほぼすべて網羅。年間の試乗台数は数百台におよぶ。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。