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2022/10/4 20:45

従来のハイブリッド車の概念を超えた!ホンダ11代目「シビック」の爽快な走りを体験

シビックが誕生して50年。6MTをラインナップに揃えるなど、スポーティな走りが改めて注目されるホンダ『シビック』に、ハイブリッドシステム「e:HEV」が追加されました。コンセプトは“爽快スポーツe:HEV”。進化したシビックの新時代の走りを体験してきました。

 

【今回紹介するクルマ】

ホンダ/シビック

※試乗グレード:e:HEV

価格:319万円~394万200円(税込)

↑“爽快スポーツe:HEV”としてデビューした11代目シビック。新開発2リッター4気筒直噴エンジンを踏み合わせたe:HEVとした

 

環境にも優しく、走りにも優れた新世代「e:HEV」

シビックが誕生したのは1972年、ホンダの4輪車の中で最も長い歴史を持ちます。この年は世界的に大気汚染が重要課題となった時期とも重なり、自動車メーカーはその対応が求められていました。特に米国で施行された排出ガス規制(いわゆる)「マスキー法」への対応は世界でもっとも厳しく、それに対応できないメーカーが続出したのです。

 

そんな中でホンダはこれをクリアするCVCCエンジンを開発。環境に取り組むメーカーとして一躍注目を浴びるようになりました。その上で人を中心に考えたパッケージングや走り、省エネルギーを高次元で両立させたことでビジネスとしても成功を収めることになります。以来、シビックはその意味で「市民」に広く浸透し、歴代のシリーズ販売台数は2700万台にも及びます。これは名実ともに日本を代表する自動車の一つといっても過言ではないでしょう。

 

11代目となる現行シビックは2021年9月に登場しました。日本市場にはハッチバックのみの投入となりましたが、フロントからリアエンドまで流れるようなデザインは、走りを一段と意識させるアグレッシブさに富んだものとなっていました。特に最初に投入されたターボ付き1.5リッター・ガソリン車は、そのデザインから受ける期待を裏切らないスポーティな走りを見せ、シビック本来の姿を取り戻したことを強く印象づけるものでした。

 

そして2022年6月、その走りに環境性能も高めたホンダ独自の「e:HEV」がラインナップに追加されたのです。このシステムに組み合わされるエンジンは新開発の2リッター直4直噴ユニットで、ここには燃料をシリンダー内に直接噴射する直噴システムを新たに採用。燃料を無駄なく燃焼させることが可能となり、従来型e:HEV用2.0Lエンジンを上回る高トルク化と、エンジンモードでの走行可能領域拡大を実現したのです。

↑シリーズパラレス型ハイブリッドとした新型シビック「e:HEV」

 

↑日本市場にはハッチバック型のみが展開される

 

このエンジンは、燃焼の高効率化も図られ、その数値は世界トップレベルの約41%もの熱効率を実現。同時に燃料の直噴化によってトルクと燃費性能を向上させています。

 

ハイブリッド方式は、発電用、駆動用の2つのモーターを備えるものです。街中などの低速域ではエンジンが発電用モーターの原動力としてその役割を果たし、高速域になるとエンジンと車輪が直結して駆動するよう切り替わります。つまり、ハイブリッド方式を状況に応じて最適な切り替えを行うシリーズパラレス式としたのです。

 

ここまでのスペックから推察して、最初は「結局、新型シビックは燃費重視の環境車なの?」と想像しました。しかし、それは走って的外れだったことがすぐにわかりました。試乗コースとして設定されたのは八ヶ岳周辺のワインでイングロード。新型シビックはそこで想像以上に爽快で楽しい走りを見せてくれたのです。

 

小気味よいステップ感で従来のHEVとは明らかな違いを実感

アクセルを軽く踏むと、それだけで力強いトルクを伴いながらスムーズにクルマを前へ走らせます。そしてアクセルをグッと踏み込むと動きは一変。エンジンの回転が先行するハイブリッド車らしさはまったく感じられず、まるで変速機でもあるかのような小気味よいステップ感を伝えながらグイグイ加速していったのです。特に興味深いのはこのステップ感で、実はこの効果はエンジン制御によって生み出されていました。

 

ホンダはこれまでもe:HEVでハイブリッド特有の、エンジンの回転が先行する違和感を抑えてきました。シビックに搭載した新エンジンでは、高回転までエンジンを回した際、燃料と点火を一旦カットし、回転が落ちたところで再びエンジンを回し始める新機構を採用。この制御をすることで、むしろターボ付き1.5リッター・ガソリン車よりもメリハリのある動作を実現することになったのです。ここにシビック本来のスポーティさを“復権”しようとする開発陣の意気込みが伝わってきますね。

↑パワーユニットは新開発の2リッター直4直噴エンジンを組み合わせた「e:HEV」とした

 

半端ない静粛レベルにも驚きました。実はフロントスピーカーからはノイズと逆位相の音を出すノイズキャンセラーが組み込まれており、これが走行中のノイズを聞こえにくくしているのです。しかも、スポーツモードにするとアクティブサウンドコントロールが作動して、パワーの高まりと共に電子音を発生させます。その効果も自然で嫌みがない。このあたりのチューニングもスポーティさを志すシビックらしい仕掛けとも言えるでしょう。

 

ステアリング制御は電動パワーステアリング(EPS)によるもので、適度な重さを伴いながら切っただけ曲がっていく感じ。これも自然で扱いやすいものです。ステアリングにはパドルレバーが装着され、マイナス側を操作することで回生ブレーキも段階的に高まり、その減速Gもわかりやすく表現されていました。この機能は特にワインディングではメリットを実感すると思います。

↑シビック「e:HEV」にはハイブリッド車系に採用する電気式無段変速機が組み合わされる

 

試乗当日は雨にたたられましたが、ほどよく固められた足回りとの相性も良く、ワインディングを気持ち良く駆け抜けることができました。若干、段差を乗り越えたときのバタツキ感が気になりましたが、それでもハイブリッド化による重量増が効いているのか、ガソリン車よりも突き上げ感はしっかり抑えられているように思いました。

 

広々とした視界と安全性にも寄与するHMIが使いやすい

インテリアは、低いフロントフードとあいまって広々とした視界を生み、爽快な気分にさせてくれる仕様です。聞けば、Aピラーの位置を50mmほど後ろへ下げたことで水平視界がグッと広がったんだそうです。近年はADASとしても交差点で歩行者を含むセンシングが重視されていますが、こうした車体設計から安全性が高める姿勢は評価したいと思います。

 

ダッシュボードには広がり感を強調するパンチングメタルのエアコンアウトレットを採用しています。これはクリーンな見え方と優れた配風性能を両立させた新開発のフィン構造を内蔵したもので、空調の最適化も同時に図っているとのこと。車内は長時間にわたって過ごすことも少なからずあるわけで、こうした配慮も新型シビックの爽快さを実感できるポイントの一つと言えるでしょう。

↑低いダッシュボードと後ろへ50mmずらしたAピラーとも相まって広々とした視界を実現した

 

また、ホンダのHMIの考え方である「直感操作・瞬間認知」を追求し、10.2インチのフルグラフィックメーターを採用しました。メーターの左半分にオーディオなどのインフォテインメントの情報を、右半分にはHonda SENSINGやナビなどの運転支援情報などをそれぞれ表示します。ステアリングスイッチの位置と同様の左右配置とすることで、直観的な操作を可能としているのが特徴です。

↑運転席シートは余裕のあるサイズで長時間座っていても疲れにくそうだ

 

↑ニースペースに余裕があり、後席も大人がゆっくり座れる。運転席シートにシートバックポケットがないのは残念

 

↑後席はシートバックの高さにも余裕があり、大人二人がゆったりとくつろげる

 

さらに新世代コネクテッド技術を搭載した車載通信モジュール「Honda CONNECT(ホンダコネクト)」も搭載します。スマホでドアロック解除やエンジン始動を含む「ホンダ・デジタルキー」などが利用できるコネクテッドサービス「ホンダ トータルケア プレミアム」にも対応しました。ガソリン車のEXとe:HEVには「BOSEプレミアムサウンドシステム」が搭載されているのも見逃せません。

↑サブウーファーを含む全12スピーカーを組み合わせるBOSEプレミアムサウンドシステム

 

試乗したシビックe:HEVは、従来のハイブリッド車の概念を根底から覆すクルマとして仕上がりました。その手法は少し人工的ではありますが、乗ってみればそのコンセプトを裏切らない爽快さを実感させてくれるはず。11代目シビックはスペック以上に、期待を裏切らないクルマに仕上がっていたと断言できます。ぜひ、試乗してみることをおすすめします。

 

SPEC【e:HEV】●全長×全幅×全高:4550×1800×1415mm●車両重量:1460kg●パワーユニット:2.0L直4 DOHC 16バルブ●最高出力:104kW[141PS]/6000rpm(135kW[184PS]/5000〜6000rpm)●最大トルク:182N・m[18.6kgf・m]/4500rpm(315N・m[32.1kgf・m]/0〜2000rpm)●WLTCモード燃費:24.2km/L

※()内は電動機(モーター)の数値。

 

 

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