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2017/7/15 17:30

ひんやり快適な夏旅はいかが? 誰でも楽しめるケーブルカーガイド【東日本編】

夏場の旅行や遠出についてまわる「暑さ」。特に今年は例年より暑くなるといわれており、外出するのが億劫になることも少なくないだろう。ならば趣向を変えて、ひんやり快適な別世界に出かけてみてはどうだろうか? そこでオススメしたいのが、ケーブルカーを使った山旅である。

 

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ハイキングや登山を楽しむときにお世話になるケーブルカー。乗って到着する山頂駅は“下界”とは別世界で、ひんやりした空気が身体を包み込む。つまるところ、ケーブルカーの旅は夏場こそ楽しいものなのだ。そこで本稿では、東日本で楽しめるケーブルカーをまとめて紹介していこう。

 

<ケーブルカーの豆知識>

鋼索(こうさく)鉄道とも呼ばれており、鉄道事業法に基づいて車両の運行が行われている。旅客営業を行うケーブルカーは全国で22路線。ほとんどが山へ登っていく路線だが、なかには深く地中へ潜る路線もある。ほかにも、車両がパノラマタイプになっていて眺望が楽しめる路線、2両連結&冷房付きの車両を保有する路線なども登場している。

 

【その1】青函トンネル竜飛斜坑線/青森県

↑青森県・竜飛岬にある青函トンネル記念館内の記念館駅からケーブルカーへ乗り込む
↑青森県・竜飛岬にある青函トンネル記念館内の記念館駅からケーブルカーへ乗り込む

 

海面下140mに「潜る」ケーブルカー

「青函トンネル竜飛斜坑線」は、山へ登るわけでなく、地下(海面下)へ深く潜るケーブルカー路線だ。もとは青函トンネルを掘るために造られた斜坑を利用したもの。乗車9分で海面下140mにある体験坑道駅に到着する。

 

海面下の駅は青函トンネルの竜飛定点(旧竜飛海底駅)につながる坑道内にあり、年間通して気温は20度。湿度は高めだが夏は涼しく、寒い季節は逆に温かく感じる。なお、同路線は片道のみの利用が不可となっている。海面下の体験坑道駅に付いたら同乗のスタッフと共に坑道内を見学。乗ってきた車両に乗車し、再び地上の記念館駅に戻る。

 

ちなみに、このケーブルカーは青函トンネル内で事故などが起きて列車が立ち往生したときに、避難用ケーブルカーという役割も担っている。青函トンネルの列車運行に欠かせないケーブルカーでもあるのだ。

↑記念館駅のトンネル入口には風門がある。気圧差を調整するため、この風門を開け閉めしてケーブルカーを走らせている。乗客は風門を閉じた後に、駅の外に出ることができる
↑記念館駅のトンネル入口には風門がある。気圧差を調整するため、この風門を開け閉めしてケーブルカーを走らせている。乗客は風門を閉じた後に、駅の外に出ることができる
↑体験坑道駅から坑道が竜飛定点に向け延びる(定点には入れない)。坑道内では、青函トンネル工事の歴史や掘削用の機器などが展示されている
↑体験坑道駅から坑道が竜飛定点に向け延びる(定点には入れない)。坑道内では、青函トンネル工事の歴史や掘削用の機器などが展示されている

 

【路線DATA】

●営業開始:1988(昭和63)年7月 ●営業キロ数:0.8km ●所要時間:9分 ●最急勾配:250‰(1000m走るうちに250mのぼる) ●営業期間:4/22〜11/7(冬期も臨時営業日あり) ●運賃:1000円(体験坑道乗車券を購入) ●アクセス:東北自動車道青森ICから国道280号ほかで約80km、JR津軽線三厩駅からバスで約27分、青函トンネル記念館バス停下車すぐ

 

【その2】筑波山ケーブルカー/茨城県

↑四季それぞれの花が楽しめる筑波山。筑波山ケーブルカーの行き違い地点付近では、5月ごろツツジの花が楽しめる
↑四季それぞれの花が楽しめる筑波山。筑波山ケーブルカーの行き違い地点付近では、5月ごろにはツツジの花が楽しめる

 

ラクラク標高877mの筑波山へ

筑波山といえば茨城県のシンボル。日本百名山にもあげられ年間を通してハイキングに訪れる人も多い。そんな南麓が山麓にある宮脇駅と筑波山頂駅の間を上り下りするのが筑波山ケーブルカーだ。山頂駅がある御幸ヶ原に降り立てば、筑波山の山頂部にある標高871mの男体山と標高877mの女体山へは、それぞれ15分ほどでたどり着ける。

 

日本百名山のうち、最も標高が低いとされる筑波山だが、侮りは禁物。ケーブルカーにほぼ沿って登山コースの御幸ヶ原コースが設けられている。上りは90分、下りは70分ほどで歩くことができるコースだが、なかなかハードで、急な傾斜が続く。ごつごつした石が道を遮り、また巨岩を越える箇所があるなど、下りでもラクではない。こうした山道が苦手という人は、上り下りともケーブルカーの利用が無難だ。

 

【路線DATA】

●営業開始:1925(大正14)年10月 ●営業キロ数:1.6km ●所要時間:8分 ●最急勾配:358‰(高低差495m) ●営業期間:無休(検査時を除く) ●運賃:往復1,050円、片道580円 ●アクセス:常磐自動車道土浦北ICから県道236号ほかで約17km、つくばエクスプレスつくば駅からバスで約40分、筑波山神社入口バス停下車徒歩6分(いずれも宮脇駅まで)

 

【その3】高尾登山電鉄/東京都

↑日本の鉄道としては最大の急勾配の608‰を走る。斜度としては31度18分にあたる
↑日本の鉄道としては最大の急勾配の608‰を走る。斜度としては31度18分にあたる

 

日本一の急勾配を走行

都心にも近く、多くのレジャー客が訪れる高尾山。もとは高尾山にある高尾山薬王院に参拝する人のために造られたケーブルカーだった。山麓の清滝駅(標高201m)と山頂の高尾山駅(標高472m)の間には、日本の鉄道としては最勾配にあたる608‰という急坂がある。一方で105‰の緩い坂もあり、この傾斜の差がこのケーブルカーの特徴でもある。

 

山頂の高尾山駅近くには、かすみ台展望台や高尾山ビアマウント(6/15〜10/15営業)、さる園・野草園といった観光スポットがある。そして、山麓の清滝駅から京王高尾山口駅までは、そば店・土産物店、京王高尾温泉など、レジャー施設が連なり楽しめることも高尾登山電鉄の魅力となっている。

 

【路線DATA】

●営業開始:1927(昭和2)年1月 ●営業キロ数:1.02km ●所要時間:6分 ●最急勾配:608‰(高低差271m) ●営業期間:無休(検査時を除く/併設のリフトの運行あり) ●運賃:往復930円/片道480円 ●アクセス:圏央道高尾山ICから国道20号ほかで約1.5km、京王線高尾山口駅から徒歩5分(いずれも清滝駅まで)

 

【その4】御岳登山鉄道/東京都

↑赤い車体は「御嶽」号。2008年、緑の「武蔵」号とともに3代目として導入された
↑赤い車体は「御嶽」号。2008年、緑の「武蔵」号とともに3代目として導入された

 

御師集落に住む人には欠かせない路線

標高407.4mの滝本駅と標高831mの御岳山駅を結ぶ。山頂駅から武蔵御嶽神社にかけての山中には集落が連なる。紀元前に創建されたとする武蔵御嶽神社を訪れる人たちのために生まれた御師(「おんし」または「おし」と読む)集落で、一部の民家は東京都の有形文化財にも指定されている。

 

御岳登山鉄道は、この山上に住む人たちの大事な交通機関にもなっていて、ケーブルカーの始発電車は7時30分からと朝も早い。山頂駅から武蔵御嶽神社までは徒歩で25分(途中でリフトを利用することも可能)かかるが、連綿と続けられてきた山岳信仰が息づく地ならではの趣を楽しみつつ歩きたい。

 

【路線DATA】

●営業開始:1934(昭和9)年12月 ●営業キロ数:1.0km ●所要時間:6分 ●最急勾配:25度(高低差423.6m) ●営業期間:無休(検査時を除く) ●運賃:往復1110円/片道590円 ●アクセス:圏央道日の出ICから国道411号ほかで約19km、JR青梅線御嶽駅からバスで10分、ケーブル下バス停下車徒歩5分(いずれも滝本駅まで)

 

【その5】大山ケーブルカー/神奈川県

↑フロントガラスが大きいスタイルで、沿線からは相模灘まで遠望できる。写真は中間駅の大山寺駅付近で撮影したもの
↑フロントガラスが大きいスタイルで、沿線からは相模灘まで遠望できる(写真は中間駅の大山寺駅付近で撮影)

 

おしゃれな新型のケーブルカーが自慢

ケーブルカーとしては異色ともいえるおしゃれな車両が特徴。2015年10月に4か月の休止期間を経て新型車両が登場、小田急ロマンスカーVSEやMSEなどでおなじみの岡部憲明アーキテクチャーネットワークがデザインを手がけた。明るい緑色「ブリアントグリーン」を基調にした車両で、山麓側と山上側のデザインが異なるところもユニークだ。眺望を妨げないように架線を外した架線レスシステムを採用している。

 

路線は山麓の大山ケーブル駅と山上の阿夫利神社(あふりじんじゃ)駅を結ぶ。麓のバス停から山麓駅まで徒歩15分と、やや距離がある上り下りの遊歩道が続く。「こま参道」と名付けられた通りで並ぶ土産物店を見歩きながら、現代流の大山参りを楽しみたい。

↑山上側から見た大山ケーブルカー。前後のデザインがまったく異なるケーブルカーは非常に珍しい
↑山上側から見た大山ケーブルカー。前後のデザインがまったく異なるケーブルカーは非常に珍しい
↑ゆるやかなカーブを描いた天井がおしゃれな車内
↑ゆるやかなカーブを描いた天井がおしゃれな車内も魅力のひとつ

 

【路線DATA】

●営業開始:1931(昭和6)年8月(太平洋戦争前後は運転休止) ●営業キロ数:0.8km ●所要時間:6分 ●最急勾配:477‰(高低差278m) ●営業期間:無休(検査時を除く) ●運賃:往復1100円(繁忙期1240円)/片道630円 ●アクセス:東名高速道路秦野中井ICから国道246号ほかで14.5km、小田急伊勢原駅からバスで25分、大山ケーブルバス停下車徒歩15分(いずれも大山ケーブル駅バス停付近まで)

 

【その6】箱根登山ケーブルカー/神奈川県

↑強羅の別荘地内を走る箱根登山ケーブルカー。スイスのガングロフ社の車両が使われる
↑強羅の別荘地内を走る箱根登山ケーブルカー。スイスのガングロフ社の車両が使われる

 

冷房付き2両編成の車両が走行

箱根登山鉄道の強羅駅と早雲山駅を結び、山頂駅の早雲山駅で箱根ロープウェイに乗り継ぐことができる。小田原や箱根湯本から強羅を経て芦ノ湖方面を行く交通機関として使われることも多く、定員数の多いスイス製の2両編成の車両が導入されている。

 

ケーブルカーとしては珍しい冷房装置が導入されているのも、同路線ならでは。もとは強羅に開業した旅館や別荘のために造られたケーブルカーで、途中駅が4つと多いこともこの線のユニークなところ。路線の開業は1921(大正10)年で、関東では最初に造られたケーブルカーでもある。

↑公園下駅に到着した強羅駅行き電車。傾斜地を走るだけにケーブルカー。途中駅のホームも斜面に合せて傾斜して造られている
↑公園下駅に到着した強羅駅行き電車。傾斜地を走るだけにケーブルカー。途中駅のホームも斜面に合せて傾斜して造られている

 

【路線DATA】

●営業開始:1921(大正10)年12月 ●営業キロ数:1.2km ●所要時間:9分 ●最急勾配:200‰(高低差214m) ●営業期間:無休(検査時を除く) ●運賃:強羅〜早雲山間420円 ●アクセス:西湘バイパス山崎ICから国道1号ほかで9.5km、箱根登山鉄道強羅駅下車すぐ(いずれも強羅駅まで)