アルファロメオらしくないが、アクセルを踏んだときのレスポンスがステキ
1.5L4気筒エンジンのもうひとつの大きな特徴は、ターボに可変ジオメトリータービン(VGT)を採用していることだ。タービンの排気流路を変化させ、低速側のトルクとレスポンス、および高速側の出力を両立させるメカで、ガソリンターボエンジンではかなりゼイタクである。
低速域では、DCTが多少ガクガクするくらいで、走りはまったく平凡かつ安楽だが、首都高に乗り入れてクルマの流れに乗ると、トナーレは水を得た魚のように躍動をはじめた。
「どうせマイルドハイブリッドだろ」とナメていたが、ハーフスロットルでの反応が実にすばらしい。反面、アルファロメオらしいエンジンを回す快感はまったくない。レッドゾーンはなんと5500rpmという低いところから始まっていて、「こんなのアルファロメオじゃない!」という思いも沸く。
しかし実際の走行では、アクセルを踏めば車体は即座にググッと前に出て、実にレスポンスがいい。アクセルを全開にしても大した加速はしないが、日常的に使う領域では非常に俊敏で速く感じる。
ハンドリングは実に素晴らしい
パワーユニットが縁の下の力持ち的なのに対して、ハンドリングは手放しでほめられる。とにかくタイヤの接地感がすばらしく高い。アルファロメオと言えば、いつテールがすっ飛ぶかわからない、頼りない操縦性が“味わい”だったが、トナーレのハンドリングは頼りがい満点。自信満々にコーナーに入ることができる。
ステアリングは適度にクイックでアルファロメオらしいが、サスペンションは当たりが優しくしなやかで、首都高のジョイントを超えてもショックは最小限。カーブを曲がるのが実に気持ちイイ。ロングドライブでも疲れ知らずで走ることができそうだ。
価格は524万円(Tiモデル)。美点は主にハンドリングなので、かなり割高に感じてしまう。国産SUVなら、トヨタ「ハリアーハイブリッドS」が371万8000円〜で買える……。
しかしトナーレは、欧州ではそれなりに売れて、アルファロメオブランドを守ってくれるだろう。アルファロメオファンとしては、それだけでありがたいという思いが沸いた。
SPEC【Ti】●全長×全幅×全高:4530×1835×1600mm●車両重量:1630㎏●パワーユニット:1468cc直列4気筒ターボエンジン+モーター●エンジン最高出力:160PS/5750rpm[モーター:20PS/6000rpm]●エンジン最大トルク:240Nm/1700rpm[モーター:55Nm/200rpm]●WLTCモード燃費:16.7㎞/L
撮影/清水草一