例年は、夏でも平均最高気温21〜25度程度と涼しく、一般家庭にエアコンすら普及していないイギリス。それが今年は1976年、2003年、06年と並び、イギリス気象庁観測史上、最も暑い夏を記録しました。好天が1か月も続いたことで夏の過ごし方にも変化が現れ、アウトドアの「アクティビティ」が一躍ブームになったんです。この夏、盛り上がった野外アクティビティ3つとそのヒット要因をご説明しましょう。
1:「キャンパーバン」を快適に改造
キャンプへ出かける人が増えたため、「キャンパーバン」と呼ばれるキャンピングカーの人気が高まりました。Pinterestによると「Camper remodel(キャンパーバン改造)」のワード検索は前年比で933%増加。欧米などでキャンパーバンの普及率が高い理由には、キャンプ場の充実度があります。キッチン、炊事場、シャワー、トイレ、子どもの遊び場などの設備が充実しているだけでなく、火起こしやテント設営もする必要がないので、アウトドアが苦手な方でも気楽に滞在できる施設が各地に点在しています。
イギリスでは、宿泊可能な車の経済効果は5億ポンド(700億円以上)とも言われ、快適なアウトドアライフを実現するために、内装に手を加えてインテリアを高級にするバンも少なくありません。この背景には温暖化以外に、景気悪化で国内に留まる休日「Staycation(ステイケーション)= Stay(留まる、宿泊する)+ Vacation(バケーション)の造語」を選ぶイギリス人が全体の3分の2にまで増加したことがあります。ホテル代も高額なのでキャンパーバンへ「先行投資」する人や、さらにそこで年中暮らす世帯もあるほど、この市場は大きくなっているんですね。
2:DIYで庭にプールを設置
例年、水温が適温まで上がる日は1週間にも満たないくらいですが、18年はとにかく水遊びがピッタリでした。そこで売れに売れたのが家庭用の簡易プールです。路面店でもオンラインでも売り切れが続出。大手ホームセンターのB&Qでは、昨夏ビニールプールが6万個売れました。
また、Pinterestでは「Stock tank pools(ストックタンク・プール)」の検索も前年度比で300%アップ。ストックタンクとは、円形の農業用貯水タンクのこと。簡単に設置できるうえ頑丈で低コストということで、ストックタンクもヒットしました。
とはいえ、イギリスで常設屋外プールを備えた家はまだまだ少数派。南仏やスペイン、ポルトガルなどの温暖な地域で過ごす人の割合が多く、これは明らかに気温差によるものです(異例の猛暑は南ヨーロッパにも及び、スペイン・ポルトガル国境で大規模な森林火災が発生したのも記憶に新しいですが、通常の夏では屋外プールで過ごすのが快適)。
3:進化型グランピング! ツリーハウスに宿泊
今年、もう一つ注目された屋外アクティビティが「ツリーハウス」です。ここ数年人気の「グランピング」から派生したトレンドで、童心に帰って楽しめるうえに快適な宿泊がポイント。
例えば、南部コーンウォールにあるツリーハウスは、バスやトイレを始め、モダンなキッチン、ソファ、テレビ、テラスに森林浴ジャグジーまで完備。同敷地内は完全なプライベート空間となっており、レストランやバー、スパ施設、バトミントンコートが用意されており、高級リゾートホテルさながらの設備だそう。
「進化型グランピング」とも言えるツリーハウスは海外にも展開されつつあり、フランス、ドイツ、北欧諸国、タイ、北米、南米などでも利用可能です。
まとめ
もともとイギリス人はアウトドアと太陽が大好きな国民ですが、連日の晴天で新たなアクティビティ・トレンドが誕生しました。日本でも車中泊は定着しつつあるので、需要が見込めそうです。プールは、広さの問題以外は水温などの心配が不要なので、比較的場所を取らない貯水タンク型プールは意外とよいかもしれません。ツリーハウスが日本にもやってくるのか注目ですね。