乗り物
2016/7/13 16:00

これぞライトウエイトスポーツの真骨頂! KTM・RC390特有の漲るヴァイブスに高揚

コマツ ダンpresentsぶった切りバイク批評 第三回

 

ここ20年ほど、日本でも飛躍的に知名度が上がったといえるオーストリアのモーターサイクルブランド“KTM”(※1)。ラリーレイドやモトクロスレースなどの功績から、以前はオフロードのイメージが強かったが、最近ではロードバイクも積極的に開発してきた。なかでも、今回取り上げる「RC390」は375ccシングルエンジンを搭載した普通自動二輪免許(※2)でも乗ることができる、生粋のスポーツバイクである。

 ※1)正式名称はKTM Sportmotorcycle AG(ケーティーエム スポーツモーターサイクル アーゲー)といい、スポーツバイクに特化したブランディングとしている。
 ※2)125cc~399ccまでのオートバイに乗ることができる日本の道交法による免許区分。この免許を持っていることで125cc以下のオートバイにも乗ることは可能。なお250cc以上のモデルは車検制度がある。

 

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RC390にはシャシーを共通としながらエンジンサイズが異なる、RC250、RC125という兄弟モデルが存在する。高速道路では走行できないものの、維持費を抑えることができる原付2種クラス、車検を必要としない250クラス、パワーウエイトレシオ(※3)に優れたRC390、というスモールRCシリーズのラインアップが揃う。どれも個性あふれるモデルとなっており、ユーザーにバイクライフのイメージをもたせつつ、選ぶ楽しさをもたらしてくれる。なお、同社のフラッグシップスーパーバイクモデルにはRC8R(※4)が存在。これもまた、強烈なライディングプレジャーをもたらすスーパーバイクだが、また別の機会にでもご紹介したいと思う。

 ※3)出力と重量の比率によって加速性能を表すもの。最近はあまり取り上げられなくなったが、80年代はこの数値は絶対的なものとして考えられており、ただ馬力が大きいだけでなく、軽い車重との相乗効果で加速や制動の能力が表された。

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※4)1195ccVツインエンジンを搭載するKTMのフラッグシップスーパーバイクRC8R。2010年のドイツスーパーバイク選手権で年間チャンピオンを獲得しているほか、日本では鈴鹿8時間耐久などでも活躍した。

 

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KTM社のどのモデルを見ても感じることは、コーポレートカラーに人目を惹きつけるオレンジを取り入れつつ、デザインのエッヂを立たせていることだ(※5)。他ブランドと一線を画するシャープで独特なスタイリングは、一目でKTMのものだとわかる。好みはわかれるかもしれないが、はまれば他のブランドなど目にも入らなくなってしまうだろう。

 ※5)現在のKTMのすべてのモデルをはじめ、アパレル・ディーラー・カタログなどすべてのデザインやPR戦略は、ザルツブルグに拠点を置くKISKAデザインの手によるものである。

 

RC390はフルサイズスポーツでありながらも、跨ってみるとコンパクトにまとまっている。普通2輪免許枠のスポーツモデルの中では、絞られたハンドルや後方に位置したステップなどの相乗効果で、ライダーを俄然“やる気”にさせてくれるのだ。

 

実際に走らせてみると、低速から力強く高回転域でさらにひと伸びするエンジン、剛性感の高いフレームとよく動く前後サスペンションで、交差点一つ曲がるだけでも楽しい。ワインディングなど走らせれば、もうひたすらにスポーツライディングに集中してしまう。なんといっても軽量で軽快であるということは、スポーツバイクとしては最高の美点だ。

 

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プロジェクタータイプのヘッドライトを2眼装備し、その下にLEDデイライトを備える。ウインカーはミラー一体型となっており、これはレースやサーキット走行などの際に、容易に脱着することができるための工夫でもある。“READY TO RACE”キャッチコピーは伊達ではない。

 

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一見すると、シングルシートカウルのようにも見えるが、スポンジ状の素材で作られたタンデムシート。こういった遊び心を持たせたデザインはKTMの魅力といえる。ライダー側のシートはしっかりとした硬さがあり、リアタイヤの接地状態のインフォメーションに長けている。

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オレンジ色のトレリスフレームはスモールRCシリーズ共通で、そこに375ccシングルエンジンを搭載する。高回転まで一気に吹け上がるセッティングと、軽量なボディワークは、往年の2ストロークレーサーレプリカを彷彿。なおワンメイクレースも開催されている。

 

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メーターパネルはスモールRCシリーズおよびスモールデュークシリーズ(※6)共通で、フルデジタル液晶タイプを採用する。シフトインジケーターを装備していたりABSスイッチが隠されていたりと、なかなか凝ったメーターだ。バータイプのタコメーターが小さく、見えにくいのが難点。

 

※6)スポーツネイキッドモデルである390DUKE、250DUKE、125DUKEはスモールデュークと呼ばれることがある。エンジンはRCシリーズと共通であり、ストリートファイター的な位置づけとなっている。

 

 “外車感”は否めない。しかし現在は国内ブランドも海外生産だ!

このRC390は、ただ走らせるだけで楽しいバイクだ。同クラスにはホンダ・CBR400R(69万9840円~)、カワサキ・ニンジャ400(66万8520円~)、ヤマハYZF-R3(63万1800円)など多数のライバルが存在するが、スポーツバイクとしてのワクワク感はRC390には到底敵うものではない。

 

日本ブランドと比べると乗り味はソリッドだし、エンジンの滑らかさという点では劣り、シートも固めに設定されているなど、若干ながら気になる点はある。しかし、そうであったとしても所有欲を満たしてくれるポイントはそこではないと個人的には思う。タイヤが一回転した瞬間、“こいつはスポーツバイクなのだ”とライダーに意識させてくれるのは、バイクに乗ること、そして操ることに目覚めた人間ならば高揚せずにはいられない。

 

なんといってもストリートで目立つ、せっかくバイクに乗るのだから楽しくてカッコよく――その点をおさえたRC390はクラス最強といえるだろう。外車ということで、ランニングコストを気にする人もいるかもしれないが、基本的にはまったくと言っていいほどトラブルはないとのこと。現在は全国にディーラー網も整備され、アフターサービスもしっかりしているので、気軽に外車生活を始めることができるのだ。

 

KTM

RC390

販売価格:66万2600円

エンジンタイプ:水冷4ストローク単気筒、4バルブ

ボアxストローク:89 mm x60 mm

排気量:373.2cc

最高出力:32kW (44 ps) / 9,500 rpm

最大トルク:35 Nm / 7,250 rpm

圧縮比:12.5 : 1

点火/噴射制御:BOSCH製EMS、フューエルインジェクション

寸法・重量:全長 1,995mm、全幅 705mm、全高 1,099 mm

シート高:820mm

車両重量:147 kg

燃料タンク容量:約10ℓ

タイヤサイズ:F 110/70ZR17M/C、R 150/60ZR17M/C

 

【URL】

KTMジャパン http://www.ktm-japan.co.jp/ 

RC390 http://www.ktm-japan.co.jp/lineup/model/rc390