オーストラリアのお茶の間をくぎ付けにしたリアリティ番組「一目で結婚」。科学的なマッチングに基づく婚活番組という触れ込みで、これまで4年間毎年放送されてきましたが、現在も続いているカップルはたったの1組だけ。そのせいか、これまでの視聴率はイマイチでした。が、現在のシリーズはなんと最高視聴率を記録。一体なぜでしょうか? そして、科学的なマッチングというのは可能なのでしょうか?
科学的なマッチングの仕組み
「Married at First Sight」は、「Love at first sight(一目ぼれ)」からもじってつけられた婚活のリアリティ番組。あえて訳せば「一目で結婚」という番組名になるかと思います。20代~50代の婚活者を募り、応募者の性格や好みなど様々なデータを分析。科学的に男女11組(計22人)をマッチングさせ、その様子を放送するというものです。
番組の冒頭部分は、なぜこの番組に応募したかという背景説明で始まり、その後、いきなり初対面で「結婚」することになります。とはいっても正式な結婚ではなく、ただ結婚式を挙げるだけ。それでも、式後に1週間のハネムーンへ出かけ、戻ってから7週間アパートで一緒に暮らし、実際に夫婦のような生活をするわけです。これでは結婚の本当の価値を伝えることにならないとの批判もあり、最初のシーズンが始まる前は1万5000人の署名を集めて番組の中止を要求する声があがったこともありました。
ここで気になるのが「科学的なマッチング」の方法。このマッチングは3人の専門家によって行われます。1人目は博士号を持つ「心理神経療法家」、2人目は心理学士号を持ち、20年の経験がある「恋愛コンサルタント」、そして3人目も同様に15年の経験がある「恋愛コンサルタント」です。つまり、それなりに高いレベルの専門家に依頼していることになります。
実際に使うデータはかなり詳細に分類されています。その一部をご紹介すると、背の高さ・体重・育った環境・応募への親の反応、情熱を持っているもの、自身のユニークなこと、いままで一番後悔していること、暇なときの過ごし方、変化と安定への好み、秘密や子どもの有無、現在の生活、これまでの恋愛経験、好みのタイプなどがあります。
ただし、上述の質問事項は本人が回答するわけですから、客観的に正確であるとは言えないかもしれません。参加者のなかには初対面でマッチされた相手を毛嫌いしていた人もいるのですから。
ハプニング多発で視聴率アップ!
さて、過去4シーズンにおける最終回の視聴率が平均23.75%だったのに対し、最新シリーズでは31%と高い視聴率となり、他のチャンネルを押さえて1位を独占しました。その一因は、出場者全員を集め週に1回開かれるディナーパーティー。参加者たちは普段アパートで2人暮らしをしますが、そのパーティーでは22人のグループのなかに置かれます。このような場の変化で生み出されるのが「集団のダイナミズム」で、自分や相手を集団に置くことによって、自分たちの関係をより現実的に評価させるように設計されているのです。
こうした場面では自分や相手を、他の参加者と比較するようになります。これまでのシリーズでは「ただの社交」で終わっていましたが、今回は、このパーティーを通し「カップルAの男性」と「カップルBの女性」の間に「浮気」が発生。そこから、番組が思わぬ方向へ進み、視聴率がアップしたと言うわけです。結局、この浮気は男性が「元のさや」に戻り、寄りを戻して終わりました。
ところが最終回、さらに視聴者を驚かせたことがありました。番組はリアリティーショーと言いつつ、撮影は最終回の6週間前に終了しており、最終回では、この6週間でそれぞれのカップルがどうなったかを報告。8週間の生活を経て「今後は付き合わない」と決めたカップルが数組あり、そのうち3組の片方は別の参加者と付き合うようになっていたのです。さらに、8週間の共同生活後「今後も付き合う」とロマンチックに語った3組のカップルでさえも結局、破局。運命の赤い糸はやはり科学では見つけられないということになるのでしょうか。
番組は賛否両論を呼んでいます。ある出場者は、番組の制作側が視聴率をあげるために番組の内容をあまりにもドラマ化しすぎたと批判。「科学的マッチング」への不信感も募っていますが、番組の専門家の一人ストラトフォード博士は「男女関係というものがいかに難しいか、そしていかに素晴らしいものであるかを学べるという点において、この番組は重要だ」と反論。一目で結婚は2019年にも放送が予定されていますが、今後も高い視聴率を維持できるかどうかは分かりません。