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2024/2/11 11:30

マツダの“ロータリー”がMX-30でついに復活! 新時代の走りを体験レポート

マツダは2023年11月、実に11年ぶりともなるロータリーエンジンを発電機として搭載したシリーズ型プラグインハイブリッド(PHEV)「MX-30 ロータリーEV」を発売しました。今回はそのうちの「Modern Confidence」に試乗。その詳細をお伝えするとともに、試乗した印象なども含めてお伝えします。

↑「MX-30 ロータリーEV」の外観は、ほかのMX-30シリーズとほとんど違いはない

 

■今回紹介するクルマ

マツダ MX-30 ロータリーEV(試乗グレード:Modern Confidence)

価格:478万5000万円(税込)

 

ロータリーをPHEVの発電専用とした新世代のパワーユニット

そもそも「MX-30」は2020年10月、24Vマイルドハイブリッドと2.0L直列4気筒エンジンを組み合わせた「e-SKYACTIV G」を発売したのが最初です。この時点ですでにマツダは、MX-30を電動車として明確に位置付け、EVはもちろんのこと、ロータリーエンジンを発電機として使うPHEVもラインナップに加える構想を示していました。

 

構想はすぐに実行され、2021年1月にはEVモデルを追加。そして2023年11月には今回紹介するロータリーEVを投入することでラインナップの完成をみたのです。

 

注目はこのロータリーエンジンでしょう。エンジンは830ccの小排気量仕様(8C型)で、あくまで発電用としてのみ活用されます。つまり、このエンジンによる発電が加わるシリーズ型PHEVとすることで、EVモデルと同様に全領域にわたるモーター駆動を実現しつつ、EVを超える長距離走行を実現したのです。

↑パワーユニットをフロントに搭載し、バッテリーはフロアに、燃料タンクはリアシート下に配置した

 

↑ボンネット内のパワーユニット。ロータリーエンジン(8C型)は向かって右側に配置された

 

↑パワーユニットは、発電用ロータリーエンジン「8C」を高出力モーターに同軸状に配置してほぼ一体化されている

 

バッテリー容量は17.8kWhと「MX-30 EV」のちょうど半分ですが、それでも国産PHEVとしてはトップクラスの大容量。これによる航続距離は107kmを達成し、ロータリーエンジンでの発電を行えばカタログ値で航続距離は877kmにもなります。MX-30ならではのしなやかな足回りを考慮すれば、ロングツアラーとしての資質を十分備えていると言っていいでしょう。

 

ロータリーを採用した理由はコンパクトさにあった

ではマツダは、発電用にどうしてロータリーエンジンを採用したのでしょうか。その理由はロータリーエンジンならコンパクトで高出力が得られるからです。基本的にEVでは航続距離を稼ぐためにできるだけの軽量化が求められますが、シリーズハイブリッドともなるとエンジンに加えてガソリンタンクも搭載しなければなりません。

 

マツダによれば、発電用として開発した8C型ロータリーエンジンは71psのパワーを発揮しますが、これをレシプロエンジンで発生させるには1000cc・3気筒程度が必要になるそうです。EV用システムと組み合わせてこれを搭載するのはサイズの上からも難しく、一方でロータリーであればそのサイズは約3分の2で済みます。つまり、ロータリーエンジンをMX-30に搭載するのはPHEVとする上で必然だったとも言えるのです。

↑発電用ロータリーエンジン「8C」は軽量化のためにロータリー構造体のサイドハウジングをアルミ化し、従来比15kgの軽量化に成功した

 

MX-30 ロータリーEVはシリーズ型PHEVなので、外部からの充電機能が搭載されています。しかも、普通充電だけでなく、CHAdeMO規格の急速充電にも対応したことで、高速充電だけでなく自宅へ給電ができる「V2H」にも対応しています。

 

17.8kWhのバッテリーが満充電であれば、一般的な家庭の約1.2日分の電力供給が可能になるということです。これならアウトドアでの利用だけでなく、非常時の電源としても役立ちますね。

↑運転席側後方に配置されている充電口は、普通充電(左)とCHAdeMO方式の急速充電の両方に対応した

 

ところで、ロータリーEVだからといって、MX-30として特別な仕様が備えられたわけではありません。外観でほかのMX-30との違いがわかるのは、ロータリーエンジンが搭載されていることを示すバッジがあるのと、ホイールが専用品となっているぐらい。インテリアではメーター内がロータリーEV専用となるものの、基本的なレイアウトは三連式の同じものです。その違いはパワートレーン系が変わっただけとも言えるでしょう。

↑「MX-30 ロータリーEV」のリアスタイル。「ロータリーEV」を示すバッジと専用ホイールが装備した以外、ほかのシリーズとの違いはない

 

↑「MX-30 ロータリーEV」の三連メーター。バッテリー管理用表示があるものの、基本的なレイアウトはほとんど同じだ

 

↑「MX-30 ロータリーEV」の運転席周り。ほかのMX-30シリーズとの違いはほとんどない

 

スムーズな走りはBEVそのもの。高速域までひたすらストレスフリ-!

試乗コースは、横浜のみなとみらい→金沢八景の往復約50kmを、首都高と一般道を使い分け、1時間半ほどかけて走行しました。

↑「MX-30 ロータリーEV」を試乗する筆者

 

ドライブモードは、センターコンソールのスイッチにより、デフォルトの「ノーマル」、そして「EV」に「チャージ」という3つを選べます。ノーマルモードでは電池残量があるうちは基本的にBEVとして走り、電池残量が半分を切るとエンジンを適宜ONにしながらの走行となります。一方のEVモードにすると電池残量ぎりぎりまでBEVとして走ります。

↑ドライブモードはデフォルトの「ノーマル」、そして「EV」に「チャージ」という3つが選べる

 

ただ、この距離だと言うまでもなくBEVですべて走り切れてしまいます。その走りはBEVによく見られるような、特別に“速い!”ことはありませんでした。体感としては、MX-30 EVよりも動きに俊敏さがないようにも思いましたが、それはロータリーEVの方が、100kgほど車重が重いことが影響しているのかもしれません。

 

それとチャージモードでのエンジン音は思った以上に賑やかです。マツダによれば「ロータリーエンジンならではの効率の良さを引き出すために、高回転域で回していることが影響している」とのこと。ならばノイズキャンセラーなどで対策はできなかったのか? とも訊ねてみましたが、「ノイズの帯域が幅広く、ノイズキャンセラーでは対応しきれなかった」ということでした。

 

とはいえ、スムーズな走りはBEVそのもので、高速域まであっという間に到達。アクセルを踏み込んで、あえてロータリーエンジンをONにしても(足元からスイッチが入ったのを体感できる)、その快適な走りは変わらずストレスなし! エンジン音もノーマルモードで走っている分にはそれほど気になるものではなく、気持ちの良い走りが楽しめました。

 

そんな中で試乗を通して気になったのは、マツダコネクトのディスプレイサイズが8.8インチと小さめだったことです。特に周囲のベゼルにドライバーモニター用赤外線センサーが入っていることもあり、ディスプレイがとても小さく感じてしまうのです。その割にコンソール下に配置されたエアコンの表示は“巨大”な印象を受けます。

↑マツダコネクトで使われるディスプレイは8.8インチ。周囲のベゼルにはドライバーモニタリング機能も備わる

 

一方でマツダコネクトのコントローラーのリニアな動きは、操作する上でのストレスはまったく感じさせません。また、このグレードには標準装備となる12スピーカーの「ボーズサウンドシステム」も、EVモードで走ったときの静粛性と相まって心地よさを感じさせるものとなっていました。このサウンドはぜひ試乗しながら体験して欲しいと思います。

SPEC(Modern Confidence)●全長×全幅×全高:4395×1795×1595mm●車両重量:1780kg●パワーユニット:8C-PH型エンジン+電気モーター●最高出力:72PS(エンジン)、170PS(モーター)●最大トルク:112Nm(エンジン)、260(モーター)●WLTCモード燃費:15.4km/L(ハイブリッド燃費)

 

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撮影/松川 忍