乗り物
2015/6/9 8:00

VICSの新サービス、VICS WIDEとは何か?

 

2015年4月23日からVICSの機能を強化させた新サービス「VICS WIDE」がスタートしています。現行VICS車載機の20%~30%が置き換われば、目的地への到着時間が10%ほど早くなり、2.1兆円~2.8兆円の経済効果を得られるなど、同サービスは非常に期待されている道路交通情報です。

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本記事では、「そもそもVICSとは何?」という基本的な解説から、さらに、VICSと併せてよく登場する「光ビーコン」「電波ビーコン」について触れつつ、「VICS WIDE」の機能について紹介。最新の道路交通情報サービスを紹介していきます。

 

VICSは3つの方式から成り立つ

 

「VICS WIDE」の説明に入る前に、まず現行の「VICS」の機能を紹介していきます。「VICS」を提供している道路交通情報通信システムセンターのサイトによると

 

「VICS」とは、渋滞や交通規制などの道路交通情報をリアルタイムに送信し、カーナビゲーションなどの車載機に文字・図形で表示する画期的な情報通信システムです。VICS情報は24時間365日提供しています。

 

とのこと。

 

もう少し具体的に言うと、VICSには「FM多重放送」「電波ビーコン」「光ビーコン」の3種類の方式があります。

 

FM多重放送は「都道府県警察」や「道路管理者(国土交通省、地方自治体、道路会社)」から収集された情報をVICSセンターで処理し、それを各地のFM放送局の電波に乗せて提供します。提供される情報は、渋滞情報や所要時間情報のほか、事故などによる規制情報などです。大ざっぱに言うと、カーナビ上に赤やオレンジの色で表示されているのがVICSによる情報です。FM電波を利用するため広い範囲で情報を取得可能なのがメリット。都道府県ごとに情報が分断されてしまう点と、FM電波の入りにくい山谷部、建物の影などでは受信できない点がデメリットと言われています。受信にはFM多重アンテナが必要となります。

 

続いて、「光ビーコン」は一般道の主要幹線道路に設置されている情報提供システム。都道府県警察が取得したデータを交通管制センターが処理し、提供しています。光ビーコンは、自車の前方約30kmと後方約1kmの交通状況をカーナビに送信。「FM多重放送」同様、渋滞情報や所要時間情報のほか、事故などによる規制情報を教えてくれます。受信にはビーコン受信機が必要になります。

 

次に、「電波ビーコン」は主に高速道路上に道路管理者によって設置される情報提供システム。道路管制センターが情報を処理し、情報を提供します。「電波ビーコン」にはITSスポット(5.8GHz帯DSRC)および2.4GHz帯電波ビーコンの2つの種類があり、前者は将来的に後者に移行予定で、今後主流になるのはITSスポットによる情報提供となります。。ビーコン設置地点の前方、合計約1,000kmの広域な高速道の情報を提示、IC間の所要時間や渋滞方法や分岐案内などを教えてくれます。受信には電波ビーコン受信機が必要です。

 

これら3つの情報をカーナビが統合し、最適な形でナビ上に表示してくれるのがVICSの概要です。

 

「VICS WIDE」は新しい4つのサービスを提供

では、この度提供が始まった「VICS WIDE」は何が新しいのでしょうか? まず、「VICS WIDE」が使用するのはFM多重放送です。「VICS WIDE」ではFM多重放送の伝送容量を現行の最大50KBから最大100KBと約2倍に拡充。これにより、より細かなデータの提供が可能となっています。

 

1、一般道リンク旅行時間の提供

「VICS WIDE」では、新たにリンク旅行時間を教えてくれるようになりました。「リンク旅行時間」とは聞き慣れない言葉ですが、道路の交差点間などの一定区間の通過に要する時間のことです。これまでの「FM多重放送VICS」では、高速道路のリンク旅行時間は提供していましたが、一般道には非対応でした。一般道にも対応したことで、より精度の高い渋滞回避ガイドが可能になります。

 

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2、火山噴火情報などの緊急情報の提供

現行の「FM多重放送VICS」では、特別警報を含む気象警報を提供しており、ユーザーが手動で操作することで情報を確認できます。また、大津波情報については緊急情報として提供しており、自動的に画面上にポップアップ表示されます。「VICS WIDE」では上記だけでなく、火山噴火情報を加え、ほぼすべての特別警報をポップアップで表示してくれるようになりました(データは気象庁が提供)。なお、地震情報だけは除外されています。というのも、「VICS」も「VICS WIDE」も、更新は5分に1回。速報性が求められる地震情報では適切ではないという理由で、採用されていません。

 

 

3、局地的大雨をビジュアル表示

「VICS WIDE」では、50mm/h以上の大雨が発生しているエリアの情報を、250m四方単位で提供してくれます。近年多発するゲリラ豪雨を想定したもので、ナビ画面上に赤や黄色の色で降雨エリアを表示します(データは国土交通省のデータを利用)。

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↑局地的大雨エリアの表示例。上写真が12時、下写真が12時10分のエリア。なお、本表示は前方視認性が低下するとされる1時間50mm以上の大雨時のみ出現する

 

【特に注目!】4、プローブ情報を活用したより正確な交通情報の提供

リリース上では2番目の特徴でしたが、かなり注目なのでじっくり紹介します! 「VICS WIDE」では、プローブ情報を活用し、車両感知器の存在しない区間でも交通状況の把握と交通情報の提供が可能となります。これにより、精度の高いルート案内ができます。

 

プローブ情報というニューワードが登場しましたが、これはタクシー車両1万台の走行状況から最新の交通情報を収集して提供するというもの。まずは東京地区から始まり、関東圏へと拡大を予定します。同情報では、直進・右折・左折の交差点流出方向別のリンク旅行時間が提供可能で、車線ごとの車両の流れを教えてくれます。右折車線だけで混んでいて、左折/直進方向は空いているというシーンが道路では多々ありますが、こうした場面でも正確に渋滞情報を提供してくれるのです。

 

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↑上が従来の情報。下がVICS WIDEが提供してくれる情報

 

といった形で、 「VICS WIDE」はより快適に、目的地まで早く到着できるサービス。利用するには 「VICS WIDE」対応のカーナビを購入する必要がありますが、各カーナビメーカーの最新機種は対応を始めています。なお、現行のVICSも引き続き提供されるので安心。

 

夏のボーナスで新車を購入し、カーナビも一緒に購入しようと思っている人はぜひ、 「VICS WIDE」に対応してるかどうか確認してみてください。

 

VICS WIDEについて、もっと知りたい方はこちら!

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