「【祝ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー受賞】改めてマツダ ロードスターのライバルは誰なのかを考察した」に続き、「ロードスターの魅力」について再考。鹿児島~東京1500kmロングツーリングのインプレッションとともに、今回は少しマニアックに、NR-AグレードとRSグレードの違いを自動車評論家の小野泰治さんが掘り下げます。
なお、ニューヨーク国際オートショーで発表されたリトラクタブルハードトップ仕様の新型車「マツダ・ロードスターRF」はコチラの記事をご覧ください。
サーキットまでの道のりもめちゃくちゃ快適かつ楽しく運転できるNR-A
ロードスターのNR-Aは、モータースポーツ用として設定されたグレード。このクルマ、ナンバー付きロードカーとして必要な快適装備は厳選する一方、足回りにはスポーツサスペンションのブランドとして定評あるドイツ、ビルシュタイン社製の車高調整式ダンパー(衝撃減衰装置)を標準で装備します。さらに、オプションで車両転倒時に乗員を守るロールバーセットや牽引フックなども用意するレーシング仕様で、本来の活躍の舞台はサーキット。極論すれば、一般道での使用はサーキットに移動するための“オマケ”なのですが、走らせてみるとこれが結構“使える”出来映えでした。
取材車はロールバーセットなどを装備したオプション装着車。「もしもの時」の安全性を担保するロールバーはメーカー純正とあってさすがにがっちりした作りです。ただし、頭上にも転倒時に乗員を守る太いバーが通っているとあって、ロードスターならではの解放感は少なからずスポイルされてしまいます。また、横方向からの衝突も想定した作りで、バーががっちり組み込まれていて、乗り降りは正直辛いです。
しかし、そのロールバーがボディ剛性強化にも貢献しているらしく、乗り心地はレース仕様とは思えないほど快適です。標準のロードスターと比べると足回りは引き締まっているはずなのですが、スポーツカーと思えば快適性は秀逸といえるほど。もちろん、そのためだけにロールバーを付けるのは本末転倒な話ですが、乗降性を除けば荷室容量などの実用性は標準仕様と変わりません。
一方、スポーツカーとしてのハンドリングはRSより一枚上手。一般道より走る速度域が高いサーキット用ということで、山道を駆け回るような場面では抜群の安定性を発揮します。標準仕様やRSでは多少身構えるような場所でも、NR-Aなら涼しい顔で通り抜けることが可能。
数字ではなく操る感覚を楽しみたい人にはRSがベスト
絶対的なスピードではなく“走らせる愉しさ”が味わえれば良い! というならRSはまさに程よい仕上がりです。車高調整式ではありませんが、こちらもダンパーはビルシュタイン製。ブレーキやボディ本体の強化メニューはNR-Aと同等とあって、スポーツカー資質はシリーズ随一。NR-Aほど硬い乗り心地ではありませんが、高い速度域での使用を前提とした作りなので、日常域の乗り心地はベーシックグレードと比較すれば硬めです。
しかし、乗っていて不快なほどではなく、人によってはベーシックグレードより乗り心地にメリハリあると感じる程度。スポーツカーとしての快適性はRSも十分に合格といえます。実際、東京~鹿児島まで1500kmのロングドライブをしましたが、同行した通常グレード(Sレザーパッケージ)に対して特に疲れることはありませんでした。RSにはATが設定されていませんが、MTを進んで選ぶ人にはピッタリのキャラクターといえるのです。また、標準仕様でも機能上の不満はありませんが、RSには高性能かつ上質なことでも定評あるドイツ、レカロ社製のスポーツシートが装備されることもクルマ好きには嬉しいポイントといえるでしょう。
【URL】
ロードスター http://www.mazda.co.jp/cars/roadster/
撮影/篠原晃一