ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載。今回は、名門BMWが誇るラグジュアリーサルーン5シリーズのハイパフォーマンスモデル「M5」に試乗した!
【登場人物】
永福ランプこと清水草一
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、Webなどで、クルマを一刀両断しまくっています。2018年になってペンネームを「MJブロンディ」から「永福ランプ」へ変更。本連載をまとめたムック「清水草一の超偏愛クルマ語り」が大好評発売中。
安ド
元ゲットナビ編集部員のフリーエディター。永福ランプを慕い「殿」と呼んでいます。
【今回のクルマ】BMW M5
SPEC【ベースグレード】●全長×全幅×全高:4965×1905×1480㎜●車両重量:1950㎏●定員:5人●パワーユニット: 4.4ℓV型8気筒DOHCツインターボエンジン●最高出力:600PS(411kW)/6000rpm●最大トルク:76.5㎏-m(750Nm)/1800〜5600rpm●JC08モード燃費:9.4㎞/ℓl●1737万円
4WDから後輪駆動に切り替えられる
安ド「殿! 今回は1700万円以上もするBMWです!」
永福「それは高いな」
安ド「殿の愛車・BMW 320dはおいくらでしたっけ?」
永福「3年落ちの中古でコミコミ255万円。しかるにこのM5は、オプションと諸経費を含めれば、乗り出し2000万円を超える」
安ド「約8倍ですね!」
永福「そのわりに、見た目は大差なくないか?」
安ド「確かに、そんなにスゴいクルマには見えません!」
永福「M5は伝統的に、〝羊の皮をかぶった狼〟。控え目なルックスにスーパーなエンジンを搭載するのが定番だが、やはり庶民としては、2000万円超のクルマらしい部分が、どこかにあってほしい気はしてしまう」
安ド「トランクの端っこにちんまり付いたリアスポイラーは結構好きです! 乗り心地も、意外と良かったと思いますが」
永福「うむ。最近のBMWは実に乗り心地が良い。こんな超絶マシンでも快適なのだから、やはりBMW恐るべし」
安ド「これはこれで、スゴい技術なんでしょうね!」
永福「だな」
安ド「それにしても、ハンパない加速でした!」
永福「600馬力だからな」
安ド「殿が乗っていた、宇宙戦艦号ことフェラーリ458イタリアは、何馬力でしたっけ?」
永福「570馬力だ」
安ド「えっ! あの宇宙戦艦号よりパワフルなんですか!」
永福「車体はM5のほうがずっと重いが、V8ターボなのでトルクが太い。しかもM5は4WDだ。加速感はほぼ互角というところか」
安ド「0〜100㎞/h加速は、3・4秒だそうです!」
永福「ガーン! 458イタリアとまったく同じではないか!」
安ド「ドンッ! と加速してシートに貼り付けられるようなあの感覚、素晴らしいです!」
永福「安ドにフル加速をかまされて、思わず『キャ〜〜〜〜〜〜、お腹がす〜〜〜っとする〜〜!』と悲鳴を上げてしまったぞ」
安ド「僕も殿のフル加速で、お腹がす〜〜〜っとしました!」
永福「しかしこのM5の一番スゴいところは、4WDから後輪駆動に切り替えられることだ。しかもそのときは、スピン防止装置も自動的にカットされる」
安ド「はい! 殿が後輪駆動モードでフル加速した時は、後輪が空転しまくってました!」
永福「直線なら空転するだけで問題ないが、カーブだと即ドリフトだろう」
安ド「怖いですね!」
永福「まあ、大丈夫だろう」
安ド「なぜですか?」
永福「このクルマは、後輪駆動にできる、ということが重要であって、別にしなくてもいいのだ。ホントにすると危ない」
安ド「ガクー!」
永福「男の勲章みたいなものだな」
【注目パーツ01】4.4L V8ターボエンジン
ボンネット下に隠された強心臓
外観はただのリッチなセダンですが、ボンネットの下には最高出力600馬力を誇る強力なV8ツインターボエンジンが搭載されています。ちなみにボンネットは軽量かつ高剛性のアルミ製なので、軽やかに開きます。
【注目パーツ02】サイドミラー
刺さりそうなほどの尖り具合
デザインは穏やかなようでいて、細かい部分は個性的です。昨今、燃費向上のために空気の流れを考慮したエアロミラー装着車は増えていますが、このような奇怪な形状はなかなか見られません。上部の内側が尖っています。
【注目パーツ03】M(エム)
スポーツ車を手がけるサブブランド
1972年にBMWモータースポーツ社として始まり、現在はBMW M社となったサブブランドです。BMWのスポーツモデル開発を専門にしていて、M5のほか、M3なども有名ですね。メルセデスのAMGに近い存在かもしれません。
【注目パーツ04】フェンダーアーチプロテクション
小さなアーチは日本仕様ならでは
フェンダーと呼ばれるタイヤを囲む部分に小さなアーチが付いています。はっきり言ってデザイン上いらない部分ですが、これは法規対策。日本ではタイヤがフェンダーより外側にはみ出ると違反になるのです。
【注目パーツ05】カーボンルーフ
上部を軽量にして走りも安定化
スポーツ走行のために低重心設計は欠かせません。M5の屋根(ルーフ)は、CFRPと呼ばれるカーボンファイバー強化プラスチック製なので、とっても軽いです。おかげでコーナリング中も低重心で安定した走りを楽しめます。
【注目パーツ06】シート
スポーツ走行のために設計された
インテリアはベースの5シリーズを生かしつつ、専用にデザインされています。このシートもM専用で、座面前後や背もたれ前後だけでなく、高さや背もたれの幅なども調整できます。なにより、デザインがカッコいいです。
【注目パーツ07】フロントエアダム
空気を取り入れる巨大な穴
全体的なフォルムはおとなしめですが、前後バンパーは専用デザインが施されています。特にフロントバンパーには大きな穴がボコボコ空いていて、“エンジンにたくさん空気を取り入れたい”という思いが伝わってきます。
【注目パーツ08】ステアリング
一瞬で凶暴に変化できる
いやがおうにも赤いレバーが目に入ってきますが、これはワンタッチで任意設定のスポーツモードに変更できてしまうスイッチ。ステアリング内側のステッチ(糸)もM仕様の赤や青のカラーリングが施されていて特別感があります。
【注目パーツ09】8速 トランスミッション
デザインも素敵なハイテクAT
細々と字が表示されていますが、これも未来感があって素敵です。実際、この「8速Mステップトロニック・トランスミッション」はハイテクで、モード選択機能を備え、複数のギアを飛び越えたシフトダウンも可能です。
【これぞ感動の細部だ】4輪駆動システム「M xDrive」
ハイパワーすぎて初の4WDに!
BMWのハイパフォーマンスモデルを指す「M」シリーズのセダンとしては初めての「x Drive」、つまり4WDモデルです。これだけ強力になったエンジンパワーを路面に伝えるには、もはや2輪駆動では限界なのでしょう。同システム最大の特徴は、2WD(FR)に切り替えできること。間をとった、4WDながらリアの駆動トルクが多めというモードも選べます。