【伊予鉄の発見2】高浜線の見どころトップはやはり平面交差
さて、それぞれの路線に乗車してみたい。JR予讃線を使って松山に訪れるとちょっと不思議に感じることがある。松山駅に降り立つと、駅前が意外に閑散とした印象なのだ。
ところが、市内電車に乗車して訪れた松山市駅は賑やかそのもの。JR松山駅との差に驚かされる。松山市の中心は明らかにJR松山駅でなく、伊予鉄の松山市駅であることが分かる。
松山の中心でもあり、伊予鉄最大の賑やかな駅でもある松山市駅。郊外電車の乗り場は駅ビル1階にある。
1〜3番線ホームがあり、1番線は横河原線、2番線は高浜線のホームとなっている。両線のほとんどの電車が直通運転、それぞれの路線に乗り入れている。松山市駅は途中駅にすぎない。路線名が異なるものの、同じ路線として利用されている。3番線の郡中線(ぐんちゅうせん)のみ独自の運転体系で、松山市駅から折り返し運転となっている。
さて、今回は2番線から高浜線の電車に乗ってみよう。早朝、深夜を除き、ほぼ15分間隔で便利、発車する分数も毎時同じで分かりやすい。ホームへ入ってきたのは主力車両3000系の3両編成。オレンジ一色の華やかな姿だ。
終点の高浜駅へ向かう列車はすべて「上り」。横河原線の横河原駅から松山市駅へ向かう電車が「上り」で、松山市駅で路線名が高浜線と変わるものの、横河原線と共通の向きで「上り」「下り」の列車が運転されている。
高浜線のハイライトといえば、やはり大井町駅前にある平面交差(ダイヤモンドクロッシング)だろう。郊外電車と市内電車の線路が直角に交わっている。
電車に乗車していて、この平面交差部分を走ると“ト・ト・ト・ト・トン、ト・ト・ト・ト・トン”という音が聞こえる。これこそ車輪が、交差するレールを渡るときに奏でる、独特のサウンド(ジョイント音)なのだ。
ちなみに国内の鉄道で直角に交わる平面交差区間は、伊予鉄の同ポイントの他に2箇所のみ。名古屋鉄道の名鉄築港線と、名古屋臨海鉄道東築線の平面交差(東名古屋港駅近くにある)。とさでん交通のはりまや停留所前の交差点にある。
前者は列車の本数が少なめで市街地から遠い。また後者は路面電車同士の平面交差だ。高速鉄道と路面電車が直角に平面交差、歩道から気軽に見えるポイントは、日本ではここのみと言って良い。
【伊予鉄の発見3】ドラマのロケ地となったホームにハンカチ発見
平面交差がある大手町駅のおとなりが古町駅(こまちえき)。この駅構内に郊外電車と市内電車の車庫がある。古町車庫は古町駅のホームからも良く見えるので、時間に余裕があったらぜひ立ち寄ってみたい。
西衣山駅(にしきぬやまえき)付近で、JR予讃線の線路と交差、電車は伊予灘方面を目指して走る。港山駅(みなとやまえき)を過ぎると、乗車する電車からすぐ横に海が見え始める。
そして到着するのが梅津寺駅(ばいしんじえき)だ。
この駅、ドラマ好きに人気が高い駅だ。海に面した2番線のホームが1991年に放送され大ヒットした「東京ラブストーリー」最終回のロケ地として使われた。ドラマでは「バイバイ カンチ」と書かれたハンカチが海に面したホームのフェンスに結びつけられた。放送されてから30年近くたった今も、このフェンスにハンカチを結びつけに訪れる人が見かけられる。筆者が訪ねた時もフェンスに結びつけられたハンカチが複数、見かけられた。
ちなみに梅津寺駅近くに、伊予鉄と縁が深い車両が眠る。駅そばの梅津寺公園に開業当時に使われた甲1型1号機関車と客車が保存されている。日本国有鉄道指定記念物であり、県指定民俗資料に指定された貴重な車両だ。
松山市駅から梅津寺駅までは複線だが、梅津寺駅から先、高浜駅までの一駅区間のみ単線区間となる。
高浜駅前の高浜港からは目の前に浮かぶ興居島(ごごじま)や、伊予灘に浮かぶ諸島群に向かう連絡船が、また駅から600mの位置にある松山観光港からは、広島や小倉方面へ向かうフェリーや高速船が発着している。