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2022/11/2 20:45

SUV志向を極めた新しいタント「ファンクロス」。走りも使い勝手の高い満足度!

今や軽自動車販売台数の約半数を占めるまでになったと言われるスーパーハイトワゴン。その元祖とも言えるダイハツ「タント」がこのほどフロントマスクを刷新するマイナーチェンジを図り、それに合わせてSUV風の新キャラクター「ファンクロス」を追加しました。今回はこの両車に試乗し、取材を通してわかった点などもご報告したいと思います。

 

【今回紹介するクルマ】

ダイハツ/タント ファンクロス

※試乗グレード:ターボ(2WD)

価格:172万1500円~193万500円(税込)

 

ダイハツ/タント

※試乗グレード:カスタムRS(2WD)

価格:138万6000円~199万1000円(税込)

↑タントをベースにアウトドア志向を極めた「ファンクロス」だが、デザインのバランスはとても良い

 

使い勝手抜群の「ミラクルオープンドア」を継続採用

ダイハツ「タント」の初代が登場したのは2003年のこと。当時は少しルーフが高いハイト系ワゴンが主流でしたが、ダイハツはここに箱形スタイルのタントを初投入しました。この時は空間の広さがポイントとなる程度でしたが、大ヒットを果たしたのが2007年に登場した2代目となってからです。そのヒットの理由は、センターピラーレスとスライドドアを組み合わせた「ミラクルオープンドア」を助手席側に採用したことでした。

 

センターピラーがなく、リアドアがスライドで後ろに下がると、そこには広大な空間が広がり、乗降性の向上はもちろん、シートのアレンジ次第でかさばるものも楽に入るというかつてない使い勝手を生み出したのです。以来、ミラクルオープンドアはタントの定番の装備となり、それは現行タントだけでなく、新キャラクター「ファンクロス」でもその魅力を引き継ぐこととなったのです。

 

では、新キャラクター「ファンクロス」はどのようなクルマなのでしょうか。

 

冒頭でも述べたように、ファンクロスはSUV風を取り入れることで「キャンプ場などでの“映え”を意識したデザイン」(ダイハツ)となっています。それを具体的に表現しているのが、ボディの四隅に施された変形六角形の樹脂ガードです。前後それぞれでこの樹脂ガードが左右を結んでそれがSUVらしい力強さを生み出しているのです。ルーフレールを装備したことで、タントよりも全高が5cm高くなっていることもポイントです。イメージカラーはサンドベージュメタリックで、他にもレイクブルーメタリックやフォレストカーキメタリックなど、自然に回帰したカラーリングが似合うデザインともなっています。

↑タント「ファンクロス」。リアエンドの処理がアウトドア志向を際立たせている。写真はサンドベージュメタリックカラー

 

SUVらしい使い方を実現するため、リアシートにこだわり

インテリアは、基本をタントと共通としたものの、各所にあしらわれたオレンジのアクセントに加え、シート表皮はカムフラージュ柄を織り込むなど、アウトドア指向のユーザーにマッチするデザインが施されています。これらは、少しクロカンチックな印象を受ける同社のタフトに近いデザインイメージと言っていいかもしれません。

↑インテリアは随所にオレンジの配色を施し、アウトドア志向を高めるデザインとなっている

 

ファンクロスで本気度を感じさせたのがリアシートです。実はこのシート、基本はベース車のタントと共通の機構を採用していますが、マイナーチェンジ前はリアシートの座面をフォールダウンして、たたむ機構を採用していました。そのため、たたんだ状態でもフロアが若干斜めに浮いた状態となっていました。それをファンクロスと新型タントでは座面は固定のまま単純に折りたたむ機構としました。そして、二段調節式となっている荷室のデッキボードと組み合わせることで、シートバックをたたんだときにフラットになるように工夫を加えたのです。ただ、この機構により、スペースの高さは5cmほど狭くなっているとのことでした。

↑カムフラージュ柄のシート。ピラーがない「ミラクルオープンドア」はアウトドア利用に大いに活用できそうだ

 

アウトドア用途に適するため、シートバックの平面は撥水加工を施した点もポイントです。荷室側からスライド調整ができる機構も新採用したことで、持ち込む荷物に応じた荷室サイズ変更にも対応できるようになりました。シートを単純に折りたためるようにしたことで、すべての操作が荷室側からできるようになったわけです。ただ、シートを前にスライドさせると隙間ができ、物が落ちやすいことには注意が必要ですね。

↑撥水加工を施したリアシートの背面。スライドドア用レバーには砂などが入り込むとやっかいかもしれない

 

一方でシートバックは垂直の状態で固定することもでき、これは箱物を積載するときに重宝するでしょう。他にもファンクロス専用装備として、後席に1か所USB端子を装備し、荷室内の照明も天井と側面に設置するなど、通常のタントにはない便利さも用意しました。

↑後席右側に装備されたUSB端子。ファンクロスだけの特別装備だ

 

↑ファンクロスの特別装備として、荷室の天井と側面には2つの照明が備えられている

 

ターボとD-CVTの組み合わせが静かでスムーズな走りを実現

試乗したのはインタークーラー付ターボエンジンにD-CVTを組み合わせた「ファンクロスターボ」(2WD)。D-CVTとは、CVTに「ベルト+ギア駆動」を組み合わせたトランスミッションで、なめらかな走りだけでなく、モード走行中のエンジン回転数を自由に変化させられるので燃費向上にもメリットがあります。ファンクロスではこのトランスミッションを標準化して、ドライバビリティ向上と経済性を両立させているのです。

↑ファンクロスターボには、インタークーラー付658ccターボエンジンを搭載。最大出力は47kW(64PS)、最大トルク100N・mを発揮する

 

走り出すと車体が軽々と前へと進みます。エンジン回転だけが先に上がって、速度が後から付いてくるようなCVTにありがちなラグはほとんど感じません。撮影のために大人3人が乗車したときも、そういった印象はなく、ひたすらスムーズに加速していく感じでした。CVT変速機は静かで、少し踏み込めば十分に力強いパワーが得られます。また、スーパーハイトワゴンは重心が高いため、本来ならカーブが苦手のはずですが、中速コーナーもしっかりとロールを抑えてくれていたのには感心しました。

↑タント「ファンクロスターボ」。D-CVTとの組み合わせによりスムーズな加速が体感できた

 

乗り心地の良さもファンクロスの特筆すべき点です。一般道の少し荒れた路面でもシートには不快な振動はほとんど伝わらず、路面にあるスリップ防止用舗装を通過したときの段差もきれいにいなしてくれます。この日は一般道だけの試乗でしたが、車内に届くロードノイズも許容範囲で、静粛性はタントと比べても十分なレベルに仕上がっていることを実感した次第です。

↑ファンクロス ターボのタイヤは、165/55R15を履く。ブランドはダンロップのエナセーブだった

 

一方でダイハツの予防安全機能「スマアシ」は、基本的にステレオカメラを使った従来からのシステムが踏襲されました。急アクセル抑制機能は搭載されていません。ただ、開発者によれば「ACC(アダプティブクルーズコントロール)の設定を、初期のタントよりもリニアに反応するタイプに変更した」ということです。従来のタントは料金所で一旦減速し、レジュームを押してからの立ち上がりがきわめて遅かった印象がありましたが、「タフトと同レベル」にまで立ち上がりを改良したと言うことでした。次回は高速道路で試してみたいと思っています。

 

新しい「タント カスタム」はより押し出し感を強めた

一方のタント。試乗車はターボエンジンを搭載した「カスタムRS」の2WDでした。フロント周りをより押し出しの強いイメージとし、ボンネットや前後バンパーのデザインに変更を加えました。アウタードアハンドルをクロームメッキ化したのも小さなことではありますが、印象深さがさらに増したのは見逃せません。インテリアはカスタム仕様にふさわしいブラックの人工皮革とブルー配色を織り込んだシートを採用しました。リアシートの機構はファンクロスと同様で、二段式デッキボードの採用も同じです。

↑フロントグリルの開口部を大型化し、より迫力を増したタント「カスタムRS」

 

乗り味はファンクロスと基本的に同じでした。アクセルを軽く踏むだけで気持ちよく速度が上がっていき、市街地の走行は実にスムーズ。路面の段差が生まれるショックも十分に吸収しており、乗用車としての満足度はとても高いと思いました。

↑ブラックの合皮とブルーのパイピングを組み合わせたカスタム専用のシート

 

SPEC【ファンクロスターボ(2WD)】●全長×全幅×全高:3395×1475×1785㎜●車両重量:940㎏●パワーユニット:658㏄水冷直列3気筒12バルブDOHCインタークーラターボ横置●最高出力:64PS/6400rpm●最大トルク:100Nm/3600rpm●WLTCモード燃費:24.3㎞/L

 

SPEC【カスタムRS(2WD)】●全長×全幅×全高:3395×1475×1755㎜●車両重量:930㎏●パワーユニット:658㏄水冷直列3気筒12バルブDOHCインタークーラターボ横置●最高出力:64PS/6400rpm●最大トルク:100Nm/3600rpm●WLTCモード燃費:21.2㎞/L

 

撮影/松川 忍

 

 

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