ブリヂストンサイクルから12月11日に発表されたTB1eは、通勤や通学、休日のサイクリングなど、普段づかいに特化した電動クロスバイクです。日常的に自転車通勤をしている自転車系ライターが、発売前のTB1eを通勤バイクとして使用してみました。
【今回紹介する製品】
ブリヂストンサイクル
TB1e(ティービーワンe)
価格 12万9800円(税別)/2020年2月上旬発売予定
●適正身長:151㎝以上 ●シフト段数:外装7段 ●1充電あたりの最長走行距離:130km(エコモード) ●バッテリー:14.3Ah相当 ●充電時間:約4時間10分 ●重量:22.3kg ●カラーバリエーション:全4色(E.Xブラック、T.Xマットグレー、M.Xオーシャンブルー、T.Xネオンライム)
もっとも通勤しやすい自転車は?
これまでいろいろなタイプの自転車で通勤をしてきた筆者。かつてはシティサイクル(いわゆるママチャリ)やMTBを、今はロードバイクとBMXを使って、ほとんど毎日自転車に乗る日々を送っています。その経験から考えるに、実は一番通勤しやすい自転車は、普段づかいに便利な装備が充実しているシティサイクルだと思っています。もしくはシティサイクル的なカスタマイズを施した自転車。そんな視点で検証すると、果たしてこのTB1e、通勤バイクとしていい感じにストライクなのでした。
早速TB1eを企画・開発した木村龍一さんにお話を聞くと、「この自転車のベースになったTB1という電動アシストがついていないモデルも私が企画したものなのですが、このTB1eも基本的なコンセプトはノンアシストのTB1と同じです。つまり、シティサイクルのような使いやすさとクロスバイクの走る楽しさを併せ持った自転車なのです」とのこと。
「シティサイクルの定義というものは実際のところないのですが、私たちとしては、カギ、スタンド、泥除け、ライト、バスケットがあらかじめ付いている自転車のことだと考えています。ユーザーにときどきヒアリングを実施するのですが、これらのパーツが搭載されているものは、普段づかいに便利、というデータも得られています。ただ、そればかりだとかっこよさが足りない(笑)。ライトの位置やフレームのグラフィックなど細かいデザイン的な部分もこだわったり、バスケットを標準でなくオプションとするなど、クロスバイクとシティサイクルのいいところを兼ね備えた、通勤にちょうどいい自転車がTB1eなのです」(木村さん)
通勤に最適で快適な機能を搭載
筆者の経験上、通勤時の自転車に求められるのは、快適さと安全性だと考えます。意外に思うかもしれませんが、速さ(スピード)ではないのです(もちろん、それがあるに越したことはありませんが)。この場合の快適さとは、使い勝手の良さと言い換えることも可能です。
「カギとスタンドは街乗りの自転車には必須です。クロスバイクなど、一般的なスポーツバイクはカギやスタンドなどを後付けで購入するのが普通ですが、TB1eには標準装備されています。またチェーンやブレーキなどには、ほとんどメンテナンスフリーのパーツを使用して、タイヤもひび割れなどの劣化に強く、トラブルが少ないものを使用しています」(木村さん)
・スタンド付きだから駐輪する場所を選ばない(スポーツバイクにスタンドはついていない)
・タイヤやリヤブレーキのメンテナンスにあまり気を遣わくてもよい(スポーツバイクは何度か乗るたびに足周りの整備が必要)
・ライトやカギなど必要なアイテムが最初から装備されている(通勤で使うなら結局は後付けが必要)
・ほったらかしでもサビにくいチェーン(スポーツバイクは1か月に一度はチェーンの掃除と注油が必要)
TB1eがなぜ自転車通勤に適しているか、その理由を装備の面からざっくり挙げると上記のようになりますが、ロードバイクなどのスポーツバイクで自転車通勤を行っていて「不便だな」と感じる部分をほとんどフォローしているところに驚きます。基本的に”通勤”することをメインとすれば、自転車に手がかからないのはありがたい限りです。そのほうが、きっと仕事にも集中できるはずです!
ストレスなくパワフルな走りも楽しめる
自転車通勤のいいところは、電車やクルマで移動するストレスから解放されるところ。とはいえいくら便利だと言われても、走るのが楽しくなければ続けるのが億劫になってしまいます。その点TB1eはパワフルな電動アシストシステムを搭載しているため、走る楽しさも味わえる自転車です。
特徴的なのは、前輪に搭載した電動モーターです。ペダルを踏むことで後輪が回転して前進するのが、一般的な自転車の仕組み。TB1eはその人力による後輪駆動に加えて前輪に電動アシストのモーターを組み込んだことで、前後両輪で駆動するから坂道でもグイグイ進みます。
電動アシスト自転車といえば、航続距離も気になるところです。TB1eは大容量のバッテリー、左ブレーキをかけたときと走行中にペダルを止めたときに自動的に充電される「走りながら自動充電」機能を搭載し、アシスト力が一番高いパワーモードで約54km、エコモードでは約130kmの航続距離を実現しています。また充実の電動ユニットに加えて7段変速を採用することで、スポーティな走りが体感できると同時に上り坂もラクに走ることが可能です。
平地、街中、坂道を走ってみた!
筆者がほぼ毎日走っている川沿いのサイクリングロード~幹線道路、片道約10kmの道のりをTB1eで自転車通勤してみました。
【平地・街中】
ほとんどフラットといっていいサイクリングロードは、本当に快適です。前後が駆動する自転車のため、違和感があるかと思いきや漕ぎ出しもスムーズ。低速時からアシストが効いてくれるため、ぐんぐんスピードに乗っていく感覚があります。道路交通法により時速24km/h以上はアシスト力がカットされてしまいますが、そのちょっと手前の時速20km/hくらいの速度域が、アシスト力と自力のバランスがとれていて実に気持ちいい! 通勤していることを忘れるくらいスポーツをしている感覚に。
向かい風もまったく苦になりません。アシストなしの自転車に乗っている方ならわかると思いますが、向かい風の巡行は思いのほかきついもの。それがTB1eなら、鼻歌交じりでスイスイ進んでいけます。しかも1回の充電で130kmの航続距離があるので、休日には少し長めのサイクリングにも出かけたくなります。
前述した、スタンドやカギが搭載されている点も、改めてすごく便利でした。筆者がいつも乗っているロードバイクはスタンドもカギもついていません。カギはワイヤーロックを持ち歩けばまだいいのですが、スタンドがないので駐輪場以外に停める場合は場所を選ぶことになります。またパンツが汚れないようにチェーンガードがついているので、すそを捲り上げたりする必要もなく、乗り降りがかなりスムーズにできます。
気軽に駐輪できないと会社と自宅の往復になりがちですが、しっかりしたカギがあるだけで、帰宅途中に夕食を食べたり、スポーツクラブに立ち寄ったり、いつもと違う行動をする気になります。たったこれだけ(と言っては失礼ですが)のことで行動範囲まで変わったことに驚きました。
【坂道】
坂道は両輪駆動によって、何も考えなくてもラクに上ってくれる印象。後輪駆動だけの場合、上り坂の傾斜に合わせて少し前傾になることでラクに上ることができるのですが、TB1eは前輪も駆動するため、自転車を引き上げてくれます。この感覚がまた新鮮!
スーツを着て通勤をする人には、このパワフルさはうれしい限り。テストした時期は初冬でしたが、夏場でもそれほど汗をかかずに坂道を上ることができるでしょう。
また上りだけではなく、下りの安定感にも驚かされました。フレーム全体の剛性が高く、特にフロントフォークがしっかりと路面をとらえるため、思い通りに自転車が操作でき、下り坂でも不安感がありませんでした。
これは最強の通勤自転車だ!
筆者は電動アシスト自転車を通勤に使用したことはなかったのですが、しばらく乗ってみて、これは安全な乗り物だと感じました。街を走る自転車の危険な運転のひとつとして、「スピードを落とすべきところで落とさない」ことが挙げられるでしょう。アシストがない自転車は一旦落とした速度を再び上げるのが大変なため、危険な速度で走ってしまうこともあります(実際、筆者にもその経験があります)。しかしTB1eはそのアシスト力の恩恵で漕ぎ出しが軽いため、スピードを落とすことに躊躇がありませんでした。その結果、安全なスピードで走ることができました。
パワフルなアシスト力があり、アシスト力がなくなることを気にしなくてもいいバッテリー容量と走りながら自動充電できるシステムを採用。さらに通勤や街中ポタリングでの使用に快適な充実のパーツ類を搭載したTB1eは、日本の通勤事情に精通した日本の自転車メーカーによる、日本のビジネスパーソンを快適にする最強のコミューター(通勤)自転車だ、という結論に至りました。しかも税抜き12万9800円という価格は、他社のスポーツタイプの電動アシスト自転車と比較してコストパフォーマンスも良好。自転車通勤・通学に興味がありつつも躊躇しているなら、きっとTB1eが背中を押してくれるはずです。
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