過日、カローラ クロスの試乗記事でも紹介したが、カローラは日本のスタンダードカーとして長期に渡って販売されてきたモデル。そのカローラシリーズのなかでも、ハッチバックタイプの「カローラ スポーツ」は現行型で最初に登場した。ハッチバックならではの魅力はどこにあるのか、ピックアップして見ていこう。
■今回紹介するクルマ
トヨタ/カローラ スポーツ
※試乗グレード:G “Z”(ガソリン・2WD)
価格:220万円~289万円(税込)
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日本ではブームが終わっているけども……
現行型カローラは、まずこのハッチバックの「カローラ スポーツ」が2018年にデビューしたのを皮切りに、セダンの「カローラ」とワゴンの「カローラ ツーリング」が登場。その後、2021年にSUVタイプの「カローラ クロス」が発売され、現在は4兄弟という構成になっている。
クルマ自体は、カローラらしくすごくまっとうに、それでいて現代的に作りました! という最新モデルだが、4種類ものボディタイプから選べるクルマは、ほかを探してもなかなかない。実はこのハッチバックはカローラファミリーに復帰したモデルであり、先代型は「オーリス」という車名で販売されていた。余談だが、現行型も海外の一部地域では当初「オーリス」という名称で販売されたが、現在では改めて「カローラ」という名称に統一されている。
しかし4つのボディタイプがあるとはいえ、後になって追加されたSUV以外、セダンもワゴンも、そしてハッチバックも、正直なことを言えば、日本ではすでにブームが終わっているジャンル。個人的にオーリスが好きだったこともあり、「もしまたなくなってしまったら……」と考え、「今のうちに乗らなきゃいかん」という衝動に駆られて(笑)、借りだしてみた。なお、2022年10月にマイナーチェンジを受けて、パワートレインを刷新、安全・快適装備をアップグレードしている。
トヨタのこだわり、演出が随所に感じられるデザイン
フロントまわりのデザインは、ひと言でいってシャープだ。セダンやワゴンも同様のテイストだが、極力キャラクターラインを減らし、面は面として強調しつつも、ヘッドライトやグリルなど顔全体の構成物が中央のエンブレムに収束されている感じ。キリッとしていて、若干怒っているような表情に見えるのは、現在のカーデザインのトレンドにのっとったもの。
一方、リアまわりは下部分をふっくらさせつつもシャープに見せるようなキャラクターラインがたくさん入っていてにぎやかな装い。また、リアウインドウは結構前方へ傾斜していて、スポーティさが強調されている。ハッチバックモデルのリアデザインというは、そのクルマの特徴であり、他車との違いをアピールできる部分でもある。そういった意味では、トヨタなりのこだわりが見てとれる。
全体的なスタイリングは、重心が低くてワイド。わかりやすくいえば、平べったく幅広になった印象だが、これはいわゆるスポーツカーの定番プロポーションである。フロントのシャープなデザインを基調に考えれば、セダンは重心が高そうに見えるし、ワゴンでは全長が長すぎて俊敏さが感じられない(実際の運動性能はそんなことないが)。ハッチバックのスタイリングは「低くてワイド」が実にしっくりきている。これもトヨタによるスポーティさの演出である。
新時代設計思想「TNGA」に裏打ちされた快適な走り
で、実際の走りはどうかというと、これがまたいい。想像していたより静かで、快適。さらに乗り心地も悪くない。クラストップレベルの上質感といっても決して言い過ぎではない。ハンドリングも素直でコーナーでは気持ちよく曲がってくれる。そもそも、全長の短いこのハッチバックは、カローラファミリーでは一番コーナリング性能が高いのだ。
この走りの良さというのは、トヨタの新時代設計思想「TNGA」から生まれている。TNGA(Toyota New Global Architecture)は、パワートレーンやプラットフォーム(車体)をはじめ、クルマの基本性能を飛躍的に向上させるための車体設計や取り組みをまとめたもの。トヨタによる新時代のクルマづくりにおける構造改革の名称だ。2015年の先代型プリウスに初採用されたTNGAだが、それから3年後となる後出しだけに、カローラシリーズでは、よりセッティングが熟成されたように感じられる。
そんなカローラ スポーツに搭載されるパワーユニットは、2.0L直列4気筒ガソリンエンジンと、1.8L直列4気筒エンジンに電気モーターを加えたハイブリッドの2種類。今回試乗させてもらったのは前者のガソリンエンジンモデルであったが、2.0Lエンジンに組み合わされるCVTのフィーリングがよかった。
速いかどうかと言われれば、驚くほど速いということはない。しかしこれは一般道を走るにはちょうどいいくらい。もし速さにこだわるようなら、後から追加販売されたGRカローラを選ぶといい。2022年にわずか500台のみ発売されたモデルで、入手するのは難易度が高いモデルだが、ベースはカローラ スポーツで、それだけの価値がある走りの魅力を備えたクルマである。
総合的に考えると、オワコンどころか核家族世帯にピッタリ
居住性に関しては、セダンやワゴンと比べると、前席はほぼ変わらないが、後席は前後長が短いハッチバックはすこし分が悪い。しかし、取り回しのよさや使い勝手の良さなどを総合的に考えるなら、これが小さな子どものいる家庭にはちょうどいい。筆者がオーリスがいいなと考えたのも子どもがまだ小さいからである。ハッチバックは“オワコン”なんかじゃなかった。現代社会の中心的存在である核家族世帯にぴったりのジャンルだったのだ。
SPEC【G “Z”(ガソリン・2WD)】●全長×全幅×全高:4375×1790×1460㎜●車両重量:1380㎏●パワーユニット:1986cc直列4気筒ガソリンエンジン●最高出力:170PS(125kW)/6600rpm●最大トルク:202Nm/4900rpm●WLTCモード燃費:17.2㎞/L
文/安藤修也、撮影/木村博道
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