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2018/8/22 18:00

「日本以上の日本車大国」インドネシアの最新クルマ事情。特に人気なのは――

インドネシア国内最大のモーターショー「ガイキンド・インドネシア国際オートショー2018(GIIAS2018)」が8月2日より12日までの11日間にわたって、ジャカルタ市郊外のインドネシア・コンベンションセンター(ICE)で開催されました。

↑昨年の来場者は約40万人だったGIIAS

 

インドネシア経済を支える重要産業ともなっている自動車産業。開催初日の8月2日はインドネシアのジョコ・ウィドド大統領が会場を訪れており、いかに国を挙げてこのショーを盛り上げようとしているかがわかります。そんなインドネシアで開かれるモーターショーにはいったいどんなクルマが出展されたのでしょうか。

↑オープニングセレモニーではジョコ・ウィドド大統領も登場(右から2番目)

 

日本車の存在が圧倒的なインドネシア。今年はその状況に異変が――

実はインドネシアは東南アジアのなかでも特に日本車が強いことで知られています。直近の今年1月から7月までのシェアはなんと97.6%(トラックなど商用車含む)! これは日本国内よりも日本車のシェアが高い数字です。メルセデスやVWなど欧米勢はもちろん、韓国のヒュンダイなど“自動車業界の列強”が束になってかかっても敵わないという状況になっているのです。

 

なかでも圧倒的強さを誇るのが、トヨタ/ダイハツ連合です。ご存知のようにダイハツはトヨタの完全子会社の関係にあり、それはインドネシアでも同じ。ダイハツはインドネシア国内において2003年以降、トヨタとの共同開発車を相次いで発売。トヨタからの受託生産も行うことで両社合計でそのシェアは46.8%(今年1-7月)になり、半数近くを占めているのです。

 

その牽引役となっているのが、インドネシアで人気の多人数乗車ができるMPV「トヨタ・アバンザ」と、その兄弟車「ダイハツ・セニア」です。現在のタイプは3世代目で、いずれもダイハツがインドネシア国内で生産しています。2003年に登場した初代以降、この両車の人気は極めて高く、販売台数も常にトップを維持してきました。

 

ところが、昨年8月のGIIAS2017でこれを覆すことになる強敵が登場しました。それが三菱のMPV「エクスパンダー」です。このクルマ、登場時から評価が高く、インドネシアのカーオブザイヤー2018を受賞したほど。昨年10月に発売されると人気はうなぎ登りとなり、ついに今年1-7月の車種別販売台数ではアバンザ/セニアを抜き去ってトップの座に躍り出ました。三菱全体のシェアも13.2%と急伸。逆にそのあおりを受けたのがトヨタで、13.4%減。まさにエクスパンダーの影響をまともに受けた格好となったわけです。

↑昨年10月に発売開始以来、人気急上昇中の三菱「エクスパンダー」。今回発表された新グレードは上級志向に振った「GLS/AT」とスポーティな「SPORT/MT」の2タイプ

 

一方、海外勢でもその力を見せつけ始めているのが中国のウーリンです。今年1-7月のシェアはなんと1.4%を獲得。日本車と比較すればその数字は小さいように見えますが、この時点でマツダや日産よりもシェアは上回っているのです。インドネシアに参入してわずか1年足らずでこの実績は快挙と言っても過言ではないでしょう。

 

どうしてこんな快挙が達成できたのでしょうか。

 

ウーリンは中国国内でGM系メーカーとして販売実績を伸ばしており、海外進出の機会を虎視眈々と狙っていました。そうしたなか、2015年にGMがインドネシア国内での生産から撤退。このあとを受けたのがウーリンで、16年より国内生産を開始し、同時に販売店も充実させました。その結果、わずか1年で欧米勢を上回る実績を獲得できたというわけです。

↑“Drive、Grow、Progress”のテーマのもと、7人乗り多人数乗用車「ウーリンSUV」を発表

 

↑100%EVの「E100」は、中国で補助金の支給を踏まえると実質55万円という破格の価格で話題を呼びました

 

↑7人乗りMPV「コンフェロS」。これが市場拡大の牽引役となりました

日本では見かけないクルマが勢揃い!ダンスやミニコンサートなど見どころもいっぱい

そうした背景のもと、GIIAS2018は開催されました。会場となったICEはジャカルタ市内からクルマで小一時間ほどかかる再開発地域にあります。周囲にはショッピングモールやホテルなどが多数あるほか、インドネシア国内における自動車販売の最大手「アストラ」が手掛ける大型施設「AUTO2000 BSD City Astra」があることでも知られます。

↑会場となったICE

 

会場は中央ホールを中心に北ホールと南ホールに分かれ、その規模は千葉市にある幕張メッセと同じぐらい。ここの中央ホールには例年同様、BMW/MINIグループが陣取り、北ホールにバスやトラックなどの商用車と用品系が出展。南ホールに日系や欧米系乗用車メーカーが出展する配置となっていました。

↑会場の面積は5万㎡と、幕張メッセとほぼ同等の広さ

 

登場した新型車の大半は、すでにほかのモーターショーなどでお披露目されたものばかりで、目新しさという点ではイマイチの感は否めません。その意味では今年は新型車の端境期だったようです。それでも、MPV系やクロカン系など日本では見かけない車種が数多く出展されており、それを見れば東南アジアに来ていることを実感させてくれました。

↑バスのボディを架装する業者を「カロセリ」と呼びますが、インドネシア国内では大手だけでも100社以上あると言わています。LAKSANAはそのなかでも最大手のメーカーとして知られています

 

そんななか、唯一のワールドプレミアとなったのがホンダ「ブリオ」です。累計で23万台以上も販売した前モデルに続く第二世代モデルで、全長とホイールベースを拡大し、家族がゆったりと乗車できるのが最大のポイント。上級指向が強まっているユーザーの声に応え、あらゆる面で高品質さを追求しています。ラインナップは最上位の「TYPE RS」を筆頭に、標準車でエコカー減税が適用されるLCGC対象車である「TYPE E」「TYPE S」の3タイプを用意。この市場でのナンバーワンを狙います。

↑唯一のワールドプレミアとして発表されたホンダ「ブリオ」。全長とホイールベースを拡大し、家族がゆったりと乗車できるのが最大のポイント。ユーザーの上級志向に合わせています

 

各ブースはどこも平置きのフロア以外にステージを用意。ステージ上にはウリとする新車を並べ、ここではプレスカンファレンスも行われました。また、東南アジアで開催されるほかのモーターショーと同様、ダンスやミニコンサートといったイベントもこのステージ上で展開されました。

↑各ブースに設営されたステージではダウンスやミニコンサートなどが繰り返し披露されていました。これを見るために会場を訪れる人も少なくないそう

 

ほかのモーターショーでは見かけないのが「アストラ・フィナンシャル」のブースです。実は東南アジアで開催されるモーターショーは、新型車のお披露目をするだけでなく、実際に新車の販売も行われます。つまり、購入契約にあたってローンの仲介をするのがこのフィナンシャル会社なのです。親しみやすさを演出するためか、子どもが遊べるスペースを用意したり、ジョコ大統領が来場した際は民族衣装を着た子どもたちが出迎えたりするなど、その存在感は抜群でした。

↑ローン会社としてGIIASをサポートしていた「アストラ・フィナンシャル」。会場の至る所にブースを設け、ジョコ大統領が訪れた際は民族衣装を纏った子どもたちが出迎えました

 

また、会場の外に出ると「FOOD TRUCK FESTIVAL」という、キッチンカーが集まる屋台村ができていました。飲料メーカーの「Kopiko 78°」がスポンサーとなっているイベントで、インドネシア風弁当からホットドッグ、ケバブ、そして吉野家もあるなど、ここを巡るだけでインドネシアの食事情がわかるんじゃないかと思うほどの充実ぶり。

↑会場の外ではキッチンカーが集まる屋台村「FOOD TRUCK FESTIVAL」を開催。インドネシア風弁当からホットドッグ、ケバブ、そして吉野家など多彩なメニューが用意されていました

 

そして、今回のGIIAS2018で否応なく日本との違いを感じさせられたのが気温でした。連日35度を超えていた日本を出発し、赤道直下のジャカルタに着いたらどんだけ暑いんだろうと身構えていたわけです。ところが、驚いたことに日本よりも涼しかったのです! 朝晩は風が心地良く感じられ、昼間でも日陰にさえ入れば、屋外での食事も無理なくできてしまうほどでした。今年の気象状況がいかに異常なのか、身をもって体験したわけです。

 

また、「クルマ離れ」と言われて久しい日本と違い、インドネシアではクルマが憧れの存在。それだけにモーターショーには大勢の人が詰めかけます。会場を訪れるとその盛り上がり方が日本とはまるで違うことを肌で実感できました。そんな雰囲気を味わうためにもインドネシアをはじめ、東南アジアのモーターショーへ海外旅行のついでに出掛けてみてはいかがでしょうか?

 

最後に、各ブースの展示の様子をまとめました。

 

【ダイハツ】

↑ダイハツはコンパクトSUV「テリオス」をベースとした特別仕様車「テリオス・カスタム」を初出展

 

↑インドネシアで展開するコンパクトカー「アイラ」をベースとしたレーシングコンセプト、アイラ・ターボを出展

 

↑東京オートサロン2018出展車「ブーン」

 

【ジムニー】

↑あくまで参考出展としたジムニーはここでも大人気。ジョコ大統領も足を止めたほど。出展車は日本から持ってきたシエラで、「Jimny」のエンブレムを付けていました

 

【レクサス】

↑アジア初披露となったレクサスの新たなコンパクトSUV「UX」を出展。車両はジュネーブショーで披露された左ハンドルのままでした

 

↑北京モーターショーでデビューしたレクサス「ES」も東南アジア初披露となりました

 

【日産】

↑日産の新世代グローバル・ピックアップトラック「NP300ナバラ」の車台をベースに開発されたSUV「テラ」。インドネシアでの発表は4月の中国、5月のフィリピンに続く3番目。会場には懐かしい「テラノ」の姿もありました

 

【スズキ】

↑イグニス・スポーツは、ボディカラー別に3つの外観バリエーションを用意

 

↑インドネシア特産のバティック柄で身をまとったエルティガも出展

 

↑エルティガ・スポーツはノーマルよりもローダウンしたイメージで、精悍さを感じさせていました

 

【トヨタ】

↑東京モーターショーなど、ほかのモーターショーで披露された「コンセプト愛i」をインドネシア初出展

 

↑新たにCH-Rを加え、プリウスPHVなどとともにハイブリッドカーによる環境負荷の少ない社会を訴えていました

 

【BMW】

↑BMW/MINIは今年も中央ホールに“別枠”で陣取っていました

 

↑中央ホールをすべて使っただけにBMW/MINIの会場は広々としていました

 

【マツダ】

↑日本ではラインナップされていないマツダの最上位グレードSUV「CX-9」も出展

 

【いすゞ】

↑ピックアップのD-MAXをベースにしたSUVの「mu-X」。エンジンはコモンレール直噴ターボディーゼル

 

【アウディ/メルセデスベンツ】

↑欧州勢はBMW/MINI以外にもアウディやメルセデスベンツ、フォルクスワーゲンが出展

 

【シボレー】

↑アメリカ系で唯一出展したGM。マイチェンしたコンパクトハッチ「スパーク」と、SUV「トレイル・ブレイザー」を発表した

 

【オートバイ】

↑自動車への憧れは強いものの、インドネシアの庶民の足はいまもなおオートバイが中心。出展車両のなかには排気ガス規制の厳しい先進国では見られないキャブレター搭載車も