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2023/10/10 18:00

改めてトヨタの「RAV4 PHV」に乗って考える、ほかのSUVとの差は?

長い歴史を持ち、これまで世界を席巻してきたシティSUVのトヨタ「RAV4」は今も高い人気をほこる。その理由を分析するべく、今回はトップグレードでもあるプラグインハイブリッドモデルを試乗した。ほかのSUVに勝っている部分はどこか、パワーユニットによる違いとはなんだろうか?

 

■今回紹介するクルマ

トヨタ RAV4 PHV(BLACK TONE)

価格:563万3000円(Zグレード)

 

世界で人気を誇るクロスオーバーSUVのプラグインハイブリッドモデル

世界中でこれだけ多くのSUVが販売されているなかで、トヨタのクロスオーバーSUV・RAV4は今も昔も世界トップクラスの人気を誇っている。1994年の初代モデルデビュー時は革命児のような存在で、当時はまだSUVが「クロカン(クロスカントリー車)」と呼ばれていた時代。街中でも映える「ライトクロカン」の先駆けとして、またたく間にヒットモデルとなった。

 

時代を経て、いつしか街の風景に似合うクロカンが、「シティSUV」や「クロスオーバーSUV」などと呼ばれるようになるのだが、グローバルモデルであったRAV4は北米でも好評で、モデルチェンジのたびに北米市場に合わせるかのようにサイズが大きくなっていった。現在では間違っても「ライトクロカン」とは呼べない、全幅1855mmの立派な「ミドルサイズSUV」である。

↑ボディサイズは全長4600×全幅1855×全高1695mm。また、現在販売されているZグレードのカラバリは7色展開となっています。写真はメーカーオプションのアティチュードブラックマイカとエモーショナルレッドを組み合わせたカラーリング

 

日本ではサイズ感が合わなくなってしまったため、実は先代型は国内販売されなかったのだが、2019年に登場した現行型は、登場するやいなや驚くほど好調なセールスを記録した。当初は、ガソリンエンジンモデルとハイブリッドモデルのみの設定で、翌20年6月に追加されたのが、今回紹介するプラグインハイブリッドモデルのRAV4 PHVである。

 

エクステリアもインテリアもこだわりの見えるデザイン

今回試乗した車両のグレード名は「BLACK TONE(ブラックトーン)」。実はこれ、2022年10月でカタログ落ちしてしまったグレードで、現在、RAV4のPHVモデルは「Z」という新グレードのみ販売されている状態なのだが、基本性能はBLACK TONEから変更されていない。

 

RAV4のラインナップのなかでも、PHVモデルはトップグレードの位置に置かれており、グリルやバンパーまわりなどフロント部に専用のメッキモールやLEDランプなどが装着され、高級感が高められている。

↑スポーティなイメージを強めたとするフロント。専用のLEDライトは先進性を強調しているそうです

 

↑新たに意匠した19インチ専用アルミホイール。都会のシーンにも合うよう、塗装と仕上げにもこだわっています

 

RAV4自体のデザインについては、直線基調でカクカクしていて、なんだか変形ロボットのようなイメージ。その世界観をうまく壊さないように上質にまとめられているが、幼少時に変形ロボットアニメを見て育った30~40代にとってはこのカクカクデザインが、懐かしくもあり、なんだか新しくもあり、支持される理由のひとつになっているようだ。

 

一方でSUVらしさ、たくましさといった力強い雰囲気はトレンドをしっかり押さえていて、常に世界のトップセールスを争っているトヨタのデザインここにありという自信が伝わってくる。

↑後ろから見てもカクカクとしたデザインが目立ちますね

 

インテリアもこのクラスのSUVのなかではデザインが凝っている。外観に合わせた力強さとモダンさを合わせたような上質な雰囲気ながら、物入れや装備もかなり充実していて、王道のSUVらしい堂々とした佇まいと、使いやすさが両立している。

 

操作部はそれぞれが使いやすい場所へ配置され、あらゆる人にしっくりくるように設計されている。また、SUVらしく着座位置が高いため運転自体はイージーだが、前述のとおり全幅がそれなりに広いため、あまり運転に慣れていない人は、狭い路地や駐車場などですこし苦労するかもしれない。

↑手元のダイヤルで「エコ」「ノーマル」「スポーツ」とドライブモードを変更できます。また、専用の「TRAIL」スイッチも装備

 

↑合成皮革シート表皮採用のスポーティシートを標準装備。横基調のキルティング意匠とレッドリボン加飾で上質さを演出しています

街乗りは超快適、スポーツモードにすれば強力な加速を楽しめる

EVモードにおける、フロントとリアのダブルモーター+CVTによる乗り味は非常にマイルドで、騒音についてもタイヤと路面が生み出すロードノイズしか感じられないほど。快適極まりない。ダイヤル式のドライブモードを「ノーマル」モードから「スポーツ」モードに変更すれば、一転ハイブリッド車となり、エンジンの力強さも加わったトルク感あふれる強力な加速を楽しむことも可能だ。また、電気容量が少なくなってくると自動でハイブリッドに切り替わり、エンジンを使って走りながらある程度充電もされるようになる。

↑RAV4 PHVは2.5L直列4気筒エンジンに加えて、フロントとリアにモーターを搭載。システム最高出力は225kW(306PS)を実現しています

 

車内も乗員の空間が広く感じられ、ロングドライブも快適。当然ながら燃費だってガソリンエンジン車より優れている。PHEVということで、今回はすっかりモーター走行を堪能させてもらったが、低速域や高速道路での走行時もパワー不足を感じることはなかった。さらにSUVでありながらコーナリング姿勢が安定しており、これは、重量物であるバッテリーを床下に搭載していることも貢献しているのだろう。

 

プラグインハイブリッドであることのマイナス面はなかなか見当たらない。荷室スペースについては、少々ガソリン車やハイブリッド車より容量が減っているものの十分使えるサイズだし、これだけ荷物が積めればアウトドアやレジャーでも不足はないだろう。また、荷室内にはAC100Vのコンセントも搭載されているので、出かけた先で家電などを使用することも可能だ。このあたりはSUVであることと、プラグインハイブリッドであることがうまくマッチングしている。

↑荷室スペースの容量は約490L。アウトドアなどで必要十分な装備は積めるでしょう

 

SUV+プラグインハイブリッド搭載モデルといえば、かつてはアウトランダー一択だったが、RAV4 PHVの登場で選択肢が広がった。ただし、ガソリンエンジン車やハイブリッド車であれば300万円くらいから買うこともできるが、このPHVは約560万円。どんなクルマを買うにしてもトップグレードを手に入れたい人や、時代の変化に敏感でEVの購入も視野に入れているような人に相応しい1台といえよう。

SPEC【BLACK TONE】●全長×全幅×全高:4600×1855×1695mm●車両重量:1920kg●パワーユニット:電気モーター+2.5L直列4気筒エンジン●エンジン最高出力:177PS(130kW)/6000rpm●エンジン最大トルク:219Nm/3600rpm●WLTCモード燃費(ハイブリッド):22.2km/L●WLTCモード一充電走行距離:95km

 

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文・撮影/安藤修也