家を出るときは気にならなかったのに、仕事中ふと顔に手をやると、ヒゲの剃り残しを発見。剃り残しが気になって仕事に身が入らなくなる……なんてこと、ありますよね。でも、それって、そもそものヒゲの剃り方に問題があるのかもしれません。今回は、みんなが知っていそうで実は知らなかった正しいヒゲ剃り術を、カミソリメーカーのシック・ジャパンに教えを請い、ご紹介いたします!
一気にワンストロークで剃るのが良い!?
ーーヒゲ剃りって、実は誰かに教わったり、正しい剃り方を知る機会って少ない気がします。
中町都さん(以下、中町) そうかもしれないですね。快適で安全なヒゲ剃りは、まず「ヒゲを柔らかくしてから剃る」というのが基本です。そして、肌への負担を和らげるために「ヒゲの密集度が低いところから、高いところへの順で剃る」ことも推奨しています。
ーー何故、そうすることで肌の負担がなくなるのですか?
中町 ヒゲの密集度が高いところを後にする理由は、「時間が経てば経つほどシェービング剤の効き目が出てくる」からです。あと、よくありがちなのは「深剃りをしたい」「一気にザッと剃るのは怖い」という思いから、こまめにちょっとずつ剃っていくこと。これは良くないんですよ。かえって肌を傷めてしまいます。ですので、特に広い面積のヒゲは「一気にワンストロークでスッと剃る」ことを心がけて欲しいです。
ーー次に細かい部分はどうでしょうか? 例えば顎回り、唇回り、鼻の下など。
中町 こういった「細かい箇所は、後半に細かく剃る」ことを推奨しています。もちろん毛流にそって剃っていただきたいのですが、毛流は人によって異なるので、これは日々よくチェックして把握していただくのが良いと思います。
ーーわかりました。では、実際に寺戸さんをモデルに、改めてレクチャーしていただけませんでしょうか。
中町 わかりました。
こうだったのか!? 正しいヒゲの剃り方の手順
①面積の大きいところから剃る
シェーバーは頬の外側から当てる。細かくシェーバーを動かすのではなく、大きなストロークで上から下へ。さらに外から内側へと剃り進めていきます。一番内側は頬から鼻の脇を通って、そのまま斜めに口回りの上部までを剃り落とします。この時点では、細かい口回り、アゴのヒゲは残しておきます。
②喉周りは毛流を確認しながら剃る
両頬を剃ったら、次に剃るのが喉周り。自身の毛流にそいながら順に剃っていきます。
③アゴはフェイスラインにそって
アゴのラインと平行に、「外側から内側へ」のステップで剃っていきます。
④唇回りは軽く剃り落とす
鼻の下と唇回りの三角地帯では、まず唇下をやさしく剃り落します。ここでも何度もシェーバーを当てず、スッと一度で剃れるのがベストです。
⑤鼻の下はそっとやさしく
一番デリケートな鼻の下。三角に残ったヒゲをやさしく順にそって剃り落していきます。
⑥セカンドシェーブ
①~⑤までのヒゲ剃りで、残ってしまった箇所を最後にセカンドシェーブ。残ったヒゲはこまめにお湯につけるなどし、水分を補給しながら、毛の流れと逆方向に皮膚をひっぱり、ヒゲを立ち上がらせるように剃り上げます。
⑦完成!
綺麗に剃れました!
4枚刃、5枚刃と刃の数が増えた理由は…
ーーよくわかりました。でも、ワンストロークでスッと剃るというのは、やはりちょっと怖いですね。
中町 そうおっしゃる方も確かに多いです。しかし、特に弊社で展開している4枚刃、5枚刃というシェーバーを使って正しく剃れば安全に、綺麗に剃れると思いますよ。
ーーそのシェーバーに刃が4枚も5枚もついているのは、何故なのでしょうか?
中町 これは肌負担を軽減させるためなのです。1枚刃で剃るよりも、4枚刃、5枚刃の方が刃の当たるポイントの接点が増えるから、力が分散されて、1点あたりにかかる肌負担というものが軽減されるのです。
ーー刃の数が多いのは「剃り味を、より強力にするため」かなと思っていました。
中町 もちろんそれもあるのですが、一番の理由は肌負担の軽減です。また、ヒゲ剃りが苦手な方のために、衝撃吸収機能をもったシェーバーもあります。これは首の部分がグネっと曲がるものですので、肌にそって動いてくれるわけです。なので、自動で圧力を調整し、肌負担を軽減させます。
シェービング剤は何を使うべき?
ーーまた、前後しますが、そもそもシェービング剤も沢山ありますよね。これもどれを選んだら良いかわかりません。それぞれどういった特性があるのでしょうか?
中町シェービング剤には大きく分けて3つの種類があります。
・クリーミーな泡が優しく肌を守るフォームタイプ。
・透明なジェルがヒゲに密着して、剃りやすいジェルタイプ。
・そして、フォームとジェルの良いとこ取りをして、ジェルを肌に馴染ませている間に泡になってくれる、ジェルフォームタイプ。
たまに「石鹸で流用すればいいや」と思われる方もいらっしゃいますが、シェービング剤は「毛を柔らかくする」「毛を剃りやすくする」という面を考慮して作られていますので、オススメですね。その上で、特性が異なる3タイプの中からご自身に合ったタイプのシェービング剤を選ばれると良いと思います。
旧ラインナップを、廃盤にしない理由とは?
ーーあと気になるのが、シェーバーの商品展開の多さです。例えばスーパーに行って「そういえば、シェーバーの刃を切らしてるな」と思って、替え刃だけ買ってきても、肝心のホルダーに合わないこともよくあります。
中町 そういったお声もたまにお聞きします。弊社の商品で言うと、一番の主流が全て5枚刃仕様のハイドロシリーズ、そして次がクアトロシリーズです。また、いわゆるレガシーシリーズのように呼ばれている商品もありますし、2枚刃の商品、1枚刃のインジェクションタイプの商品もあります。それぞれタイプが異なりますので、「シックだから替え刃も全部同じ」ということにはなりません。そこは我々もこれまで以上にわかりやすく表示しなければいけないと思っています。
ーーでも、クラシックなタイプも生産され続けるのは何故ですか? いわゆるメインスペックが優れていて、著しい価格差もないのであれば、旧タイプは廃盤になってもしょうがないと思うのですが。
中町 これはシェーバー特有の話になります。長きに渡って弊社商品を使っていただいている方の中には「性能が優れた新しいシェーバーではなく、ずっとこれしか使いたくない」と、オーソドックスなタイプを好まれる方もいらっしゃいます。
また、「ヒゲ剃り」という行為自体に、「自分の時間」を見出して、あえてビンテージ感のあるシェーバーを使われる方もいらっしゃいます。こういったお声を受け、弊社では単に「剃りやすさ」を追求するだけでなく、古くから使ってくださっているユーザーさまの声も大切にしたいと考え、いわゆるレガシーシリーズも残しているんです。
また、4枚刃、5枚刃の高機能カミソリには、本当に一部の方にしか作ることができない日本の伝統技術でもある、安来鋼(やすきはがね)という物を使用しています。これは日本刀にも使われた貴重な素材です。弊社商品を使われたことがない方は、ぜひこれらの剃り味を試していただきたいです。
聞けば、シックの1枚刃のシェーバー第1号が発売されたのが今から98年前の1921年。日本に入って来たのは今から56年前の1963年だそうです。長きにわたって開発に取り組んできたシック商品には、洗練された技術と、ひげ剃りにまつわるノウハウが存分に詰まっているようです。是非今回の「正しいヒゲの剃り方」を、シックのシェーバーで試してみてください!
撮影/我妻慶一