鉄道好きにお勧めの書籍が12月17日に発行された。対象は幼児〜小学校高学年向けの児童書ながら、大人でも十分に楽しめる内容となっている。タイトルは『はっけんずかんプラス 鉄道』(学研プラス・刊)。サブタイトルに「まどあきしかけ」とある。さて「まどあきしかけ」とは何だろう?
【本書の特徴①】あければ、おっとの「まどあきしかけ」
まずはこの本、イラストが中心となっている。描いたのはスズキサトルで、乗り物の絵本や児童書、アウトドア雑誌や書籍などを中心に幅広いジャンルを描く新進気鋭のイラストレーターである。同書籍のイラスト点数が並みではない。大きなイラスト64点、小さめのイラスト99点。今回、掲載できなかったものまで含めると計180点近いイラストを新たに書き起こし、それらのイラストを組み合わせて作られている。ちなみに構成や文章、写真などは本原稿の筆者が監修役を務めた。
前ふりはこのぐらいにしておき、そのポイントを紹介してみよう。上記の写真は4章「たくさんの人を運ぶ通勤電車」というイラスト中心の、しかけページである。この写真を見る限りは、ごく普通のイラスト本とかわりないように見える。さて、この本のポイントは「まどあきしかけ」にある。その一部を見てみよう。
【本書の特徴②】あければあけるほど発見や楽しみが倍増!?
「まどあきしかけ」を分かりやすく説明するために、写真で手順を追ってみた。たとえば西武鉄道40000系 S-TRAINの「まどあきしかけ」。この車両の特徴といえば、座席の向きが変更できるところ。通常の列車として走る時は、ロングシートとして、指定席列車として走る時にはクロスシートとなる。このあたりの仕組みが「まどあけしかけ」をめくると分かるのだ。
例をあげたが、こうした「まどあきしかけ」が本文34ページに、84か所も仕組まれている。かなり凝った仕掛けの車両もあり、あけていく楽しさがこの本の特徴となっている。
【本書の特徴③】制作している側にも新たな発見があった
筆者の性分として、つい本づくりや、原稿を書く時に、“凝ってしまう”ところがある。また分からないところがあると、とことん調べてしまう。いろいろ調べていくうちに、複数の発見があった。
その一つを紹介しよう。石油類を運ぶ貨車、タンク車。こちらのタンク車は私有貨車といって、石油を輸送する会社が所有している。タンクの中は、どのようになっているのだろう、と疑問がわいた。ところが、調べても資料がほぼない。そこで日本石油輸送株式会社の担当に聞いて、資料を多数出していただいた。
すると、これまでどこにも紹介されていないと思われる事実が分かった。タンク内には、上部マンホールから降りるはしごがある。さらに下部にある排出口を開閉するシャフトが天井部まで伸びているということが分かった。
このことは輸送に関わる鉄道会社に勤める人も初めて知ったというぐらい、新しい情報だった。
【本書の特徴④】写真中心ずかんページには多くの「ひみつ」が
本書の構成はイラスト中心の「しかけページ」と、写真中心の「ずかんページ」に分かれている。「しかけページ」の後ろには必ず「ずかんページ」が続く。取り上げたテーマは8項目で次のとおり。
①いろいろな新幹線
②特急がいっぱい!
③乗りたい!観光列車
④たくさんの人を運ぶ通勤電車
⑤まだまだいっぱい!いろいろな電車
⑥電気で動くだけじゃない! ディーゼルカーなど
⑦パワー全開! 貨物列車
⑧鉄道の安全を守る!
ずかんページは写真中心の構成で、イラストページでは、紹介できなかったポイントが例えば「新幹線のひみつ」というように、“ひみつ”というキーワードで紹介されている。
このように、ごく一部を見るだけでも、盛りだくさんの情報を詰め込まれていることが分かる。定価は2178円(税込)。クリスマスプレゼントにいかがだろう。
【書籍紹介】
はっけんずかんプラス鉄道
著者:スズキサトル (イラスト)、星川功一(監)
発行:学研プラス
めくるしかけや豊富な写真で、鉄道の秘密に迫るしかけ図鑑。鉄道が大好きなお子さんが満足する情報を幅広く、深く紹介します。しかけ図鑑ならではのわかりやすさと楽しさで、鉄道のことがもっと好きになる一冊です。