湿度も気温も高いシーズンは、キッチンや浴室などの“水回り”に、よりいっそうカビが生えやすくなります。目に見えていなくても、カビの胞子は空気中を浮遊しているので、2週間に1度くらいのペースで、塩素系カビ取り剤を使った掃除をするのがオススメです。長雨で出かけるのがおっくうに感じる日こそ、掃除のチャンス! 自宅にいる時間を有効に使って、本腰入れて、カビ対策をしませんか?
今回はキッチンのシンク周り、トイレ、洗面台、浴室について、カビに効く水回り掃除術を、家事代行マッチングサービス「タスカジ」で掃除のプロとして活躍している、ミホさんに教えていただきます。
「カビの発生や再発を防ぐには、汚れを落としてしっかりと乾燥させ、最後は除菌で仕上げるという3ステップが効果的です。除菌には、アルコール消毒や消毒用エタノールが適していますが、いずれもまだ手に入りづらい状況ですよね。除菌スプレーが手に入らないときは、乾拭き(からぶき)を念入りにすることで、カビの発生を抑えましょう。水回りの乾拭き掃除は、運動にもなりますし、無心になってゴシゴシすれば、心身のリフレッシュ効果もバッチリです!」(タスカジ ・ミホさん、以下同)
カビ対策の3ステップ
1.汚れを落とす
2.しっかり乾燥させる
3.除菌剤や乾拭きで仕上げる
まずは敵を知ることが大事! カビの種類とおもな発生場所
カビは微生物の一種で、世界に約3万種が生息していると言われています。日本の住宅で見かけるのは、浴室に出やすい「黒カビ」、パンに生えやすい「赤カビ」や「青カビ」、畳の裏や木材に生えやすい「緑カビ」など、大きく分けて約6種類あります。
1.黒カビ
「空気中に最も多く浮遊しているポピュラーな種類です。浴室やキッチンシンクのスポンジラックなど、湿気のこもりやすい場所に発生します。お風呂のフタや窓枠などのゴムパッキンに生えてしまうと、黒ずんだ汚れは塩素系漂白剤でも落とせなくなってしまいます」
2.赤カビ
「野菜やごはん、パンなどの食品に生え、強い毒を持ちます。湿度が高い時期は、換気扇やエアコンのファンに繁殖します。浴室のシャンプーボトルの裏などに付きやすい赤いヌメリは赤カビではなく酵母菌ですが、カビと同じような対策が必要です」
3.緑カビ
「日本の木造住宅で目にすることの多い種類で、畳の裏や木材に生えやすく、引き出しに収納している服に付着したり、冬に箱買いしたみかんの中にも発生したりします。毒性があり、多く吸い込むと腹痛や下痢などの症状を引き起こします」
4.青カビ
「黒カビと同じくらい空気中に多く浮遊しています。ブルーチーズもこの仲間です。ブルーチーズは毒性が分解されていますが、常温保存のパンやフルーツなどに青カビが発生したときは、さまざまな雑菌も同時に繁殖していることが多いので食べられません」
5.白カビ
「フワフワと毛羽だった姿なので、ホコリとまちがえやすいカビ。木製の床や壁、革製品などを好みます。押し入れの奥や下駄箱の靴などに発生しやすいので、休日には、押し入れや玄関収納の扉を開放して、換気と除湿を心がけましょう」
6.黄カビ
「上の5種類は湿気の多い場所で繁殖するのに対し、こちらはやや乾燥した場所を好みます。古本のカビ臭はこの種類が多いですね。ほかにも、カメラのレンズやガラスの曇り、金属のサビなども黄カビの影響が疑われます」
近年の住宅は気密性の高い家が増えているので、一年中、カビが生えやすい環境です。「空中を浮遊しているカビの胞子は、居心地のいい場所を見つけて繁殖します。人間の目に見える前から繁殖は始まっているので、定期的にカビ対策を続ける必要があります」
カビを見つけたら拭き取る前に殺菌!
カビが発生しやすい4大条件は、温度、湿度、酸素、栄養です。気温が20~30℃で湿度が60%以上あり、ホコリや食べカス、皮脂や垢などの栄養分が揃えば、どんな場所でも繁殖します。
「カビを見つけたら、いきなり掃除機をかけたり、水拭きをしたりするのはNG。カビの胞子を撒き散らしてしまいます。まずは、塩素系カビ取り剤を拭きかけてしばらく置き、カビの根を破壊します。塩素系カビ取り剤は強力な洗剤なので、使用時にはマスクとゴム手袋、メガネを着用し、窓を開けて換気扇を回しながら作業してください。徹底的に掃除をするのは1週間に1度くらいのペースでOK。塩素系カビ取り剤は、日が経つと殺菌力が落ちやすいので、開封後はなるべく早めに、1年以内には使い切るようにしましょう」
写真左の排水口周りの黒ずんだ汚れが黒カビです。この程度であれば、塩素系カビ取り剤を振りかけて少しブラシでこすれば、簡単に落とせます。
「軽めのカビ汚れは、クエン酸を使っても落とせます。その場合も、クエン酸を振りかけてしばらく置き、カビの菌糸を浮かび上がらせてから、こすり洗いをしましょう。洗浄後は丁寧にから拭きをして乾燥させ、アルコール除菌スプレーをしておくと安心です」
プロが愛用している水回りカビ撃退アイテム11選
基本的に、どの種類のカビに対しても掃除方法は同じだとミホさんは話します。続いて、ミホさんが愛用している水回りのカビ掃除に必要な道具を見ていきましょう。
1. 塩素系カビ取り剤(強力カビハイター)
カビの菌糸を死滅させつつ、カビによる汚れを落とします。キッチン用の塩素系漂白剤も同じような効力が期待できます。
2. アルコール除菌スプレー
カビの栄養分となる汚れの付着を防ぎ、カビ胞子の着床を防ぎます。消毒用エタノールでも代用可能。新型コロナウイルス対策の影響で、除菌スプレーが手に入らない場合は、キッチンペーパーを使用した乾拭きでも可。
3. ゴム手袋
塩素系カビ取り剤による手荒れを予防します。
4. メガネ
塩素系カビ取り剤から目を保護するためにあると安心です。
5. マスク
塩素系カビ取り剤を吸い込まないために必要です。
6. スポンジ
カビ汚れが落ちにくい部分を磨きます。
7. 使い古した歯ブラシ
カビ汚れが付着した隙間を磨きます。歯ブラシの毛先は1/3ほどハサミで切っておくと、磨きやすくなります。
8. ウエットダスター
拭き掃除やアルコール除菌スプレーを広げるときに使います。100円ショップでも購入できます。
9. スクイージー
浴室の水切りに使います。
10. キッチンペーパー
塩素系カビ取り剤のつけ置きや水気の拭き取りに使います。
11. サーキュレーターや扇風機
掃除した場所の乾燥に使います。
基本的なカビの性質、準備すべきものを確認したら、いよいよ次のページでは、キッチン・トイレ・洗面台・バスルームと、水回りの場所別にカビ対策掃除のポイントを解説していただきましょう。
提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」
【キッチン】水切りがカギ! シンク周りは乾燥と除菌を念入りに
キッチンの水回りで最もカビの胞子が集まりやすいのは、三角コーナー、スポンジラック、排水口のゴミ受け、ふきんです。カビの発生した部分や周辺、カビの繁殖しやすいポイントに塩素系カビ取り剤を拭きかけます。
「キッチン用の塩素系漂白剤を使ってもOK。まずは、それらをまんべんなく拭きかけて5分ほど放置し、スポンジで磨きます。作業台とシンクの継ぎ目に生えた黒カビは、使い古した歯ブラシでこするとよく落ちます。ふきんにはカビの胞子が付着しやすいので、毎食後に漂白をするか、洗濯物へ。除菌をしていない湿ったふきんを、キッチンのシンクにかけるのはやめましょう」(タスカジ ・ミホさん、以下同)
排水口のゴミ受けはカビの好む湿気と栄養分がたまりやすい場所です。「2日に1回くらいのペースで、寝る前に塩素系カビ取り剤でケアをしておくと安心です。塩素系カビ取り剤をスプレーして5分ほど放置し、洗い流すだけでOK。朝まで除菌状態がキープできます」
塩素系カビ取り剤で掃除をした後は、水気をキッチンペーパーで拭き取り、サーキュレーターで全体を乾かします。「乾燥させたら、仕上げにアルコール除菌ができれば完璧です。梅雨はカビが生えやすい季節なので、カビが目に見えていなくても、週に1回くらいのペースでカビ対策の掃除が行えるといいですね」
ちなみに、水回りのほかにも注意したいのが、冷蔵庫内だと言います。「冷蔵庫の開閉時に入る空気や、食品に付着したカビの胞子が繁殖します。アルコール除菌スプレーや食品用アルコールスプレーがあればそれらをひと拭きしたキッチンペーパーやウエットダスターで、なければ、キッチンペーパーでこまめに冷蔵庫内を拭きましょう」
【トイレ】便器の裏側はカビの温床! ペーパーでつけ置き殺菌
便器のふち裏や便器と床の接合部は、カビの温床になりやすい場所です。
「トイレットペーパーに染み込ませた塩素系カビ取り剤を、カビの発生部分に“湿布”して殺菌します。トイレの便器は塩素系カビ取り剤を直接拭きかけるだけでは、洗剤が流れ落ちてしまいます。そのため、カビ菌を完全に死滅させるには、湿布する方法が効果的です。天井や壁、床などのカビには、アルコール除菌スプレーを染み込ませたウエットダスターを使って殺菌後、しっかりと水拭きをしましょう。カビ汚れが出ていないときも、予防掃除をしてくださいね」
塩素系カビ取り剤による湿布をして5分ほど放置したら、湿布したトイレットペーパーで汚れを拭き取ります。「湿布に使用したトイレットペーパーは、そのまま流すと詰まりの原因になりかねないので、ゴミ袋に入れて袋の口をしっかりと縛ってから捨てましょう。仕上げに手鏡などで便器のふち裏を確認しながら、残った汚れがあれば、使い古しの歯ブラシなどで磨いてください」
湿布用のペーパーは基本的にトイレへ流さないので、キッチンペーパーを使うのもおすすめです。「キッチンペーパーは厚みがあるので、湿布後の拭き掃除がしやすくなります。床が木材の場合など、塩素系カビとり剤が使えない素材の場合は、中性洗剤で汚れを落として水拭きをし、仕上げにキッチンペーパーで水気を丁寧に拭き取りましょう」
【洗面台】寝る前の蛇口ケアを習慣に! 徹底掃除日はすみずみまで乾拭きを
洗面台は、蛇口周りや水の溢れを防ぐ穴口部分の「オーバーフロー口(くち)」、そして排水口周辺がカビの温床となりやすいスポット。
「洗面台は浴室や洗濯機置き場が近くにあり、室温や湿度が高くなりやすい場所です。キッチンの排水口と同様に、梅雨の間は、2日に1回くらいのペースで、寝る前に塩素系カビ取り剤を拭きかけて5分ほど置き、水で洗い流しましょう」
水気をしっかりと拭き取るには、乾いたぞうきんよりもキッチンペーパーの方が、水分の吸収力が高いので効率よく作業が進みます。「カビの胞子は見えないので、どこに潜んでいるかわかりません。吸水性の高さもそうですが、カビ菌を撒き散らさない意味でも、使い捨てできるキッチンペーパーの利用をオススメします」
【バスルーム】お風呂のふたに要注意! ゴムパッキンの黒ズミは落ちにくい
浴室のドアや窓枠、お風呂のふたなどにあるゴムパッキン部分は黒カビが生えやすいので、こまめなケアが欠かせません。
「ゴム素材のものは、カビの根がゴムの奥深くまで入り込んでしまいます。塩素系カビ取り剤でカビ菌を死滅させても黒ズミは落ちないケースが多いので、カビ予防が必要です。日頃からカビが繁殖しないよう、お風呂のフタをこまめに陰干ししておきましょう」
入浴後には、スクイージーで浴室の水切りをすることもカビ予防に効果的です。「入浴中は皮脂やシャンプーなどの洗剤汚れが壁や床に飛び散っています。そのまま放置しておくと、カビを寄せ付けてしまいます。壁全体をシャワーの水で洗い流し、スクイージーをかけておきましょう。どうしても天井までのケアが難しいので、浴室全体のカビ除菌ができる『お風呂用のカビ取りくん煙剤』を定期的に使うことをオススメします」
最後に、今後のカビ掃除を劇的にラクにしてくれる、ミホさんおすすめのカビ掃除アイテムを紹介します。
提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」
家事の達人が選んだカビ掃除のキラーアイテム 3種
・湿布のできないトイレの水ぎわ掃除に! 入れるだけで黒ズミが落ちる
小林製薬「ブルーレット さぼったリング」
360円+税
「『さぼったリング』というネーミングに共感が持てますね。粉末の洗浄剤をトイレに流し入れるとモコモコと泡が出てきて、この泡で、水ぎわの黒ズミ・黄ばみを落としてくれます。便器のふち裏のように、ペーパーで湿布のできない場所を除菌してくれるのが魅力的。掃除をサボっていなくても、定期的に使うことで、黒ズミの付着を防げますよ」
・面倒な水切りなしでカビ抑制! モクモクのけむりで浴室を除菌
ライオン「ルックプラス おふろの防カビくん煙剤」
1個入り570円+税/3個入り1410円+税(ともに編集部調べ)
「黒カビの原因菌を『銀イオン(Ag)』の煙で除去して、カビの発生を防いでくれます。いくら掃除をしても、温度と湿度と栄養分が集まる浴室にはどうしてもカビが生育しやすくなります。私は定期的にこちらを使って、カビが発生しにくい環境を作っています。フローラル、せっけん、消臭ミントの3つの香りから気分に合わせて選べるのもいいですね」
・浴室の排水口掃除が苦手ならゴシゴシせずにカビを撃退!
花王「強力カビハイター 排水口スッキリ」
325円+税(編集部調べ)
「排水口を開けたらヌメリに悪臭、髪の毛に黒カビ……なんて状態からの掃除は、正直うんざりしますよね。そんなときに力を借りたいのがコレ。排水口に粉末洗剤を振りかけてぬるま湯を注ぐだけで大量の泡が発生。排水口のフタのすき間から溢れ出るほど広がり、すみずみまで洗浄してくれます。強力な洗剤なので、取り扱いには十分に注意してください」
目に見えなくても、カビの胞子は空気中を浮遊しています。ポツポツと出てきたカビの早期発見と除去掃除だけではなく、カビを寄せ付けないような除菌ケアを続けることで、部屋の空気も澄んできますよ。お気に入りの音楽でもかけて、水回りの拭き掃除に精を出してみませんか。
【プロフィール】
“タスカジ”ハウスキーパー / ミホ
「タスカジ」とは、家事を頼みたい人と多彩な家事スキルを活かして働くハウスキーパー(タスカジさん)をウェブ上でつなぐ、1時間1500円からの家事代行マッチングサービス。掃除や料理から、整理収納まで幅広いニーズに対応してくれる。
タスカジ歴3年のミホさんは、掃除や整理収納部門で活躍。明るいキャラクターと、各家庭に合わせた丁寧な掃除と心のこもった収納アドバイスが評判で、リピーターも多い。100円ショップのグッズや身近な道具を使った、主婦目線の簡単で続けられるテクニックが好評。小学生の男の子と中学生の女の子のママ。
タスカジ https://taskaji.jp/
提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」