雑貨・日用品
2018/6/15 10:00

発想が規格外! このバッグと小物が「消防用ホース」でできているだと!?

いまWebを中心に話題となっている、バッグ・雑貨ブランド「らうらうじ-second hose-」をご存知でしょうか? 「らうらうじ-second hose-」は、大阪に本社を構えるかばん製造業「サンワード」のオリジナルブランドで、バッグのほかウォレットや文房具などを手がけています。

見た目の色鮮やかさにも惹かれますが、実際に製品を触ってみて驚くのは、その素材感。一見すると、フォークロアな手織り繊維にも見えますが、とにかく頑丈で強く引っ張ってもビクともしません。柔道着などに用いられる刺し子などを連想させます。実は、少し……いや、かなり意外なものが素材に使われているのですが、一体何だと思いますか?

 

答えは「消防用のホース」。消防車に積まれている、あの放水時に使用するホースです。バッグもウォレットもペンケースも「らうらうじ-second hose-」の商品はすべて、この消防用ホースからできているんです!

 

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らうらうじ-second hose-

 

消防用ホースってそもそも一体どんなもの?

なぜ、消防用ホースがバッグや雑貨に生まれ変わったのでしょうか。まずは、そもそも消防用のホースがどのように作られているかというところからご説明しましょう。

 

消防用のホースには厳密な規格があります。素材のタテ糸には、ポピュラーな毛羽のある紡績糸「スパン糸」に比べ、 引っ張り強度に優れた「バルキーフィラメント糸」という糸が用いられています。この糸にはタテ方向への伸びが少なく、汚れにも強く、洗浄後の乾燥も早い、という3つのメリットがあり、それが消防用ホースの丈夫さを支えているのです。

↑左から、スパン糸(紡績糸)、フィラメント糸、バルキーフィラメント糸。このうち「らうらうじ-second hose- 」の素材に使われるのは、かさ高加工されたフィラメント糸「バルキーフィラメント糸」。スパン糸より引っ張り強度に優れ、タテ方向の伸びが少ないのが特徴です

 

「らうらうじ-second hose- 」は、このホースの頑丈さに加え、鮮やかな彩色にも着目し、未着色のホースではなくカラーホースを使っていることも大きな特徴です。

↑「らうらうじ-second hose- 」の商品に用いられているカラーホース。単色もあれば、パターンが入ったものもあります

 

カラーホースは、糸の製造段階で 顔料で着色した原着糸を織り込んでいるので、表面だけ染色したホースに比べると、色褪せに強く、鮮やかな色合いが長持ちします。また、彩色されたあとも軽さや素材自体のしなやかさを損なうことがないので、バッグ素材にも適しているというわけです。さらに、この製法は、廃水処理や乾燥工程をなくし、環境への負荷を低減した省エネ製法なので、 エコで環境にやさしいという利点もあります。

↑原着織り込み式方式を採用し、糸の時点で着色されたポリエステルの原着糸(写真左)。生地の外側だけを塗装する外面加工方式(写真右)に比べ、色の変化が少なく、発色が長持ちします

 

消防用ホースはどのようにしてバッグに生まれ変わる?

ここまでご説明してきたように、消防用ホースはバッグの素材として優秀な素質を秘めています。とはいえ、もとは消防用ホースなので、約20mの長さに対し横幅は10cm程度しかありません。ですから、バッグ素材としてリユースするには一筋縄ではいきません。

 

その工程は、筒状になったホースの左右をカットして平らにする作業からスタートします。平面状になったら、次はこれを10cm×1mに加工してテープでつなぎ合わせ、1m×1mのサイズに整えていきます。そのうえで、抜き型を使い、ようやくバッグに用いる素材の完成です。

↑廃棄された消防用ホースからピックアップされた素地。それぞれが幅10cm、長さ1mに揃えられ、これをつなぎ合わせていくことで商品に使われる素材となります

 

拡大してみると……

↑それぞれが美しく配列され、これが消防用ホースだとは思えないほどの鮮やかさ。リユースされたことで、捨てられる運命に合った素材も、まさに息を吹き返した印象です

 

↑裏面にはTPU(熱可塑性ポリウレタン)をライニング。そのため防水性にも優れています

 

なぜ消防用ホースをリユースしたのか? 商品化には意外な苦労も

「らうらうじ-second hose- 」が使う消防用ホースは、いったん製造されながらも「規格外」と認定され、本来であれば産業廃棄物として処分されてしまうはずだったものを再利用しています。消防用ホースのリユースを思い立った理由を、サンワードの代表取締役である池田智幸さんに聞きました。

「消防用ホースは、直接人命につながるものですから、規格そのものがとても厳しく、製造の過程で少しでも傷が付いたり、厚みや長さが違うと規格外品となり、 産業廃棄物として捨てられてしまいます。ホースとして使えなくても、未使用のまま捨てられるのはとても残念で、もったいないですよね」(池田さん)

 

そこで池田さんは消防用ホースで、何か作れないだろうかと考え、エコや社会貢献への思いとホースの素材特性から、自社で作るバッグへの転用にたどり着いたといいます。

↑廃棄処分が決定した規格外の消防ホースの山。どれも未使用できれいなものばかりですが、ちょっとした傷があったり、わずかに寸法が違うだけでも産業廃棄物となり、捨てられてしまいます

 

ただ、当初は勝手の違うこの素材の扱いに苦慮したのだとか。

「素材が硬く、筒状にした際のクセがついていますから、そのままでは通常のミシンが使えません。また、バッグはふつう、内まとめといって、裏返しの状態で作ってから表向きに引っ繰り返すのですが、あまりに頑丈で内まとめしてから引っ繰り返すことができない。そのため、最初から表向きにして縫製する外まとめにしています。工程1つ1つが試行錯誤の連続で、発想から商品化までに約1年半はかかりました」(池田さん)

 

こうした努力のかいがあり、丈夫でカラフルな独創性に満ちたバッグは想定を超えたヒット商品となりました。

 

ただ、製造面の悩みもあります。それは、規格外品は意図的に作られているわけではないので、安定した素材の調達ができない点。例えば緑のホースが欲しくても、緑の規格外品が出るのを待つしかありません。色によって長く品切れ状態が続く、また売れていても補充されない背景には、そうした事情があったのですね。多色展開で発売しても、ワンデリバリーで終わってしまう商品も多いとのこと。気に入ったカラーと出会ったら、その場で買うのが「らうらうじ-second hose- 」の商品を手に入れるコツといえるでしょう。

 

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