乗り物
クルマ
2020/2/3 17:00

最新版ルノー「トゥインゴ」の良いところ10個を「クルマ好き」にも「無関心層」にも伝える試乗レビュー

フランスのブランドであるルノーのトゥインゴは大好きなクルマのひとつ。新型車が出れば試乗させてもらい、 現行モデルが出たタイミングでは仙台までロングツーリングさせてもらいました。最近の状況としては、昨年8月にマイチェンモデルが登場、12月にはルーフがキャンバス地になった「キャンバストップモデル」が追加。そして、今年の2月3日からはMTモデルが追加されるなど、大きな話題が続いています。今回このタイミングでルノーさんからお声がけをいただき、キャンバストップモデルを試乗する機会に恵まれました。

 

その際、言われたのが、「クルマ好きな方にはトゥインゴを知ってもらっているのですが、一般の方には知名度がまだまだで……」というコメント。「ルノーさん、謙虚だからなぁ」と思ったのですが、確かに国内市場におけるルノーのシェアは2%前後。トゥインゴが所属するAセグメントカテゴリではシェア2位とはいうものの、確かに、「クルマ好きが知るクルマ」であることは否めません。

 

しかし、このクルマは本当に良いクルマなんです。クルマ好きはもちろん、クルマに興味がない人でも乗って損はない、むしろ得が多いクルマ!ということで今回は、トゥインゴをもっと知ってもらいたいというストレートな気持ちのもと、実際に房総半島を試乗&撮影して見つけた「魅力」を紹介していきましょう。基本的にはクルマに詳しくない人向けの内容になっていますが、クルマファンにも「へぇ、そうなんだ」という薀蓄も入れ込んだので、ご期待ください。

 

【今回紹介するモデル】

ルノー

トゥインゴ

179万円~210万6000円

SPEC【キャンバストップ】●全長×全幅×全高:3645×1650×1545㎜●車両重量:1040㎏●パワーユニット:897㏄直列3気筒DOHC+ターボ●最高出力:92PS(68kW)/5500rpm●最大トルク:135Nm/2500rpm●WLTCモード:16.8km/h

【ディテール写真はギャラリーで】

 

 

【良いところ01】世にも稀なエンジンとミッション配置

↑ラゲッジの下にエンジンがあります。なお、マイチェン前はカバーを外すだけでエンジン部を見ることができましたが、現行モデルからはナットでしっかり固定されているため、カバーを開けるのが大変になりました。コレ、豆知識

 

トゥインゴで最初に触れなければならないのは、クルマ用語で言うところの「RRレイアウト」であること。RRレイアウトというのは「リアエンジン/リアドライブ」、車両の後ろにエンジンがあって、後輪を駆動させてパワーを得る方式です。ちなみに、一般的なコンパクトカーはFFレイアウトで「フロントエンジン/フロントドライブ」で、エンジンが前にあって、前輪を駆動させる方式。

 

このRR、かつては一般的な車両レイアウトでしたが、現在ではレア。いまも同レイアウトを採用しているのは、ポルシェの代名詞「911」とトゥインゴの兄弟車にあたるスマートの「スマート フォーフォー」ぐらいでしょうか。数百ある車種のなかで極めて珍しいクルマなので、人とは違ったクルマに乗りたいという人は一択でトゥインゴがおすすめです。ちなみに、RRだからといって乗り心地や運転操作が異なることはありません。厳密にはあるんですが、そちらは【良いところ07】や【良いところ08】で触れるとして、日常的なドライビングではFF車と同じ感覚で乗ることができます。

↑エンジンのイメージ図

【良いところ02】ドアが4枚あるところ

トゥインゴはドアが4枚あります(クルマ業界的にいうとラゲッジのドアも入れて5ドア)。5ドアって当たり前じゃないの?と思うかも知れませんが、このクラスの輸入車だと、前席のドアしかない3ドアのモデルが多いです。

 

だからそもそもの実用性は高いうえ、輸入車のライバルモデルのなかでも、最も広いニールームを確保しています。リアにエンジンがあるからといって。後席が犠牲になってないのです。

↑後席の様子。中学1年の娘を試しに乗せてみたところ、ニースペースが少し余るぐらいでした

 

ちなみに筆者は以前、3ドアのクルマに乗っていましたが、3ドアだと後席がかなりの確率でデッドスペースになります。荷物はラゲッジに乗せるし、前席を倒してまで荷物を載せる作業がひと手間。後席を無駄使いしていると思ったことは一度や二度ではありません。

 

その点、5ドアだったら「人を乗せるアクセス」だけでなく「荷物を載せるアクセス」も抜群。今回の取材時も上着を後席に置くとか、コンビニの買い物袋を後席に置くといった行為がラク。まどろっこしい説明になりましたが、5枚ドアは正義ということです!

↑リアを開けるハンドルはリアウインドウと一体化するような位置に。そのため、3ドアモデルのようにスタイリッシュに見えます

 

【良いところ03】地味なところにもアクセント

リアドアの話になったので、リアドア内側のちょっとしたワンポイントを紹介(上写真)。これは、ドアを閉めるときに掴む取手です。この取手、デザイン重視に見せかけて、ちょっとした袋や小物バッグを引っ掛けるのにピッタリ。子どもがお菓子を食い散らかしたときのゴミ袋にもなるし、折りたたみ傘を引っ掛けたら車内でゴロゴロと転がらないし、汎用性があります。

 

単に取手だけだと実用性偏重で味気ないから、車両アイコンをあしらうところは絶妙。トゥインゴのデザインは洗練されていて、クルマのある豊かな生活を感じられるポイントともいえるでしょう。

↑クルマのアイコンは車両サイドにも。ホイールは十字形で洗練されたデザイン

 

 

【良いところ04】シンプル・イズ・ベストだとわかる運転席まわりとシート

後席の話になったので室内および前席の良いところを見つけていきましょう。上の写真を見てもらうとわかるのですが、トゥインゴの室内は実にシンプル。運転席メーターと中央パネルが白フチでつながったデザインが美しく、ハンドルのボタン類も最小限。

最近の特に国産車は運転席や助手席まわりに収納が多いと感じています。モノをおける場所があるからモノを置いてしまう。すると整理整頓しなきゃいけなくなる。自宅では部屋や風呂やトイレの掃除、洗濯物を畳んで散らかったモノを整頓、仕事では日々与件の整理ーーなのに、クルマの中も整理整頓しなくてはいけないのかと憂鬱になる……

 

というのは言いすぎですが、収納がありすぎると車内が散らかりやすいのは事実。その点、トゥインゴは最小限の収納でそうした心配は無用。最小限とはいえ、ドアサイドにはペットボトルや小物を入れるスペースがあるし、シフトノブ前にも小銭や小物を入れる空間があるので、常識的に使う分には十分。今回の取材車両はETCが設置前だったので、ここにETCカードやレシートを入れておきました。

↑シフトノブの奥側に小物スペースがあります

 

なお、昨年のマイチェンでディスプレイオーディオとインパネが一体化したデザインになりました。それまでは後付け感がたっぷりでしたが、現行モデルはエレガントさが漂います。

↑インパネと一体化して統一感のあるディスプレイオーディオ。なお、スマホとのミラーリングができるので、スマホ画面を映し出すことができ、ナビゲーションなどをこの画面を通じて確認することができます

 

【良いところ05】 薀蓄を語りまくれる空気穴

【良いところ01】で触れたようにFF車のエンジンは車両前方にあります。エンジンは熱を持つので冷却水で冷やす必要があり、そのときに熱くなった冷却水の熱を取るのが、走行時に取り入れる風です。

 

この風を取り入れる穴を「エアインテーク」というのですが、エンジンが後ろにあるトゥインゴの場合、エアインテークも後ろ側にあります。それが車両左側にある上写真。一見すると給油口のようにも見えますが、トゥインゴの給油口は右側にあります。

 

RRレイアウトは、クルマ好きの人たちでは話のタネになりますから、エアインテークも格好の的。クルマ好きの人にドヤ顔できたりもしますし、クルマを知らない人には自分のこだわりを語ることができます。

 

また、こうしたパーツがあると、クルマ自体の構造に興味を持つきっかけになります。現代のクルマは構造や仕組みを知らなくても、前のクルマについて行ったり、自動で止まったりできるので、何かフックがないと、鉄の塊に囲まれて運ばれるだけになりがち。この穴ひとつで、カーライフが大きく変わる良いところだと思います。

 

【良いところ06】ラゲッジオープンすらスマートだ

前半から熱く語りすぎたので、ここはさらりと。ラゲッジを開けるためのボタンがリアワイパーの根本にあります。マイナーチェンジ前はリアバンパーのところにあって分かりづらく、手探りで探さなくてはいけなかったので、地味にストレスな作業でした。8月に変わったマイチェン版は位置がピンポイントで探れるので所作もスマート。これは改善された良ポイントだと思います。

 

【良いところ07】加速が超心地よい

トゥインゴは0.9リットルの3気筒エンジンを搭載し、馬力は92PSです。ターボ機構が載っているので、アクセルを踏み込んだときの加速が数字以上に気持ちいいです。特に、70-100km/hの加速は1クラス以上の性能のクルマに乗っている印象。高速道路の合流で、アクセルを踏めども踏めども速度が上がらないなんてことはありません。今回の旅の撮影をしてくれたカメラマン(3.0リットルクラスの車両を所有)も思わず無線機で、「0.9リットルを侮ってました」と驚いていました。

 

ミッションはオートマですが「EDC」という2つのクラッチをつなぐタイプで、小気味よく変速してくれて爽快。同クラスの輸入車は「セミAT」というMTライクなミッションを採用しているので、変速時にカックンとする構造なのですが、トゥインゴにはそれがありません。

 

また、RRでよく心配される高速域での直進安定性も気になりません。といっても、トゥインゴは速く走るクルマではなく、適度な速度でマイペースで走るモデルなので、日常域では快適そのもの。ゆったり走りながら、ときには俊敏ーー小さいけど頼れる奴です。

 

 

【良いところ08】激狭な道ももろともしない小回りの良さ

RRの特徴として「よく曲がる」があります。トゥインゴもその例に漏れず最小回転半径は4.3mと小回りが効きます。どれぐらいすごいのかを試したのが上の写真。狭い道が入り組む都内の戸越銀座でおそらく最も曲がるのが厳しい道を走行した様子。

 

この十字路、あちこちにクルマのこすったあとがある難所で、大きめのSUVだとまず曲がれないレベル。そんな道もトゥインゴなら涼しい顔でクリアできます。お住まいのエリアや駐車場が狭いという方は絶対的にオススメです。

 

【いいところ09】適度にアナログだからアンダー200万円

トゥインゴは輸入車としては最も安い価格帯であるアンダー200万円で買えるモデルです(キャンバストップモデルは除く)。それだけに【良いところ04】でも触れたように装備はシンプル。シート調整も手動、しかもグルグル回して背もたれを調整するダイヤル式、ドアミラーも開閉は手動です。

もちろん、電動のほうがラクですが、ないならないでなんとかなる装備がアナログなので、安く購入したい人にはピッタリ! 個人的には、「自分でセッティングする=クルマに主体的に乗る」という考え方なので、クルマを相棒として位置づけてカーライフを送る人は最適でしょう。

 

【いいところ10】 守備範囲が広く、孤高の存在

さて、まとめ。何度か触れましたが、トゥインゴはカーファンにも好かれる一台です。そして、価格的にも手ごろで、(小さいお子さん限定ですが)ファミリーカーとしても使えますし、若いカップルにもピッタリ。おひとりさま向けとしても秀逸で、一人でトゥインゴに乗ってゴルフや温泉に撮影旅行に出かけるというのは、ジャストサイズでとても贅沢。

 

1台目がすでにあるお宅でも2台目として日常の足として使えば、プライス以上の役割を果たしてくれるでしょう。また、小回りの良さがウリなので運転が苦手な方、道路が狭いエリアに住んでいる人もオススメ。デザインもかわいいけど、子どもっぽくはないので老若男女に受け入れられる存在です。

 

つまり、クルマに関心が薄い人でも後悔しないクルマなのです。

 

さて、輸入車を買うとなると、世知辛い世の中、マウンティング競争に巻き込まれがちです。ドイツの輸入車を買ったら「あの家、儲かってるらしいわよ」、でもプレミアムブランドでもコンパクトカーだと「あらあら、背伸びしちゃって」、英国発ブランドのモデルを買ったら「一生懸命オシャレしちゃって」などなど、周りの目が気になる人もいるはず。

 

でもトゥインゴの立ち位置はそのどこにも属さず、「実用的でコスパが良くて品があるけど、クルマとしてもしっかりしていて、嫌味がない」という孤高の存在。同じぐらいの価格帯で軽自動車や国産コンパクトカーを悩んでいる人、Aセグメントの輸入車で悩んでいる人は、トゥインゴがあるとQOL(クオリティ・オブ・ライフ)がグッと上がるはずです。

 

【トピックス】

冒頭でもお伝えしたように、トゥインゴに待望のMTモデル「トゥインゴS」が2月3日に追加。5速MTで価格はなんと179万円!しかも税込価格と強気。ルノーのMTモデルが昔から「ホントに利益出るの?!」と思える出血価格が定番ですが、このあたりもクルマファンから愛される由縁なのかもしれません。

 

エンジンは1.0Lのノンターボで73馬力。今回紹介した、ATモデルよりは80%ほどのパワーですが、少ないパワーを上手くミッションを操りながら動かすという、クルマの醍醐味を味わえるモデルといえるでしょう。

 

 

撮影/茂呂幸正