家電
調理家電
2017/3/30 20:16

30年前の初代ホームベーカリーを入手! 発売時の価格は? 家電ライターが「まさか…」と驚く機能とは?

パン屋さんから漂ってくる焼きたてパンの香りを嗅ぐと、幸せな気持ちになる、という人も多いのではないでしょうか。パン好きの筆者としても、いつかパン教室に通いたいという夢を持っていますが、工程を聞くと結構面倒くさそうで、「習ったとしても、ちゃんと自宅でも作るかしら」と二の足を踏んでいます。

 

ホームベーカリー発祥の地は意外にも日本だった!

20170323-s5-(9)

まさにそんな人のためにあるのが、ホームベーカリーですよね。そう考えると、最初にホームベーカリーを考えた人って本当にスゴい! 何しろ材料を入れてスイッチを入れるだけで、こねから発酵、焼きまで、自動でやってくれるわけですから。夜にタイマー予約をしておき、パンが焼ける香りで目覚める朝は、まさに至福のひとときです。

 

さて、「自宅で焼きたてパン」という夢を、簡単にかなえてくれるホームベーカリーですが、こちらが発明されたのは、どこの国か、みなさんはご存じでしょうか。アメリカ? イギリス? と欧米を想像している方もいるかもしれませんが、意外にも発祥は日本。ちょうど30年前の1987年、ナショナル(現パナソニック)が初代ホームベーカリー「SD-BT2」を発売したのが始まりといわれています(※)。

※同時期に船井電機もホームベーカリーを発売

 

SD-BT2は、「炊飯器以来の発明です。」のコピーで大ヒット。ホームベーカリー市場全体では、年間総出荷数約76万台を記録したといいますから、やはり多くの人が家でパンを焼いてみたいという思いを抱いていたのでしょう。ちなみに、当時の価格は3万6000円でした。

20170329-s0-1

 

初代のホームベーカリーはイースト自動投入が可能だった!

さて、みなさんは、初代ホームベーカリーがどんな性能だったのか、知りたいとは思いませんか? 今回、実際にパンを作ることはできませんが、運よく初代ホームベーカリー「SD-BT2」を借りることができたので、その画像とともに紹介していきましょう!

 

以下が初代「SD-BT2」の外観。現パナソニックのホームベーカリーといえば、縦長でスリムなイメージですが、発売当初は横長だったようですね。動力は、回転の速度を変えられる現行のインバーターモーターとは違い、回転速度が一定の誘導モーターを使用。メニュー数は食パンとパン生地の2通りしかなかったようです。また、焼きあがったパンはいまの機種と違い、皮がぶ厚く焼きあがる傾向にあったそうです。

↑正面左上には「National」(ナショナル=パナソニックの家電部門の旧称)のロゴが。これを見ただけで歴史を感じてしまいます。30年前といえば、筆者もまだ小学生……
↑正面左上には「National」(ナショナル=パナソニックの家電部門の旧称)のロゴが。これを見ただけで歴史を感じてしまいます。サイズはW350×H325×D240mmで、重さは7.7kg

 

ここで驚いたのが、初代からすでに「イースト自動投入」機能が取り入れられていたこと! 多くのホームベーカリーは、パンケースの中にすべての材料を入れ、最後に水に濡れないように気を付けながらイースト菌をそっと乗せる、という作業が必要です。しかしこの手法だと、生地を混ぜ始めてイースト菌が水に触れた瞬間から発酵が始まるため、気温によっては発酵しすぎたりして焼き上がりにムラが出てしまいます。

 

そこで同社は、生地をしっかり練ったあとで、センサーで検知した室温に応じた絶妙なタイミングでイースト菌を自動投入する「中麺法」を採用。これにより、一年を通じて安定してふっくらしたパンが焼けるようになったといいます。

 

確かに筆者も、パナソニックのホームベーカリーの失敗が少ないのは、イースト自動投入機能の貢献が大きい、という印象を持っていますが、まさかこの機能が初代から備わっていたとは……。その点だけを見ても、初号機を世に出すまでに、いかに多くの研究を重ねられたか、うかがい知ることができます。

↑最初にここにイースト菌を入れておけば、適切なタイミングで庫内に落ちる仕組み
↑最初にここにイースト菌を入れておけば、適切なタイミングで庫内に落ちる仕組み

 

↑庫内にセットされたパンケース。現在の機種と同様、底の部分に羽根をセットして使います
↑庫内にセットされたパンケース。現在の機種と同様、底の部分に羽根をセットして使います

 

なお、本機には最新モデルに搭載されている「レーズン・ナッツ容器」はなし。こちらは2003年発売の「SD-BT103」から搭載されています。これにより、タイマー予約でレーズンパンを焼くことが可能になりました。また、現行機種に搭載されていうる「もち」コースは2006年の「SD-BT153」から、「うどん・パスタ」コースは2005年のSD-BT113から搭載されています。2011年には、「具材粗混ぜ機能」を搭載し、アレンジバリエーションを拡大したほか、パンの中身がきめ細かい「パン・ド・ミ 」が焼けるようになるなど、着実に進化を続けて現在に至ります。

↑レーズン・ナッツ容器
↑業界初「レーズン・ナッツ容器」を搭載したSD-BT103

 

冬の時代を乗り越え2000年代から人気が爆発

 

さて、ホームベーカリーは30年前に初代が登場して以来、何度となく、ブームを迎えているのをご存じですか? ここでは簡単に、初代が発売されて以降、ホームベーカリーはどうなっていったのか、累計生産台数の推移を元に紹介していきましょう(下記グラフ参照)。実は、ホームベーカリーは1987年に大きく売れたものの、翌年の売上は大きく落ち込みました。その理由は、材料が入手しづらかったこと。専用の小麦粉が必要でしたが、十分な供給がなされなかったためです。

↑日本のホームベーカリーの累計生産台数の推移
↑日本のホームベーカリーの累計生産台数の推移

しかし、2000年頃から食に対する安全意識の向上、インターネットの普及に伴う材料入手のしやすさ、ブログ等でのアレンジレシピが共有できるようになったことなどから、再び市場が活性化。また、海外由来の高級ベーカリーが人気になり、パン食文化が進んだことも人気の要因と考えられます。筆者のなかで記憶に新しいのは、今から10年前の2007年ごろ。ホームベーカリーで作れるものが増えたこともあってか、雑誌では毎月のように特集が組まれ、“ホームベーカリーのあるおしゃれな暮らし”が主婦の憧れになりました。パナソニックが行った当時のアンケートで、「今後欲しい調理家電」のトップを飾ったことからも、その注目度の高さがうかがえます。

 

世界初、米からパンを作る機種が起爆剤に

そして、大きなトピックがあったのが、2010年。世界初、米からパンできる三洋電機のライスブレッドクッカーGOPAN「SPM-RB1000」の登場です。こちらは、もっともありふれた材料であるお米からパンが作れるという新しさが受け、1年で17万台を売り上げるヒット商品に。ホームベーカリーの普及に大きく貢献しました。現在、GOPANを開発した三洋電機はパナソニックグループに吸収されてしまいましたが、その技術は現行機種にも生かされています。ちなみに、最新モデル(SD-BMT1001)は、食パン、フランスパンをはじめ、パン・ド・ミ、米粉パンなど約20種類のパンが焼けるようになり、さらに、もちやうどん・パスタ、ケーキまで作れるまでに進化しました。

20170329-s5
ライスブレッドクッカーGOPAN「SPM-RB1000」

 

20170323-s5-(7)
↑最新機種のSD-BMT1001は、フタを開けると作ることができるメニューが確認できます。その数、何と36種類!

 

ここまで来たら、ホームベーカリーもブームではなく、もはや定番。すでに“一家に一台”なくてはならない時代が来ているのかもしれません。今後もホームベーカリーがどんな進化を遂げるのか、今から楽しみですね。