日本の政府開発援助(ODA)を実施する機関として、開発途上国への国際協力を行っているJICA(独立行政法人国際協力機構)の活動をシリーズで紹介していく「JICA通信」。今回は、スポーツをテーマにJICA地球ひろばで開催された一般参加型のオンラインイベントについて取り上げます。
新型コロナウイルスの流行がスポーツにも大きな影響を与えるなか、JICA地球ひろば(東京・市ヶ谷)では、スポーツの力や役割を見直そうと、オンラインイベントや企画展を開催しています。地球ひろばとしては初の取り組みとなった一般参加型のオンラインイベントでは多様な参加者による意見が飛び交い、スポーツを通じた新たな交流の場として盛り上がりました。
「途上国でのスポーツ普及は、可能性や希望、夢を与えることであると再認識」といった感想も
JICA地球ひろばで開催されたのは、五輪応援企画「オンラインでワールドカフェ! ザンビア パラ陸上支援 野﨑雅貴さんと考える日本と世界の体育・スポーツの価値の違いとポストコロナのスポーツの役割」と題したオンラインイベントです。野﨑さんはアフリカのザンビアで、青年海外協力隊の体育隊員として活動していた経験を持ちます。
当日は、高校生や大学生から、海外経験豊富な社会人まで、さまざまな立場の男女45名がオンラインで参加。スポーツの持つ力やその未来になどについて、活発な議論を交わしました。
参加者からは「スポーツを通して、礼儀なども身につくのが日本の体育教育のよい点だと思う」「日本の体育には、取り組む種目が多いので誰もが輝ける時間があるのが素敵なのではないか」といった意見が出され、日本の体育文化への議論が高まります。また、「ポストコロナとスポーツ」というテーマについては、「これからは人に触れないような形でのスポーツが主流になっていくのではないか」「コロナ収束後は、現地に行かなくてもスポーツに関する国際協力ができるようになるのではないか」といった、未来に向けてのさまざまな声が聞かれました。
イベント終了後には、「幅広い年齢の方が参加していたこともあり、ディスカッションを通して、新しい視点で物事を考えることができた」「ディスカッションで、途上国でのスポーツ普及は、可能性や希望、夢を与えることであると再認識した」といった感想が参加者から寄せられ、参加者が主役となるディスカッションイベントとなりました。
イベントを企画した、JICA青年海外協力隊事務局でスポーツと開発を担当する浦輝大職員は、「今はネット上で簡単に情報を得られる時代なので、野﨑さんの体験談だけであれば、You tubeにアップして好きな時間に視聴してもらうことでもきます。でも、せっかく参加者の方々に同じ時間に集まってもらうのであれば、みなさんそれぞれが考えていることを共有する場になることが重要。そのような場が提供できればと今回のオンラインイベントを開催しました」と話します。
現在、地球ひろばのガイド役(地球案内人)を務めている野﨑さんは、「参加者が皆、積極的に発言しているのに感動した」と期待を上回る反応の良さに驚きを隠せない様子でした。
地球ひろば企画展「スポーツのチカラで世界を元気に」を開催中
現在、JICA地球ひろばでは、スポーツを通じてできることを考えていく企画展「スポーツのチカラで世界を元気に」が開催されています。
東京オリンピック・パラリンピックの時期にあわせて開催する予定でしたが、新型コロナウイルスが広まるなか、「こんな時期だからこそスポーツのチカラを考えてみたい」という趣旨で企画されました。
展示は、「スポーツと国際協力」、「スポーツ技術の向上・教育としてのスポーツ」、「スポーツをすべての人に」、「ジブンゴトで考えよう」の4つのゾーンに分かれています。それぞれ解説パネルや、競技用の義足やバスケットボール用の車いすなど実際に使われているスポーツ用具が置かれ、ボッチャや綱引きといった競技を疑似体験できるコーナーもあります。会場では、野﨑さんをはじめとした地球案内人がガイドし、案内人はフェイスシールドを着用して、手で触れる展示物はこまめに消毒をするなど、コロナ対策を万全に来場者に対応しています。
地球ひろばの中村康子職員は「来館者の方から『ボッチャやバスケットボール用の車いすの試乗体験は、スポーツの楽しさを体験できたし、人間の体の大きな可能性を実感した』という声をいただいています。ぜひたくさんの人に来場いただきたいです」と話します。企画展は、今年10月29日まで開催されています。
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