就職や転職にともなって一人暮らしなど新生活を始める際、単身や少人数世帯だからと安くてコンパクトな家具や家電を“とりあえず”買って、間に合わせようとしていませんか?
一つひとつは多少値が張っても“一生もの”になるような、丈夫で飽きのこないアイテムを選べば、頻繁に買い替えない分、お得という見方もできます。そして、確実にエコ。これから家具や家電を買うなら、家族が増えてライフステージが変わっても、長く愛用できるものを選んでみませんか。
今回は、女性誌やライフスタイル誌のスタイリングをはじめ、広告写真の空間演出なども手がけているインテリアスタイリストの大谷優依さんに、新生活のはじまりにこそ選びたい、上質なアイテムをセレクトしていただきました。
ルール1. 大きなものから選んでいくとまとまりやすい
家具を揃えるとき、何から選んだらいいかわからない! という場合は、大きな面積を占めるものから選ぶと、失敗しなくなるそう。
「たとえばリビングは、ソファを置くならソファから選ぶと、そこから全体をまとめやすくなると思います。ソファが決まったら、それに合わせてラグやカーテンなど、部屋を大きく占めるものを検討していきます。また、一つひとつは単独で好きなものでも、全体のテイストや方向性がブレてしまうとゴチャゴチャしたイメージになってしまうので、こんな部屋にしたい、というイメージを定めておくと、うまくいくはずです。
ピンタレストやインスタグラム、雑誌などで、好きだなと思うインテリアのを見つけておくのがいいと思います。いくつか集まってくると、モノトーンにウッドが入った感じが好きなのかな、とか、アイアンが入ってるのがいいな、なども、自分の好きなテイストが見えてくると思いますよ」(インテリアスタイリスト・大谷優依さん、以下同)
ルール2. 最初から全部揃えようとしなくていい
新生活をはじめるタイミングですから、初めからすべてを揃えてスタートしたい、と思うかもしれません。でも、多少不便な期間があっても、本当に好きで欲しいと思えるものをじっくり揃えた方が、後悔しない買い物ができるのです。
「ちょっと予算オーバーでも、欲しいと思ったものを購入することをお勧めしたいですね。インテリアは毎日目に入るものですから、『やっぱりあれを買っておけばよかった』と思いながら生活するのはさみしいですし、がんばって買ったものは、やっぱり大切に使うんですよね。最初から揃えられなくても、ひとつずつ整えていけばいいんです。選ぶのはどんなものでもいいのですが、なんかこの丸い感じが好きだから、とか、憧れているあの人が使っているから、とか、そういう思い入れがよりあなたらしい、個性的な空間を作ってくれると思いますよ」
ルール3. 使うほど味が出るテーブルとチェアにお金をかける
どんな家具も上質なもので揃えたいけれど、やっぱりお値段は気になるところ。大谷さん、あれこれとお金をかけなくても、上手に買い揃えられるコツを教えてください。
「お金をかけてもいいと思うものは、テーブルとチェアです。“名作”といわれるものは使えば使うほど味が出て、たとえ途中で飽きてしまっても、ほかに買い手がつくことがありますから廃棄せずに済みます。とくにソファやチェアは、カバーを張り替えると印象がぐっと変わるので、汚れや飽きを気にせず長く使っていけるものです。
逆に、あまりブランドや値段にこだわらなくてもいいかなと思うものは、ベッドやファブリック類ですね。ベッドは人に譲るのが難しいものですし、ラグやカーテン、タオルなどの布ものは、どうしても汚れてしまうので、触り心地に納得できればそれが何より。安いからといって質が悪いわけではないのです。使い捨てになってしまうような消耗品、また収納グッズは、同じデザインや形のものを複数揃えた方がきれいに整うので、揃えやすい価格のものだといいですよね」
次のページではいよいよ、長く愛用できる上質なアイテムを具体的に紹介していきます。
人気インテリアスタイリストがセレクトしたイイもの
それでは具体的に、大谷さんがおすすめするアイテムを見ていきましょう。引っ越しや転勤、結婚、出産など、ライフステージやそれにともなう生活環境が変わっても、長く持ち続けていられる家具や家電をセレクトしていただきました。
1.家族の人数や部屋のレイアウトに柔軟なソファ
graf「Day Bed Sof」M
20万7000円+税〜
「アームのないシンプルなソファは、部屋のレイアウトが変わっても置きやすい形。たとえば誰かと暮らすなど生活に変化があったとしても、隣にサイドテーブルをつけたり、向かい側に同じかたちのベンチを置いたり、もうひとつ同じものを買ってカウチのように使ったりと、変化に合わせて使い方を変えられるソファです」(インテリアスタイリスト・大谷優依さん、以下同)
2.折りたたみ式でスペースを上手に使えるローテーブル
FRITZ HANSEN「トレイテーブル」
6万4000円+税
「ひとり暮らしの空間では、あまり大きなものを置けないことも多く、折りたためる家具が便利。私はひとり暮らしのとき、たためる椅子やスタッキングできる椅子を使っていました。トレイテーブルは天面が外れるので、ソファやベッドの上にも持っていけますし、ダイニングの隣に置いて、DMや手紙などの一時置き場にしたり、ベッドサイドにティッシュやボディクリームなどを置く場所としてもいいですよね」
3.重ねたり並べたり積んだり、アレンジ自在の箱型シェルフ
greeniche「FDBモブラー Book Case」
2万6000円+税(2020年4月1日以降2万8000円+税に価格改定)
「チェストやタンス、本棚などは場所を取り、その用途以外での使い道がないので、どんなものでも入れられるこの形がおすすめ。雑貨や本などを入れるなら単体で、重ねて組み合わせれば、食器や洋服なども入れられるので、この先引っ越したりモノが増えたりしても、ずっと収納家具として使い続けられます」
4.どんな家具とも合わせやすい自然素材のラグ
無印良品「ジュート混ラグ/生成」(200×200cm)
2万7182円+税
「キリムやペルシャなど、中東の敷物は華やかさと床座文化から生まれたものですが、日本人には、ジュートのような自然素材からできたラグが落ち着くのでおすすめです。このような風合いのものは、広い面積でも他の家具とも合わせやすく、しっかりしているので長持ちしますよ。ジュートは踏むとしっかりしていて、夏らしい感触がします」
5.どの部品も交換修理可能な、環境に配慮したオーディオ
ネイビーズ「TRANSPARENT SPEAKER」
6万4800円+税〜
「オーディオや電子機器は、インテリアのアクセントにもなる、ワクワクするデザインのものを選ぶと楽しいですよ。こちらのオーディオは、どの部品も新しく交換することができ、アップグレードや修理が可能で、長く使い続けることができるよう作られています。“完結したデザイン”はとても美しくて、見るたびにうれしくなるようなビジュアルです」
6.スタイリッシュな“見せたい”家電
バルミューダ「バルミューダ ザ・ポット」
1万1000円+税(ブラック・ホワイト)1万5900円+税(クローム)
バルミューダ「バルミューダ ザ・レンジ」
4万3500円+税(ブラック・ホワイト)/ 5万4500円+税(ステンレス)
「『家電は隠すもの』というイメージを一新したバルミューダ。あえて見せたいアイテムを置くことで、ごちゃごちゃしがちなキッチンがスマートに見えますよ。レンジはトースターよりやや大きいのですが、オーブンにもなり、調理も十分楽しめます。ケトルは、あると朝のコーヒーも手早く淹れられておすすめです」
家電や家具は、もしかしたら量販店で一気に揃えてしまうのが楽なのかもしれません。でも、こうして一つひとつ丁寧に、自分が好きだと思えるものを選んでいくと、その品々に囲まれた生活まで愛おしいものになっていくはず。新しくスタートする自分のために、じっくり選んでみてはいかがでしょうか。
【プロフィール】
インテリアスタイリスト / 大谷優依
多摩美術大学環境デザイン学科卒業。雑誌などのエディトリアルデザイナーを経て、インテリアスタイリストとして独立。現在は、ライフスタイル雑誌をはじめとした女性誌などで、雑貨やインテリアの紹介、空間イメージのスタイリングを手がけている。その他、企業カタログや広告、CMのインテリア装飾など、さまざまな空間演出で活動している。
※写真はいずれもイメージです。大谷優依さんがスタイリングしたものではありません。