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2020/5/12 18:30

「食品廃棄物ウェディング」は素敵なこと! イギリスで活発な「食品ロス削減」のユニークな動き

世界中で深刻化する食品ロス。イギリスでは厳しい法制化を手段とするのではなく、国民の自主性に任せつつ、食品ロスを効果的に削減しており、この問題に取り組む民間団体や関連業界のなかには注目に値するビジネスやサービスが数多く見られます。本稿では、イギリスにおける食品ロス問題の背景やユニークな事例などを紹介しましょう。

イギリスでは、2000年から食品廃棄対策を進めています。現在、国際的に削減活動が推進されていますが、この背景にあるのが2015年9月に国際連合が採択した「17の持続可能な開発目標」(SDGs)です。このなかで、食品廃棄・ロス削減の目標として、2030年までに小売・消費レベルにおける1人当たりの食品廃棄量を半減させ、生産・サプライシステムにおける食品ロスを削減することが設定されました。

 

この取り組みにおいて、イギリスは強制が伴う法制化よりも、民間団体や業界団体の自主性に任せています。この活動の核となるのが、2000年にイギリス政府の財政支援を受けて設立したNPO組織の「WRAP」。

 

この組織は、業界団体の活動を集約・調整する役割を担っています。2005年以降、食品関連事業者の自主協定「コートールド協約」を統括運営することにより、プラスチック製品削減などのキャンペーンを進め、効果を上げてきました。

 

2016年以降にWRAPが注力しているのが、国連の目標を達成すべく設定した「コートールド協約2025」です。ここで、「2025年までに、温室効果ガス、食品廃棄量、サプライチェーンによる水のインパクトを20%削減する」という目標を設定し、スーパーマーケットなどの食品関連業者と連携協力を進めています。

 

WRAPによると、2018年時点のイギリスの食品廃棄量は約950万トンもあり、その約70%は食べることが可能な状態で廃棄されているとのこと。そのなかの約85%以上が家庭や食品製造業者から出ているのだそうです。

食品ロスのための料理

↑一流レストランも食品ロスに敏感

 

イギリスでは、食品廃棄や食品ロスに対する国民の意識が年々高まっています。そのため、環境保護に協力的で道徳的に正しい運営を行っている企業は社会的に高く評価され、消費者から大きな支持を得る傾向があります。

 

その一つが「2020年までに廃棄量をゼロにする」と宣言したパブのグリーンキング。プラスチック製ストローの使用を停止したイギリス初のパブチェーンとして、脚光を浴びています。さらに、食品廃棄量削減アプリの「Too Good To Go」と連携し、2019年4月には、食材の残り物を利用して調理した肉料理を半額(約460円)で提供するというキャンぺーンを開始。年間で1000皿以上にも相当する廃棄量の削減にも成功しました。

 

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このほかにも、レストラン業界は廃棄物利用のための調理法研修会開催や肉のスペシャリストの新規雇用、自家栽培の開始といった活動を通して、食品廃棄・ロスに積極的に取り組んでいます。

 

この問題に対しては、ミシュランの星を獲得したレストランも真剣に捉えており、例えば、ロンドンの「ネイティブ・レストラン」では、すべて廃棄物で作った3品からなるコース料理を週末限定で約2700円という安値で提供しています。そこでは、鳩の心臓を材料に使ったスナックや鹿の首肉から作ったスープ、魚の残部から作ったタコス、残り物の野菜を使った天ぷらなどを味わうことが可能。同店の料理長は「どんな部位でも特徴的な旨味がある。それを上手に使うことがコツだ」と述べています。

 

廃棄用のパンで作ったビールで大成功

↑パンから作ったビールが欧米で広まりつつある

 

イギリスで最も多く廃棄されている食品が何かご存知でしょうか? その一つはパンです。パンの生産量の約44%が捨てられていると言われていますが、ここに着目したのが「Toast Ale」。廃棄用パンから生まれたビールです。

 

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オーナーのロブ・ウイルソン氏は、サンドイッチ工場やベーカリー、スーパーから余剰生産されたパンを集め、2016年にビール醸造を開始しました。この発想は、ヨーロッパの食品フェアで展示されていたビールを見て思いついたそうです。

 

彼の会社は、毎月100万ポンドの商売をするまでに成長し、現在では、アイルランドや南アフリカ、アメリカにも支社があります。Toast Aleは、約4000年前にメソポタミアの古都バビロンで使われていたといわれるレシピがもとになっており、ビール1本につき食パン1枚が含まれているのだそうです。

食品廃棄物で祝う結婚披露宴

↑食品廃棄物ウェディングは結婚式の新しい形?

 

2018年に湖水地方のカンブリアで結婚式を挙げたカップルは、イギリスで初めての「食品廃棄物ウェディング」で一躍有名になりました。135人の招待客は、披露宴のご馳走がすべて食品廃棄物から作られていたという事実にまったく気付かなかったと語っています。

 

賞味期限が迫った商品やスーパーで拒否された形の悪い野菜や果物を、卸業者やレストランから収集し販売するチェ-ン店の「リアル・ジャンクフード・カフェ」が材料の調達に協力しました。当日の披露宴のメニューは、チーズとハムの盛り合わせ、鶏肉の白ワインとマッシュルームソース添え、ベジタリアン用チリコンカン、フルーツサラダの濃厚クリーム添え。この結婚式の後、イギリスでは「食品廃棄物ウェディング」を希望するカップルが増えているそうです。

 

イタリアでも結婚式での食べ残しを再利用する運動が見られますが、そのような行動を起こしているのは若い世代でした。イギリスのToast Aleや食品廃棄物ウェディングなどを見ると、やはり若い人たちが食品ロスの削減に対して積極的に動いているように見えます。若い世代から食の新しい価値観が生まれており、それは日本の「もったいない」という考え方とも通じるでしょう。今後の発展に注目です。

 

執筆/ラッド順子

 

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