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2018/4/1 20:00

このクルマは何でしょう? 時代に合わせて変わる「働くクルマ」のニューウェーブたち

こちらのトラック風の造りのオシャレなクルマ。果たしてその正体は?

正解は「バキュームカー」。本当? と思われた方も多いのではないだろうか。このように、いま、「働くクルマ」と呼ばれる各種の作業用車両が時代に合わせて徐々に変わり始めている。今回は、そんな変貌しつつある働くクルマの世界を見ていこう。

 

彩り鮮やか! 20種類からデザインが選べる新バキュームカー

冒頭のオシャレな造りのバキュームカーは、モリタエコノスが製造する「エコパネル式バキュームカーEP-2」だ。従来のバキュームカーのイメージを払拭したデザインが目を引く。3トン車をベースに利用し、タンクなどが積まれる荷台の後ろには「作業中」などの案内が表示される。

↑「エコパネル式バキュームカーEP-2」は約20種類以上の基本デザインを用意。鮮やかな色のバキュームカーが生み出されている

 

下水道の整備で減っているとはいえ、バキュームカーが活躍する地域はまだまだ多い。業界のイメージアップというポイントでも、オシャレなバキュームカーの登場は歓迎されている。

↑モリタエコノスでは、従来の姿をしたバキュームカーも製造販売している。脱臭装置が装着され、昔ほど臭いはきつくない

 

子どもたちにも大人気! カッコいいゴミ収集車

続いて、街中で出会う機会の多いゴミ収集車も、最新式のものはとてもカッコよくなっている。こちらもモリタエコノスが製造販売するゴミ収集車(回転式塵芥収集車)で、ニックネームは「パックマスター」。何ともオシャレな名前である。このゴミ収集車、2014年のグッドデザイン賞にも輝いた。

↑「パックマスター」と名付けられた最新式のゴミ収集車。後部の視認性を高めるためにブレーキランプや方向指示器を上部に、さらに「作業中」の案内が表示される

 

さらにモリタエコノスでは、家具や家電などの粗大ゴミの回収にも対応した「プレスマスターPA7型」(プレス式塵芥収集車)を登場させた。

↑モリタエコノスの「プレスマスター」。ボディはリブ形状を採用し、ランプ部分などのデザインを際立たせた外観で、ここまでオシャレになったかと感心させられる

 

このプレスマスターは2017年度、世界三大デザイン賞とされるドイツの「iFデザイン賞」を受賞した。また、デザインだけでなく、ゴミの投入口の扉も片手で操作できるなど、使い勝手も改良され、安全への配慮も怠りない。

 

環境にやさしい!オシャレな配達用EVカー

関東地方ではあまり見かけないが、西日本での普及が目立つ個性的な配達用EVカーがある。トヨタ車体が製造販売する1人乗り超小型EV「コムス」だ。4輪ではあるが、第一種原動機付自転車にあたる車両で、車検・車庫証明は不要(ナンバー取得は必要)。原付だが、バイクとは異なりヘルメットは必要ない。それでいて最高時速は60kmとなかなかのものだ。

↑愛媛県松山市内を走る「コムス」。カラーバリエーションは7色。普通運転免許で運転可能で、ドアは付いていないが、覆い(キャンバスドア)を付ければ冬も走ることができる

 

価格は60万円〜80万円とちょっとお高めな印象はあるが、補助金制度(申請が必要、3〜4年間所有することが必要などの制約はある)があり、購入の際には幾分かは手助けとなる。

 

このコムス、実は2012年から販売開始とそれなりに発売から時間がたっている。販売開始当時はなかなか浸透しなかったが、大手コンビニチェーンや各地の自治体、工場の作業用、またカーシェアリング用になど、導入例が増えつつある。

発売5か月で急速に普及! 22年ぶりのタクシー専用車「ジャパンタクシー」

街中で見かけるだけでなく、もうすでに実際に乗った方も多いかもしれないが、タクシー業界では「トヨタ・ジャパンタクシー」が旋風を巻き起こしている。2017年10月から発売されたこちらのジャパンタクシーは、22年ぶりのタクシー専用車として開発された。販売開始して半年たたないうちに、街中でかなり多く見かけるようになっている。

 

22年間、業界がタクシー専用車両を造ってこなかった理由は“商売にならない”ということだった。だが、タクシーとしてしっかり使えるクルマであれば、販売ベースにのることができることを、このジャパンタクシーの成功例は物語っていると言えるだろう。

↑東京都内を走る「トヨタ・ジャパンタクシー」。販売されてまだ半年とたっていないのにも関わらず、その普及ぶりには目を見張るものがある

 

ジャパンタクシーの特徴は、見てのとおりロンドンタクシーを思わせる車高の高いボディにある。左後部のドアはスライドドア。ドライバーは、従来のセダンタイプのタクシーに比べて、ガードレールなどの道路わきの障害物に気をつかうことなくドアの開け閉めができる。さらに乗客は、乗用車のように乗車時に身体をかがめることなく、ラクに乗車できる。車内も広く快適だ。

 

ジャパンタクシーのグレードは「匠(上級グレード)」と「和(標準グレード)」の2種類。両車両とも350万円以内と、営業車両としては取得しやすい金額ではないだろうか。19.4km/ℓと燃費もなかなかのもの。このように利点が多く、今後、2020年のオリンピック開催に向けて、さらに普及の度合いが高まるものと思われる。

↑「ジャパンタクシー」とともに最近は燃費の良い小型タクシーが増えている。写真は「トヨタ・シエンタ」のタクシー。この車両もスライドドアでラクに乗り降りできる

 

消防車にも見られる新しい動き

消防車の艤装では国内最大手のモリタ。同社が造る消防車にも新たな傾向が見られる。これまでの消防車はトラックベースの車両が多かった。モリタの新型はしご車には、MHシャシーという低床のバスベースのシャシーが使われている。

 

↑モリタの「MLL30m級はしご車」。4WS装置を搭載、前輪だけでなく、1番後ろのタイヤもハンドルにあわせて左右に動く。最小回転半径7.2mを実現している

 

このはしご車は低床タイプで、フロアと地面の距離をより近くしている。乗り降りしやすい構造となっているわけだ。バスベースということもあり、室内はこれまでのはしご車に比べて広く、開放的な造り。消防隊員は出動する際に消防服を身につけ、重い装備品などを持って活動するため、乗り降りしやすく、キャビンが少しでも広ければ、それだけ隊員の負担減につながる。

 

次にご紹介するのは、モリタの「MVF(MORITA VARIOUS FIGHTER)」。13mのブームが付く多目的消防ポンプ車で、消防活動の中心になって働くポンプ車として、また、高所作業車および高所放水車として使える構造となっている。さらにCAFSといわれる泡を放出することも可能で、少ない水で効率的な消火活動を行うことができる便利な消防車だ。

↑モリタの「MVF」(13mブーム付多目的消防ポンプ自動車)。ポンプ車と高所作業車、高所放水車の機能を兼ね備えた消防車で、道路が狭い住宅密集地などで活躍する

 

消防車は小型のポンプ車でも1台およそ3000万円と高価な買い物だ。消防車を用意しなければいけない自治体にとっても負担が大きく、そう頻繁に買い替えられるものではない。MVFのように何役にも使える便利な消防車は、高額な出費を余儀なくされる自治体にとって、まさに“ありがたい車両”と言えそうだ。

 

農業機械の世界も大きく変わろうとしている

農業機械の中心になり活躍するトラクター。このトラクターがファッショナブルに変わりつつある。端緒となったのが、2015年に発表されたヤンマーのトラクターYTシリーズだ。デザインを担当したのは、工業デザイナーとして著名な奥山清行氏。赤い車体に、オシャレなフロントデザイン。これまでにない斬新なデザインをトラクターに施した。 運転席のあるキャビンは広々としており、フロントガラス、サイドガラスは継ぎ目がなく、360度の視界が確保されている。

↑ヤンマーYTシリーズのYT5101/2113(DELTA CRAWLWER)。同車両は後輪がクローラーになっていて、湿田や雨上がりの軟弱な農耕地の作業で威力を発揮する

 

農業機械の変化はトラクターにとどまらない。ヤンマーの田植機は次の写真のように変貌している。こうした働くクルマの分野も、オシャレが当たり前という時代がすでにやってきているようだ。

↑ヤンマーの田植機YRシリーズ。最新の田植機はこの車両のように、スポーツカーのようなおしゃれなフロントグリルが装着される。こちらの田植機も奥山清行氏によるデザインだ

 

↑進化する働くクルマは、子どもたちにも大人気のようだ。こちらは筆者が最近、制作に携わったもの。「DVDつき最強はたらくクルマパーフェクトずかん」(学研プラス/本体価格1300円・税別/2018年2月発売)