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2022/11/12 21:00

この時代に増便?平地なのにスイッチバック? ナゾ多き出雲の私鉄「ばたでん」こと一畑電車の背景を探る

【一畑電車の旅⑥】電鉄出雲市駅はJR駅と近いようなのだが

前置きが長くなったが、ここから一畑電車の旅を始めたい。北松江線の起点となる電鉄出雲市駅からスタートとなる。JR山陰本線の出雲市駅からの乗換えとなるが、筆者はここで最初から失敗しかけてしまった。

 

JRの特急列車から降りて駅の北口を出る。電鉄出雲市駅が目の前だから5分もあれば十分だろうと思っていた。まず荷物をコインロッカーに預けた。だが、コインロッカーは電鉄出雲市駅からだいぶ離れた場所にあった。電鉄出雲市駅はJR出雲市駅の北口を出て右手に見えていて分かりやすいのだが、150メートルほど離れていたのだった。結局、小走りで移動することに。改札でフリー乗車券を購入、階段を駆けのぼり、発車にぎりぎり間に合ったのだった。一畑電車は何度か来て乗っていたのだが、預ける荷物がある場合には、余裕を見て乗換えした方が良いことが分かった。

 

↑JR山陰本線の高架橋に並ぶように設けられた電鉄出雲市駅。ホームは高架上にある(左下)。窓口でフリー乗車券が販売される(左上)

 

一畑電車全線を乗り降りする場合には「一畑電車フリー乗車券」(1600円)が得だ。各路線の起点終点駅と川跡駅、雲州平田駅で販売している。また65歳以上のシルバー世代には「一畑電車シルバーきっぷ」(1500円)も用意されている。

 

【一畑電車の旅⑦】映画『RAILWAYS』にも登場した大津町駅

電鉄出雲市駅のホームに止まっていたのは5000系「しまねの木」号だった。2席、4席が囲われたボックス席がユニークな電車だ。ちょうど乗り合わせた女子高校生らしきグループは初めて乗車したようで「この電車いい! ここで宿題ができそう」と話していた。落ち着くボックス席には、窓側に折畳みテーブルが付けられていて、確かに勉強にはぴったりかも知れない。

↑5000系「しまねの木」号は座席がボックス構造だ(右上)。出雲科学館パークタウン前駅付近ではJR山陰本線の線路と並行して走る

 

そんな楽しそうなおしゃべりを聞きながら、松江しんじ湖温泉行きが出発した。高架ホームを発車した電車はJR山陰本線の高架路線と並走し、次の出雲科学館パークタウン前駅を発車後も、進行方向右にJR山陰本線を見ながら走る。途中で左へカーブして、次の大津町駅へ向かう。出雲市の町並みを見ながら到着した大津町駅は、どこかで見た駅だと思ったのだが、実は映画『RAILWAYS』のワンシーンの撮影に使われていた駅だと知り、なるほどと思った。沿線には同映画の舞台として登場した駅も多い。

 

大津町駅の西側にはかつて、山陰道の28番目の宿場「今市宿」が設けられていた。大津町駅の西側、出雲市駅の北側にかけての通り沿いで、今も情緒ある町並みが高瀬川沿いにわずかに残っている。ちなみに、出雲市駅はかつて出雲今市駅という駅名で、この今市宿の名前を元にしている。出雲今市駅は1957(昭和32)年に出雲市駅と改称された。

↑電鉄出雲市駅から2つ目の大津町駅。1914(大正3)年に開業した駅だが、2003(平成15)年に現駅舎となった

 

【一畑電車の旅⑧】川跡駅での乗換えには要注意

今市宿にも近い大津町駅を発車して国道184号、続いて国道9号の立体交差をくぐる。国道が連なることでも、このあたりが山陰道の要衝であったことが分かる。国道9号を越えると沿線には徐々に水田風景が広がるようになる。

↑川跡駅に近づく北松江線2100系電車。この2104+2114の編成は3年前まで「ご縁電車しまねっこ号」(写真)として走った

 

次の武志駅(たけしえき)を過ぎると右カーブをえがき大社線の乗換駅、川跡駅に到着する。川跡駅の先の松江しんじ湖温泉駅方面へ行く時には、平日はほぼそのままの乗車で良いのだが、土日祝日は朝夕を除き、川跡駅での乗換えが必要になる。

 

川跡駅ではほとんどの北松江線、大社線の電車が待ち時間もなく接続していて便利だ。ただし乗換えによっては西側に設けられた構内踏切を渡っての移動が必要になる。駅舎側の1番線、2番線、3番線と並び、出雲大社前行き、電鉄出雲市行き、松江しんじ湖温泉行きの電車がそれぞれホームに到着する。

 

何番線が○○行きといった傾向が曜日、時間帯で異なるため、乗換えの際には、川跡駅に着く前に行われる車内案内とともに、駅のスタッフのアナウンスによる行先案内と、電車の正面に掲げた行先案内表示をしっかり確認して、間違えないようにしたい。

↑駅舎側(左)から4番線(通常は使用しない)と1番線、構内踏切で渡ったホームが2番線、3番線とならぶ。乗換え時は注意が必要

 

【一畑電車の旅⑨】余裕があればぜひ立ち寄りたい雲州平田駅

筆者は土曜日の朝の電車に乗車したこともあり、川跡駅で乗り換えずにそのまま乗車して松江しんじ湖温泉駅を目指した。

 

川跡駅を発車すると左右に水田が広がり、進行方向右手には斐伊川(ひいがわ)の堤防が見えてくる。斐伊川が流れ込むのが宍道湖(しんじこ)だ。なお宍道湖自体も一級河川の斐伊川の一部に含まれている。

 

途中、大寺駅(おおてらえき)、美談駅(みだみえき)、旅伏駅(たぶしえき)とホーム一つの小さな駅が続く。そして雲州平田駅に到着した。同駅は一畑電車の本社がある駅で、同鉄道会社の中心駅でもある。単線区間が続く北松江線では、この駅で対向列車との行き違いもあり、時間待ちすることが多い。

 

時間に余裕があれば下車して駅の周囲を回りたい。車庫に停まる電車もホーム上から、また周囲からも良く見える。筆者も訪れた際には、どのような車両が停まっているかと確認するようにしている。

↑雲州平田駅に近い寺町踏切から臨む車庫。検修庫内に3000系(廃車)、2100系や5000系が見える 2015年8月23日撮影

 

以前に訪れた時には、車庫の裏手に設けられた150メートルの専用線路でちょうど体験運転(有料)が行われていた。デハニ53形を使っての運転体験で、毎週金・土・日曜祝日に開催されている(年末年始および祭事日を除く)。運転体験は本格的で、まず電車の仕組みと操作方法を講習で学び、ベテラン運転士の手本を見学し、最終的には実際に運転席に座っての体験運転が可能だ。終了後には体験運転修了証や、フリー乗車券がもらえるなどの特典もある。

 

鉄道好きならば、一度は体験したい催しといっていいだろう。筆者は羨ましい思いを抱きながら写真を撮るのみだった。

↑専用線路を使っての「デハニ50形体験運転」。今年の6月8日から制限がなくなり全国の利用者が楽しめるシステムに戻った

 

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