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2018/1/18 16:30

プロレスラーの「海外武者修行」って何なの? 「凱旋帰国」直後の話題のタッグSHO&YOH選手に聞いてみた!

新日本プロレスのイケメンタッグとして、急速に知名度を上げつつあるSHO選手とYOH選手。メキシコ、アメリカ遠征から凱旋帰国した2017年10月の両国国技館大会で、タッグチーム「ROPPONGI 3K」(ロッポンギスリーケー)として電撃デビューを果たし、初のIWGP Jr.タッグ王者に輝きました。残念ながら、2018年1月4日の東京ドーム大会では外国人タッグのヤング・バックスに敗れてベルトを手放したものの、これまでの戦いぶりは、今後の活躍を大いに期待させる内容。今回は、そんなSHO選手とYOH選手に下積み時代から海外遠征、凱旋帰国までのお話をうかがうことで、お二人が何を学び、何を目指しているかを明らかにしていきます!

 

PROFILE

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SHO(左)

1989年8月27日生まれ。愛媛県宇和島市出身。173㎝、93㎏。高校時代にレスリングを始め、徳山大学に進学。レスリングでは副主将を務め、全日本大学グレコローマン選手権で7位、全日本学生選手権グレコローマンスタイル3位、西日本学生選手権フリースタイル準優勝など、数々の成績を残す。2012年に新日本プロレスに入門を果たし、同年の11月に渡辺高章戦でデビュー。2016年1月、同期のYOHと共にメキシコCMLL、アメリカROHに遠征。凱旋帰国となった2017年10月の両国国技館大会で、ロッキー・ロメロ率いる「ROPPONGI 3K」として、YOHとタッグを組みIWGP Jr.タッグ王座を獲得。所属ユニットはCHAOS(ケイオス)。趣味は筋トレ、釣り、ゲーム、サバゲー。

SHO選手のツイッターはコチラ

 

YOH(右)

1988年6月25日生まれ。宮城県栗原市出身。171.5㎝、85㎏。両親の影響を受け、幼いころからプロレスに興味を抱き、中学1年生の頃からプロレスラーを志すようになる。高校、大学ではレスリング部に所属し、卒業後にプロレス学校を経て2012年の入門テストに合格。同年、渡辺高章戦で待望のデビューを果たす。2016年1月、同期のSHOと共にメキシコCMLLへ遠征。その後、アメリカへと渡りROHで活躍。2017年10月の日両国国技館大会で、ロッキー・ロメロ率いる「ROPPONGI 3K」として、SHOとタッグを組みIWGPJr.タッグ王座を奪取。所属ユニットはCHAOS(ケイオス)。趣味は音楽鑑賞。THE BLUE HEARTS、銀杏BOYZ、HUSKING BEEなどを愛するパンクな一面も持つ。

YOH選手のツイッターはコチラ

 

憧れの選手との出会いによってプロレスラーを目指す

――まずはお二人がプロレスラーを目指したきっかけを教えてください!

 

SHO 高校生の頃、レスリングに入部するとプロレス好きの後輩がいて、その影響を受けたのが始まりでした。大学に入るとプロレスラーになるか、教員免許を取るか悩んでいたのですが……。棚橋弘至選手のサイン会で「プロレスラーを目指してます」とお話をすると、その当時に憧れていた棚橋選手から「待ってるよ!」と声を掛けてもらって。その瞬間、将来の目標は「プロレスラー」に決まりました(笑)。

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↑SHO選手

 

YOH 僕は父親がプロレスの大ファンで、子どものころからプロレスが身近にあったことがきっかけですね。土曜の深夜に放送していた「ワールドプロレスリング」を毎週録画して、日曜の朝から一緒に観ていたのをいまでも覚えています。当時はまだ幼稚園の頃で「闘魂三銃士」が全盛の時代。リングで大活躍する武藤(敬司)選手を見て「カッコイイなぁ」と思っていました。そして、中学一年生のときに「プロレスのリングに立ってみたい。きっと気持ちいいんだろうなぁ」と考えるようになり、本気でプロレスラーを目指すようになりました。いま思えば父親の「英才教育」ですね(笑)。でも、プロレス好きの父親に「プロレスラーになる」と言ったら本気で驚いていました。そのとき、「お前本気か? なれるものならなってみろ!」と笑われて、闘志に火がついた形です。

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↑YOH選手

 

下積み時代は相撲の世界に通じる厳しさがある

――新日本プロレスに入門し、練習生として過ごしたお二人ですが、下積み時代にはどんなことをしたのでしょうか?

 

YOH 入門した練習生は必ず専用の寮に入り、寮生活が義務付けられます。基本的には寮内の仕事をしつつ午前中に練習をして、午後は夜中の11時ごろまで雑用ですね。

 

SHO 練習や雑用よりも厳しかったのは、デビューするまでの寮生活が「外出禁止」だったこと。

 

YOH 僕たちはデビューまでに9か月掛かりましたから、かなり辛かった(笑)。デビューしてからも食事の当番や先輩レスラーの付き人、会場でのセコンド業務と、遊んでいるヒマはありませんでした。

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SHO 新日本プロレスの基本は、相撲のしきたりがベースになっています。力道山さんの時代から相撲の習慣が受け継がれていて、「新弟子」と呼ばれる下積み時代は相撲の世界と共通した厳しさがありますね。ホント、何度も辞めようと思いました(笑)。

 

「海外遠征」とは、一人前になるための卒業試験のようなもの

――プロレスでは、「海外遠征(または海外武者修行)ののち、凱旋帰国」といったフレーズをよく耳にするのですが、これはどういうものなのでしょうか?

 

SHO 新日本プロレスではヤングライオン(新日本プロレスの若手選手のこと)を経験したら、海外に送り出されるのが代々のならわしになっています。海外遠征は、一人前になるための卒業試験みたいなもの。俺たちも若手としての区切りを着けるため、必死になって海外遠征を目指しました。

 

YOH 海外に行くことは、自分の将来を探すための貴重な経験ですからね。でも当時、僕たちの下の後輩が入門してこなかったので、寮を出るまでの修業期間は約4年もかかりました。

 

――えっ、下が入ってこないと、寮を出られないわけですか?

 

SHO そうなんです。いや、長かった~(笑)。

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――新日本プロレスと関係の深いメキシコのプロレス団体「CMLL」とアメリカの団体「ROH」へと武者修行に行ったとのことですが、海外で一緒に生活するなかで、ケンカすることはなかったのですか?

 

YOH 僕たちは入門テストも入門日もまったく同じ同期。練習生時代から常に一緒にいたこともあってか、ケンカをしたことは一度もありませんでした。

 

SHO YOHさんの方が1歳年上と言うこともあり、上手にリードしてくれる感じですね。いまでも会話は敬語90%、タメ口10%(笑)。

 

YOH 敬語は使っても、気は遣ってくれないけどね……(笑)。でも、同じ歳だったら、ここまでうまく行ってなかったと思いますよ。

 

SHO このベストな関係は、俺が年上でもダメだったでしょうね。

 

メキシコでは試合のために往復14時間かけたことも

――ちなみに、武者修行には自分のスタイルを決めてから海外に向かうとうかがったのですが、お二人もスタイルを決めていたのでしょうか?

 

YOH 常に同期として行動をともにしていたので、スタイルとしては「タッグ」ということだけは決めていました。

 

SHO 海外には数多くのタッグチームがいるので、試合を重ねることで学ぶことも多いのでは? と漠然と考えていたんです。

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↑連携技を決めるYOH選手とSHO選手 ©新日本プロレス

 

――メキシコのCMLLとアメリカのROHで試合をしていたお二人ですが、その違いを教えてください。

 

SHO メキシコは「ルチャリブレ」と呼ばれる、空中技を多用する独特のメキシカンプロレスがメインになるのですが、プロレスが文化として定着しているので、練習環境としてはかなり充実していました。

 

YOH メキシコは自分たちには合っていましたね。CMLLは常設の会場を5つくらい持っていて、そこをサーキットするような感じでした。

 

SHO 会場を回る日程が決まっていて、たとえば、火曜日はバスで7時間くらいかけて会場に行き、試合をして、そのまま7時間かけて帰ってくるのがお決まりでした。

 

――かなりハードなスケジュールですね。辛くはなかったのですか?

 

YOH バスの中ではいつも爆睡でしたから(笑)。

 

SHO 移動の時には地元のルチャドール(ルチャリブレの男性プロレスラー)と話をするのも楽しかった。今となっては良い思い出ですね。

 

メキシコでの練習方法は「ぶっつけ本番」

――では、アメリカのROHはどうでしたか?

 

YOH ROHでは平均して月に2~3試合くらいしか出場できなかったのですが、ヤング・バックス、モーターシティ・マシンガンズなどのトップクラスのタッグが多かったので、試合自体は楽しかった。コテコテのアメリカンプロレスも僕たちにとっては良い勉強になりました。

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↑現在は日本で活躍するヤング・バックスと対戦するYOH選手(左)とSHO選手(右) ©新日本プロレス

 

SHO ただ、ROHでは試合数が少なかったので、休みの日はメキシコに練習するために通うことも多かったです。ROHでも、もっと試合がしたかったですね……。

 

――練習では、どんなことをしていたんですか?

 

YOH アメリカでは筋トレなどが中心だったのですが、メキシコでは、現役のプロレスラーに技を習っていました。教え方も独特で、高いところからいきなり「飛んでみろ」と言われる(笑)。それは怖いですよ。でも、やってみると何とかなるものです。ぶっつけ本番だと、集中力も高まりますしね。

 

――CMLLのルチャリブレとROHのアメリカンプロレスでは、どちらの経験が役に立っていますか?

 

SHO メキシコとアメリカのプロレスはまったく別物なので、どちらも経験して良かったと思います。

 

YOH 僕たちのようにタッグで戦うプロレスラーにとっては、対戦相手に合わせてスタイルを使い分けることが大きな武器になりますからね。引き出しを増やすことで、試合の流れを変えることができる。その経験値を増やしてくれた海外遠征は、大きなターニングポイントだったことは間違いありません。

 

――ちなみに、メキシコとアメリカでは、どちらが肌に合いましたか?

 

SHO 完全にメキシコです。とにかく人が優しくて陽気な性格ですから、ホームシックになることはありませんでした。

 

YOH でも、メキシコ人って、平気でウソをつくんですよ(笑)! 自分から食事に誘ったのに約束の場所に来ないとか。道を聞くと、その場所を知らないのに「向こうだ」って指をさすんです。でも、そのウソには悪意がないんですね。楽しませようとか、困っているヤツを助けようと思ってウソが出ちゃうらしい(笑)。

 

――それも困ったものですね(笑)。

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SHO選手は「技術」、YOH選手は「華やかさ」を追求

――メキシコとアメリカの海外武者修行中で、自分たちのスタイルが固まってきたのはいつごろですか?

 

YOH 正直な話、タッグとしてのスタイルが見えてきたのが2017年の6月くらい。メキシコやアメリカで試合を続けながら、迷走し続けていたというのが本音です。

 

SHO YOHさんと話し合って、タッグパートナーとして同じ目標を持ちながらも、それぞれが違った色を出すことが俺たちのスタイルになるんじゃないかと……。俺の場合はパワー重視で戦うスタイルを目指していたのですが、それだけでは他の選手と差別化はできません。MMA(総合格闘技)でも戦えるようなテクニックを身に着けるため、アメリカ修行時代には、柔術の達人でもあるダニエル・グレイシーに教えを請いました。

 

YOH 僕の場合は、SHOが技術的な部分を追い求めていることを知っていたので、それとは対照的に、「華やかさ」を突き詰めて行こうと決めました。

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――具体的には、どんなスタイルなのですか?

 

YOH 僕の憧れは今でも闘魂三銃士時代の武藤選手。ですから自分のプロレス哲学の中には蹴りや関節技は入っていません。僕が求めるのは、ひとつひとつの動きだったり、技と技の間(ま)の取り方だったり、所作の華麗さでお客さんを盛り上げて行きたい。最近のプロレスは技を数多く繰り出すことが主流になっていますが、もっと「技」を大切に使うべきだと考えています。古典的な技であっても、もっと華麗にアレンジできれば会場を盛り上げることができると信じています。SHOとは真逆の部分に磨きを掛けることが、僕が求めるスタイル。目指すべき道は、子どものころに憧れた「プロレスの原点」の違いなのかもしれませんね。

 

SHO その個性の違いがリング上でシンクロする。俺は、それがタッグとしての強みになると信じています。

 

タッグならではの魅力を伝えていきたい

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↑カニのポーズ(後述)をとるSHO選手とYOH選手

 

――では、今後の目標を教えてください!

 

YOH 今の新日本ではオカダ・カズチカ選手を頂点にしたヘビー級の戦いが注目を集めていますが、ボクたちが戦う「ジュニアヘビー級」という階級をもっと盛り上げていきたい。観戦しているファンのみなさんと同じような身長の選手たちが戦う姿に共感してもらえたら。

 

SHO でも、そこにはプロレスラーとしての憧れを感じてもらえるハイレベルな戦いは欠かせません。実際、学生のころには「体の小さいお前がプロレスラーになれるワケがない」って言われていましたから。そんな俺がプロレスラーになれたのだから、本気でこの世界を目指している人たちに勇気を与えられたらなと思います。

 

YOH 僕の目標は、ジュニアヘビー級の試合が大会のメインを飾ること。新日本のマットに新しい伝説を作り上げることが僕たち「ROPPONGI 3K」に課せられた使命だと考えています。僕たちも所属するユニット「CHAOS」(ケイオス)には、邪道選手、外道選手のようなお手本にするべきタッグもいるので、まずはそこを目指すことが必要ですね。

 

SHO タッグを組んで戦う格闘技はプロレスだけ。その面白さ、迫力に興奮してもらえたら最高ですね。格闘技の新しい形として俺たちROPPONGI 3Kが盛り上げていきます!

 

――最後に、プロレスファンだけでなく、プロレスに興味を持ち始めた人たちに対してROPPONGI 3Kの魅力と見どころを教えてください。

 

SHO ROPPONGI 3Kならではのコンビネーションと技のキレを見て欲しい。展開の早さと激しい攻防に、きっと興奮してもらえるはずです。テレビでも楽しんでもらえると思いますが、実際に会場に足を運んでもらえればうれしいですね。

 

YOH パワー担当のSHOと、頭脳派の僕のコンビネーションは必見です(笑)。特に高い位置から相手の顔をマットに叩きつける必殺技「3K」(スリーケー)に注目してください。コンビで繰り出す技はシンプルですが、見応えがあると思います。

 

SHO 決め技の前に行う「カニのポーズ」も一緒にチェックしてほしいですね。このポーズが必殺技の合図。このときは、カニのように横にしか歩けなくなります(笑)。

 

YOH とにかく一度、会場で観戦して欲しいです。僕たちの試合を生で見てシビれてください!

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――今回のインタビューで目立ったのは、パワフルでお茶目なSHO選手、知的な印象のYOH選手の絶妙なコンビネーション。試合だけでなく、日常的に深い信頼関係が築かれていることが強く伝わってきました。このチームワークの良さを活かして、これからも新日本プロレスで大暴れしてくれることでしょう。ジュニアヘビー級タッグ王座のチャンピオンベルトを奪い返す日は、そう遠くはなさそうです。

 

【SHO&YOH選手が出場する大会情報はコチラ】

NJPW PRESENTS CMLL FANTASTICA MANIA 2018

2018年1月19日(金) OPEN 17:30/START 18:30
2018年1月21日(土) OPEN 17:30/START 18:30
2018年1月22日(月) OPEN 17:30/START 18:30

東京・後楽園ホール
https://www.tokyo-dome.co.jp/hall/

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