乗り物
鉄道
2020/8/16 18:30

今も各地で働き続ける「譲渡車両」8選ーー元西武電車の場合

【注目の譲渡車両⑦】今も富山平野を走り続ける初代レッドアロー

◆富山地方鉄道(富山県)16010形

↑富山地方鉄道の16010形第2編成。特急アルプス号としても利用されている。特急の乗車には特急料金(2号車のみ+座席指定券)が必要に

 

西武鉄道の特急形電車といえば、現在は001系ラビューに、10000系ニューレッドアローが西武池袋線系統、そして西武新宿線を走る。その前に走っていたのが西武5000系である。5000系は1969年に西武初の有料特急用に造られた電車で、鉄道友の会ブルーリボン賞を受賞している。余談ながら半世紀後に誕生した001系ラビューもブルーリボン賞を獲得した。5000系は斬新なスタイルで話題になったラビューが生まれるちょうど半世紀前に誕生した名車だったわけである。

 

そんな西武生まれの名車が今も日本海側を走っている。富山県内に複数の路線を持つ富山地方鉄道。5000系が2005年、2006年に富山へ移籍、改造され16010形となった。現在は3両×2編成が活躍、うち第2編成は2011(平成23)年に水戸岡鋭治氏がデザインし、リニューアル改造が行われた。そして、観光列車「アルプスエキスプレス」として走る。リメイクされたものの、元の姿を色濃く残している。

 

【注目の譲渡車両⑧】SL列車の補佐役として走る元西武の機関車

◆大井川鐵道(静岡県)E31形

↑きれいにメンテナンスされたE34形。古参の機関車に代わってSL列車の補助役やELイベント列車の牽引などに利用されている

 

最後は元西武生まれの電気機関車である。西武鉄道では1996年に貨物輸送が廃止となるまで、多くの電気機関車が在籍していた。特にセメント関連輸送が盛んに行われていたことから、私鉄最大のE851形といった電気機関車を新造され使われていた。電気機関車の創世記の時代に造られた欧米生まれの車両も多く保有していたが、保存車両として残る一部をのぞき、廃車となっている。

 

元西武の電気機関車の中で珍しい存在だったのがE31形。1986(昭和61)年、87年に自社の所沢車両工場で4両が造られた。戦前生まれ、欧米から輸入された古典的な電気機関車に代わる役割を持つ電気機関車として造られたのだが、製造後10年もしないうちに貨物輸送が終了してしまう。その後は工事列車や新車の牽引などで使われたが、その機能が充分に生かす場が消えたこともあり、2010年に引退となった。

 

引退した年にE31形の3両を引き取ったのが静岡県を走る大井川鐵道だった。長らく新金谷駅や千頭駅構内に停められていたが、2017年にクリーム色に朱色の3本ラインが入る西武当時の姿で復活した。現在は、SL列車の補機や、EL牽引のイベント列車などに使われている。何より重連統括制御による運転が可能とあって、鉄道ファンからはなかなかの人気となっている。

 

こうした譲渡車両も、それぞれの歴史をひも解くとおもしろい。何よりも、譲渡された会社で大事に使われている姿を見ると、鉄道ファンにとっては何ともうれしく感じられるものである。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4