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2022/12/8 20:45

トヨタ「クラウンクロスオーバー」はスポーティなわりにフォルムが膨よかで貫禄がある!

2022年7月、トヨタが世界に向けて発表したのは、フラッグシップモデル「クラウン」の新型モデル。しかし、従来のセダンタイプだけでなく、SUVのエステート、ハッチバックのスポーツ、ワゴンのエステートと新たなボディバリエーションも同時に初公開された。そのうち、まず第一弾としてすでにデリバリーが始まっているのがクロスオーバーだ。これを早くも試乗した自動車評論家の評価とは!?

 

■今回紹介するクルマ

トヨタ/クラウンクロスオーバー

※試乗グレード:RS

価格:435万円~640万円(税込)

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第一印象は「まあまあカッコいいな」

新型クラウンの発表は衝撃的だった。「今度のクラウンはSUV風になるらしい」という噂だけを頭に発表を待っていたら、なんと一気に4つのボディタイプが公開され、しかもどれもが個性的でカッコよかった! 4つのボディタイプは、セダン、エステート、スポーツ、そしてクロスオーバーだが、販売のメインになるのはセダンではなく、SUV風味のクロスオーバーだ(トヨタの目論見通りなら)。

 

トヨタ・クラウンと言えば“おっさんセダン”。昔は「いつかはクラウン」などと言われたが、さすがに誕生から60年以上経てば時代も変わる。クラウンクロスオーバーの初期受注台数を見ると、市場の反応はそれほど熱狂的ではないが、先代型クラウンの売れ行きは、ピーク時(バブル期)の10分の1程度にまで落ちていた。つまりトヨタとすれば、失うものは何もない。思い切ってバクチを打つには最高の環境だったのである。

 

発表会では、クラウンの激変ぶりに度肝を抜かれ、「トヨタ、やるなぁ」と唸らされたが、実物のクラウンクロスオーバーの第一印象は、「まあまあカッコいいな」というところだった。すごくカッコいいではなく「まあまあ」な理由は、スポーティなわりにフォルムが膨よかで貫禄があり、ややおっさんっぽいからだ。もっとスリークにシュッとさせれば、「文句なくカッコいい!」となったような気もするけれど、トヨタはそうはしなかった。

↑セダンだった先代クラウンと比べてクロスオーバーは全高が85mm高くなった。ホイールベースは2850mmと後輪駆動の先代モデル(2920mm)に比べれば短くなっている

 

21インチという大径タイヤを履き、思い切りスタイリッシュに振ってはいるが、クラウンという名前から来るイメージを完全に捨てるわけにはいかなかったのだろう。クラウンとして最大限頑張ったけれど、やっぱりクラウンはクラウン、貫禄も大事! ということなのですね。

↑21インチ アルミホイール(切削光輝+ブラック塗装)&センターオーナメント※RSの場合

 

クラウンクロスオーバーは、クラウンの伝統であるFRレイアウトを捨て、エンジン横置きのFFベース4WDにリボーンしたが、それによってフロントノーズは若干短くなり、ヘッドライトは思い切り薄くなり、今どきのスタイリッシュなファストバック車に生まれ変わった。

 

ただ、テールゲートはハッチバックではなく、独立したトランクを持っている。トランク部の出っ張りはほとんどないので、開口部はやや小さく、荷物の出し入れはあまりしやすいとは言えないが、開口部の大きいハッチバックでは、セダンのような静粛性の確保は難しい。大きく生まれ変わったとは言え、クラウンのウリである静粛性や快適性を捨てるわけにもいかなかったのだ。

↑12.3インチHDDディスプレイやステアリングヒーターを装備。ディスプレイ・メーター・操作機器を水平に集約し、運転中の視線移動や動作を最小化している

 

クラウンクロスオーバー走行した印象は?

では、この「スタイリッシュでまあまあカッコいい」クラウンクロスオーバー、走った印象はどうだったのか。

 

スタンダードな2.5Lハイブリッドモデル(電気式4WD)のパワートレインは、「カムリ」などに搭載されているものと基本的には同じで、わりとフツーだった。特に速いわけではないし、特にスポーティでもなく、トヨタのハイブリッドらしく、静かに淡々と走行する。乗り心地もどことなくカムリに近く、大径タイヤの重さもあって、それほど極上というわけではない。

 

ただ、違うのはコーナリングだ。4WS(四輪操舵)システムの恩恵もあり、ハンドルを切れば切っただけキレイに曲がってくれる。「えっ、こんなに曲がるの!?」というくらいスイスイ曲がる。このコーナリングの良さが、クラウンにとってどれほどアドバンテージになるかは未知数だが、4WSによる小回り性の高さは、確実にメリットだ。

 

というわけでクラウンクロスオーバーのスタンダードグレードは、全体に可もなく不可もなく、デザインとコーナリングが目立つ、穏やかなクルマに仕上がっていた。

 

続いてスポーティクレードである「RS」だ。クラウンのために新開発された2.4Lのデュアルブーストハイブリッドモデル(電気式4WD)を試す。

↑単体で最高出力272PSを発生する2.4リッター直4直噴ターボエンジン

 

こちらは、ハイブリッドのシステム最高出力は349馬力に達する(2.5Lハイブリッドは234馬力)。アクセルを踏めば圧倒的にパワフルで、昔風に言えば大排気量のアメ車のごとく、低い回転からズドーンと加速し、そのまま高い回転域までシュオーンと突き抜ける。エンジンは2.5L同様4気筒だが、振動はしっかり抑え込まれていて、従来のV6並みの滑らかなフィーリングが味わえる。まさにスポーツセダン!

 

だけど燃費はがっくり落ちる。WLTCモード燃費は15.7km/Lとなっているが(2.5Lハイブリッドは22.4km/L)、実燃費は10km/L程度だろうか。山道を元気に走り回った時の燃費は6km/L台。トヨタのハイブリッド車としては、びっくりするほど悪い。

 

しかし、燃費を重視するならスタンダードモデルを選べばいいわけで、RSの狙いは、このスポーティな走りなのだ。RSは加速がいいだけじゃない。コーナリングも素晴らしい。これまた4WSの恩恵で、超オンザレール感覚でシュオーンと曲がってくれる。従来の古典的なクラウンと比べると、「魔法のようなコーナリング」とすら言っていい。

 

先代型クラウンは、FRレイアウトを維持しつつ、BMW3シリーズのようなスポーティな走りを目指したが、そこにはまったく届いていなかった。しかし新型クラウンクロスオーバーには、もうBMW3シリーズやメルセデスCクラスの影はない。これは、まったく別カテゴリーのスポーツセダンなのだ。その狙いは、「RS」に関しては、8割くらいは達成できているのではないだろうか。

 

SPEC【CROSSOVER RS(クロスオーバーRS)】●全長×全幅×全高:4930×1840×1540㎜●車両重量:1900㎏●パワーユニット:2393㏄直列4気筒エンジン+電気モーター●エンジン最高出力:272PS/6000rpm●エンジン最大トルク:460Nm/2000-3000rpm●WLTCモード燃費:15.7㎞/L

 

撮影/池之平昌信

 

 

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