「IT家具屋」を志向する理由
内藤家具インテリア工業は「IT家具屋」という方向性を掲げています。これは、データを活用して家具の生産を管理すること。その意図はどこにあるのでしょうか? 同社のモノ作りの核心に迫ります。
――貴社が目指す「IT家具屋」について教えてください。
内藤 とりたてて標榜しているつもりはありませんが、その名のとおり、一言でいえば「情報」を家具づくりに生かすということです。昔からの伝統やこれまで培ってきた匠の技などは大事にしつつ、時代に合った家具づくりを考えなければなりません。
ここで簡単に日本の家具産業の流れについてお話しさせていただくと、第二次世界大戦後から1960年代まではGHQ向けの収納家具を皮切りに、高度経済成長に乗って国内の箱物置き家具や婚礼家具の需要が増えました。さらに70年代に入ると、大手ハウスメーカーさんが “マイホーム”を工業製品として作っていきます。
弊社はもともと婚礼家具などを扱っていたのですが、「これから家具は家に付随する時代になっていくだろう」と判断し、業界でいち早くビルトイン収納にシフトしました。70年代~80年代は「少品種大量生産」の時代で、モノを作れば売れていました。しかし、90年代にバブルが崩壊すると時代は「多品種少量生産」に移行していきます。この時代では、材料の調達や在庫管理、工程や物流計画などに関して、従来以上に精度の高い情報管理が求められます。それに対応するために、ITを活用して、これらの情報を一元管理できるように切り替えていきました。
――「作って売る」から「要望に合わせて作る」に変わった?
内藤 はい。昔はいわゆる「プロダクトアウト」でしたが、いまは「マーケットイン」で、消費者のニーズにどれだけ的確にスピーディに対応していくかということが重要です。高い品質を維持しながら、できるだけコストを抑えつつ、欠品しないようにして納期を間に合わせる。このなかでタイミングを逸しないように、情報を積極的に活用していこうと考えています。いまは加工機械などもネットワークでつなげたり、各工程をカメラで撮影したりして進捗や稼働率などを可視化しています。
また、情報の即時性の活用でいえば、仮組や検品などの段階でお客様に画像なり映像をご提供したり、「ご注文いただいた家具はあさって届きますよ」とお知らせしたり、お客様にもっとご満足いただけるようなサービスにつなげていきたいですね。お客様との接点を増やしていくというイメージ。近い将来、AI技術や5G通信などの活用も視野に入れています。