ここ数年、ベーグルが人気を集めています。通常のパンには入っている卵やバター、牛乳を使われていないので、非常に低脂肪・低カロリーなパンなんですよね。それで都内にベーグル専門店も年々増えています。
そんなベーグルの本場はニューヨークとよく言われますが、発祥の地がポーランドであることは意外と知られていません。その昔、アメリカに移住したポーランド系ユダヤ人がベーグルを広めたのが有名になったきっかけだそうです。
ポーランドではベーグルを「オブヴァジャネック」と呼び、最近ではご当地グルメとして旅行者にも知られるようになりました。本稿ではポーランド国民が愛する元祖ベーグル、オブヴァジャネックの興味深い話を4つご紹介しましょう。
【その1】ベーグルは14世紀ごろからポーランドで食べ始められた
14世紀ごろに書かれたポーランドの文献に「リング型のパン(オブヴァジャネック)」という言葉を見ることができます。中世のポーランドに移り住んだユダヤ人が作ったベーグル、オブヴァジャネックこそがベーグルの起源とされ、次第にポーランドで広く親しまれるようになりました。
ポーランドは14世紀から積極的にユダヤ人の移民を受け入れ、16~18世紀の間はヨーロッパ最大のユダヤ人コミュニティを持っていたと言われます。
ベーグルはそんなポーランドのユダヤ人文化の中で確実に定着しましたが、当初は白い小麦粉を使った食べ物はとても高価なものとされていました。しかし、19世紀になると家内工業として大量生産されるようになり、身近なパンとして知られるようになります。
【その2】元祖ベーグルは南ポーランドのクラクフでしか買えない
ポーランドに行けば元祖ベーグルを食べられるかというと、実は地域限定のためどこでも買えるというわけではありません。
オブヴァジャネックは南ポーランドのクラクフあるいはその近郊のみで生産されているため、もし他の街でオブヴァジャネックを見つけたとしても鮮度はやはり落ちたものになります。
クラクフでは数十メートル歩くごとにオブヴァジャネックを販売する移動型の小さな屋台が見られ、その数はなんと170~180。クラクフでは1日15万ものオブヴァジャネックが消費されており、すっかり市民権を得た存在です。
【その3】ベーグルの味は4種類で価格も45円からと超激安
オブヴァジャネックの味は塩、ゴマ、ケシの実、チーズの4種類が基本。どれもおいしいですが、最も売れているのはケシの実です。
どこのお店でも45円程度で売られており価格競争はありませんが、チーズだけは10円ほど高くなります。ちなみに筆者のおすすめは、そのチーズ。香ばしい匂いがさらなる食欲をそそります。
【その4】オブヴァジャネックは法律で保護されている
2010年10月、元祖ベーグルことオブヴァジャネックはヨーロッパ連合の法律によって保護されました。またクラクフ市の条例により、基本的にはクラクフ中心部でのみ販売が許可されています。
クラクフで売られるオブヴァジャネックは正式にはオブヴァジャネック・クラコフスキ(クラクフ式オブヴァジャネック)と呼ばれ、そう名乗るためにはいくつかの条件があります。
ひとつめにクラクフやその近郊で作られていること、ふたつめに手作りであることが必須。もちろん、オリジナルレシピに沿って作られたものでなければなりません。それ以前は機械で大量生産することもあったため、この保護の決定はクラクフのパン職人の間で激しい議論を生みました。
日本でベーグルという名前が定着する前までは、ユダヤパンとも呼ばれていたベーグル。しかし、ベーグルはユダヤ人だけのパンではなく多くのポーランド人、そして世界中の人々に愛されてきた人気の食べ物です。
低カロリーで腹持ちがよい割にずっしりと重く、もっちりした歯ごたえはベーグルならでは。もしポーランドに旅行する機会があれば、ぜひ本場のオブヴァジャネックをお試しください!