新時代設計思想「TNGA」に裏打ちされた快適な走り
で、実際の走りはどうかというと、これがまたいい。想像していたより静かで、快適。さらに乗り心地も悪くない。クラストップレベルの上質感といっても決して言い過ぎではない。ハンドリングも素直でコーナーでは気持ちよく曲がってくれる。そもそも、全長の短いこのハッチバックは、カローラファミリーでは一番コーナリング性能が高いのだ。
この走りの良さというのは、トヨタの新時代設計思想「TNGA」から生まれている。TNGA(Toyota New Global Architecture)は、パワートレーンやプラットフォーム(車体)をはじめ、クルマの基本性能を飛躍的に向上させるための車体設計や取り組みをまとめたもの。トヨタによる新時代のクルマづくりにおける構造改革の名称だ。2015年の先代型プリウスに初採用されたTNGAだが、それから3年後となる後出しだけに、カローラシリーズでは、よりセッティングが熟成されたように感じられる。
そんなカローラ スポーツに搭載されるパワーユニットは、2.0L直列4気筒ガソリンエンジンと、1.8L直列4気筒エンジンに電気モーターを加えたハイブリッドの2種類。今回試乗させてもらったのは前者のガソリンエンジンモデルであったが、2.0Lエンジンに組み合わされるCVTのフィーリングがよかった。
速いかどうかと言われれば、驚くほど速いということはない。しかしこれは一般道を走るにはちょうどいいくらい。もし速さにこだわるようなら、後から追加販売されたGRカローラを選ぶといい。2022年にわずか500台のみ発売されたモデルで、入手するのは難易度が高いモデルだが、ベースはカローラ スポーツで、それだけの価値がある走りの魅力を備えたクルマである。
総合的に考えると、オワコンどころか核家族世帯にピッタリ
居住性に関しては、セダンやワゴンと比べると、前席はほぼ変わらないが、後席は前後長が短いハッチバックはすこし分が悪い。しかし、取り回しのよさや使い勝手の良さなどを総合的に考えるなら、これが小さな子どものいる家庭にはちょうどいい。筆者がオーリスがいいなと考えたのも子どもがまだ小さいからである。ハッチバックは“オワコン”なんかじゃなかった。現代社会の中心的存在である核家族世帯にぴったりのジャンルだったのだ。
SPEC【G “Z”(ガソリン・2WD)】●全長×全幅×全高:4375×1790×1460㎜●車両重量:1380㎏●パワーユニット:1986cc直列4気筒ガソリンエンジン●最高出力:170PS(125kW)/6600rpm●最大トルク:202Nm/4900rpm●WLTCモード燃費:17.2㎞/L
文/安藤修也、撮影/木村博道
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