インドネシア国内最大のモーターショー「ガイキンド・インドネシア国際オートショー2018(GIIAS2018)」が8月2日より12日までの11日間にわたって、ジャカルタ市郊外のインドネシア・コンベンションセンター(ICE)で開催されました。
インドネシア経済を支える重要産業ともなっている自動車産業。開催初日の8月2日はインドネシアのジョコ・ウィドド大統領が会場を訪れており、いかに国を挙げてこのショーを盛り上げようとしているかがわかります。そんなインドネシアで開かれるモーターショーにはいったいどんなクルマが出展されたのでしょうか。
日本車の存在が圧倒的なインドネシア。今年はその状況に異変が――
実はインドネシアは東南アジアのなかでも特に日本車が強いことで知られています。直近の今年1月から7月までのシェアはなんと97.6%(トラックなど商用車含む)! これは日本国内よりも日本車のシェアが高い数字です。メルセデスやVWなど欧米勢はもちろん、韓国のヒュンダイなど“自動車業界の列強”が束になってかかっても敵わないという状況になっているのです。
なかでも圧倒的強さを誇るのが、トヨタ/ダイハツ連合です。ご存知のようにダイハツはトヨタの完全子会社の関係にあり、それはインドネシアでも同じ。ダイハツはインドネシア国内において2003年以降、トヨタとの共同開発車を相次いで発売。トヨタからの受託生産も行うことで両社合計でそのシェアは46.8%(今年1-7月)になり、半数近くを占めているのです。
その牽引役となっているのが、インドネシアで人気の多人数乗車ができるMPV「トヨタ・アバンザ」と、その兄弟車「ダイハツ・セニア」です。現在のタイプは3世代目で、いずれもダイハツがインドネシア国内で生産しています。2003年に登場した初代以降、この両車の人気は極めて高く、販売台数も常にトップを維持してきました。
ところが、昨年8月のGIIAS2017でこれを覆すことになる強敵が登場しました。それが三菱のMPV「エクスパンダー」です。このクルマ、登場時から評価が高く、インドネシアのカーオブザイヤー2018を受賞したほど。昨年10月に発売されると人気はうなぎ登りとなり、ついに今年1-7月の車種別販売台数ではアバンザ/セニアを抜き去ってトップの座に躍り出ました。三菱全体のシェアも13.2%と急伸。逆にそのあおりを受けたのがトヨタで、13.4%減。まさにエクスパンダーの影響をまともに受けた格好となったわけです。
一方、海外勢でもその力を見せつけ始めているのが中国のウーリンです。今年1-7月のシェアはなんと1.4%を獲得。日本車と比較すればその数字は小さいように見えますが、この時点でマツダや日産よりもシェアは上回っているのです。インドネシアに参入してわずか1年足らずでこの実績は快挙と言っても過言ではないでしょう。
どうしてこんな快挙が達成できたのでしょうか。
ウーリンは中国国内でGM系メーカーとして販売実績を伸ばしており、海外進出の機会を虎視眈々と狙っていました。そうしたなか、2015年にGMがインドネシア国内での生産から撤退。このあとを受けたのがウーリンで、16年より国内生産を開始し、同時に販売店も充実させました。その結果、わずか1年で欧米勢を上回る実績を獲得できたというわけです。
日本では見かけないクルマが勢揃い!ダンスやミニコンサートなど見どころもいっぱい
そうした背景のもと、GIIAS2018は開催されました。会場となったICEはジャカルタ市内からクルマで小一時間ほどかかる再開発地域にあります。周囲にはショッピングモールやホテルなどが多数あるほか、インドネシア国内における自動車販売の最大手「アストラ」が手掛ける大型施設「AUTO2000 BSD City Astra」があることでも知られます。
会場は中央ホールを中心に北ホールと南ホールに分かれ、その規模は千葉市にある幕張メッセと同じぐらい。ここの中央ホールには例年同様、BMW/MINIグループが陣取り、北ホールにバスやトラックなどの商用車と用品系が出展。南ホールに日系や欧米系乗用車メーカーが出展する配置となっていました。
登場した新型車の大半は、すでにほかのモーターショーなどでお披露目されたものばかりで、目新しさという点ではイマイチの感は否めません。その意味では今年は新型車の端境期だったようです。それでも、MPV系やクロカン系など日本では見かけない車種が数多く出展されており、それを見れば東南アジアに来ていることを実感させてくれました。
そんななか、唯一のワールドプレミアとなったのがホンダ「ブリオ」です。累計で23万台以上も販売した前モデルに続く第二世代モデルで、全長とホイールベースを拡大し、家族がゆったりと乗車できるのが最大のポイント。上級指向が強まっているユーザーの声に応え、あらゆる面で高品質さを追求しています。ラインナップは最上位の「TYPE RS」を筆頭に、標準車でエコカー減税が適用されるLCGC対象車である「TYPE E」「TYPE S」の3タイプを用意。この市場でのナンバーワンを狙います。
各ブースはどこも平置きのフロア以外にステージを用意。ステージ上にはウリとする新車を並べ、ここではプレスカンファレンスも行われました。また、東南アジアで開催されるほかのモーターショーと同様、ダンスやミニコンサートといったイベントもこのステージ上で展開されました。
ほかのモーターショーでは見かけないのが「アストラ・フィナンシャル」のブースです。実は東南アジアで開催されるモーターショーは、新型車のお披露目をするだけでなく、実際に新車の販売も行われます。つまり、購入契約にあたってローンの仲介をするのがこのフィナンシャル会社なのです。親しみやすさを演出するためか、子どもが遊べるスペースを用意したり、ジョコ大統領が来場した際は民族衣装を着た子どもたちが出迎えたりするなど、その存在感は抜群でした。
また、会場の外に出ると「FOOD TRUCK FESTIVAL」という、キッチンカーが集まる屋台村ができていました。飲料メーカーの「Kopiko 78°」がスポンサーとなっているイベントで、インドネシア風弁当からホットドッグ、ケバブ、そして吉野家もあるなど、ここを巡るだけでインドネシアの食事情がわかるんじゃないかと思うほどの充実ぶり。
そして、今回のGIIAS2018で否応なく日本との違いを感じさせられたのが気温でした。連日35度を超えていた日本を出発し、赤道直下のジャカルタに着いたらどんだけ暑いんだろうと身構えていたわけです。ところが、驚いたことに日本よりも涼しかったのです! 朝晩は風が心地良く感じられ、昼間でも日陰にさえ入れば、屋外での食事も無理なくできてしまうほどでした。今年の気象状況がいかに異常なのか、身をもって体験したわけです。
また、「クルマ離れ」と言われて久しい日本と違い、インドネシアではクルマが憧れの存在。それだけにモーターショーには大勢の人が詰めかけます。会場を訪れるとその盛り上がり方が日本とはまるで違うことを肌で実感できました。そんな雰囲気を味わうためにもインドネシアをはじめ、東南アジアのモーターショーへ海外旅行のついでに出掛けてみてはいかがでしょうか?
最後に、各ブースの展示の様子をまとめました。
【ダイハツ】
【ジムニー】
【レクサス】
【日産】
【スズキ】
【トヨタ】
【BMW】
【マツダ】
【いすゞ】
【アウディ/メルセデスベンツ】
【シボレー】
【オートバイ】