2023年の春、MAZDA2が大幅に改良された。MAZDA2といえばマツダの根底を支えるコンパクトカーだが、はたしてどのような変更がなされたのか。本稿では、かつてのデミオを懐かしみながら、その魅力について解説していきたい。
■今回紹介するクルマ
マツダ MAZDA2
※試乗グレード:15BD・2WD
価格:152万2900~254万1000円(税込)
デミオ時代から数えて10年目を迎えるロングセラーモデル
2010年代からブランドイメージの転換を図ってきたマツダ。イメージカラーをメタリックレッドとブラックで揃え、販売ディーラーもプレミアムな雰囲気へと変貌させた。MAZDA2は、新時代のマツダのエントリーモデルだが、かつての名称「デミオ」と呼んだほうが、そのサイズ感や特徴を捉えられる人は多いかもしれない。
デミオは1996年にデビューしたコンパクトハッチバックで、小型車にしては高めの全高や広い荷室を特徴として人気を博し、スマッシュヒットとなった。以後、マツダの基幹モデルとして4代目まで販売されてきており、走りのスポーティーさやデザインの妙で、2000年以降、戦国時代となっていた日本のコンパクトカー市場でも独自の地位を確立していた。
しかしその後、2019年の改良時に名称変更がなされ、新車種のMAZDA2としてリボーンすることとなる。つまり、MAZDA2は4代目デミオであり、改良が施されたデミオと言ってもいいだろう。そして、この4代目モデルが登場したのは2014年であり、そろそろ10年目を迎えんとするロングセラーモデルとなっている。
なかなかモデルチェンジされないのは、言い換えれば「いいクルマだから」長く売れ続けているとも言える。たしかに4代目デミオは、「魂動」デザインが取り入れられ、内外装ともに質感が高く、また当時のさまざまな新技術も採用されて機能性も高かった。
それらに加えて、デミオの時代に3回、MAZDA2になってからは1度、改良が施されてきた。また、その間に先進安全技術の拡充なども図られている。そして2023年、今回の商品改良は、メーカー自ら「大幅」改良と呼ぶほどで、外観のデザイン変更から、新素材の採用、グレード追加など、その範囲は多岐にわたっている。
まず大きなところでは、「15BD」、「XD BD」という新グレードが追加されている。これらは、「自分らしく、自由な発想で、遊び心を持って」というテーマが掲げられたMAZDA2において、自分好みに選べるカラーバリエーションの楽しさを味わえるモデル。今回試乗したのは、前者の「15BD」の方で、1.5Lのガソリンエンジンを搭載するモデルである(XD BDはディーゼルエンジン搭載モデル)。
外装・内装にアクセントカラーを取り入れて違いを出す
外観デザインは、MAZDA2全モデルにおいて、フロント&リアのグリルやバンパーの形状が変更されるなど、グレードごとのキャラクターを立てる形で変更。グレードによってはフロントグリルとリアバンパーにはワンポイントのカラーアクセントが採用されていて、今回の車両はイエローのワンポイントが入っている。地味になってしまいがちなホワイト系のボディカラーでも、このようなアクセントが1点入るだけで、グッとオシャレさが増して見える。
さらにこの15BDでは、ホイールにも非常に特徴的なデザインが採用されている。内部のスチールホイールの表面を隠すキャップ仕様でありながらも、2トーンカラーでシンプルかつクールさを演出。また、オプションパーツだが、ルーフ(車体天板)部分にはカーボン調のルーフフィルムが採用されており、スポーティーさをアピールしている。なお、このルーフフィルムはマツダ独自の新技術で、塗装回数を減らすことに貢献するという時代にも即したものになっているという。
従来からセンスの良かった上質な雰囲気の内装は、今回、ボディカラーに合わせて3色の配色がなされた。試乗したスノーフレイクホワイトパールマイカのボディカラーは、「ピュアホワイト」のインテリアパネルが採用されている。ボディ同系色を配置する手法は、海外のコンパクトカーでよく見られたものではあるが、やはり雰囲気を艶やかにしてくれる巧みな手法だ。
デミオのポップさと新時代のマツダを象徴する質の高さを融合
さて、走りに関して特段変更点はアナウンスされていないものの、久々に試乗してみたところ、相変わらず上質な雰囲気である。コンパクトカーというと、どうしても低価格で低コストなため、チープな走りを想像してしまいがちだが、MAZDA2は静粛性が高く、高級感のある走りを味わえる。
さらに、筆者がいいなと思ったのは、チルト&テレスコピック機能がしっかり備わっていることだ。クルマにあまり詳しくない人にとっては何のこっちゃという言葉だが、これはステアリングホイールの位置を調整する機能のこと。チルトはステアリングの上下位置(高さ)を、テレスコピックは同様にステアリングの前後位置を調整できる。コンパクトカーといえばチルト機能はあってもテレスコまで備えているものは少なく、このあたりまでコストをしっかりかけているのは、マツダのドライバーへの配慮が感じられる部分である。
初代、2代目、そして3代目あたりまで、デミオの味といえば、快活さやポップな雰囲気であったが、4代目モデルでは新時代のマツダの特徴に沿うように、質感の高さを持ち味にしていた。どちらがいいかはユーザーの好み次第であったが、今回のMAZDA2最大の改良では、両者の魅力を兼ね備えたモデルとなった。旧来のマツダファンも裏切らない、ポップさを備えながらも、質感の高いコンパクトカーへと変貌を遂げている。
SPEC【15BD・2WD】●全長×全幅×全高:4080×1695×1525mm●車両重量:1090㎏●パワーユニット:1496cc直列4気筒エンジン●最高出力:110PS(81kW)/6000rpm●最大トルク:142Nm/3500rpm●WLTCモード燃費:20.3㎞/L
文/安藤修也、撮影/茂呂幸正
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