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2025/1/28 19:00

これがマイチェンってウソだろ…?「BEVらしい走りを目指した」三菱の新型アウトランダー極上の乗り味を試乗レポート

PHEV(後述)の先駆けともいえる三菱のSUV「アウトランダー」が昨年10月、駆動用バッテリーを刷新するなどのビッグマイナーチェンジを実施しました。外観からはほとんど従来モデルとの違いがわからないほどですが、走りを含めたクルマとしての進化はそれを超える大きなものとなっていました。

◾️今回紹介するクルマ

三菱/アウトランダーPHEV

※試乗グレード:P Executive Package(7人乗り)

価格:526万3500円〜659万4500円(税込)

 

PHEVとは何か?

PHEVとは「プラグインハイブリッド車」のことです。日本で主流となっているハイブリッド車との違いは、この“プラグイン”によりコンセントから充電ができる機能を備えたことにあります。つまりPHEVは、任意に追加充電できるハイブリッド車ということになります。

 

また、ハイブリッド車(HEV)はエンジンによってのみ充電しますが、搭載するバッテリーの容量が小さいこともあって、モーターはエンジンのアシストが中心。ストロングハイブリッド車であってもモーターで走れる時間はあまり長くありません。PHEVではバッテリーを大容量化したことで、モーターで走る時間が長く、バッテリー残量がある時はBEV(電気自動車)と同等の走りを体験できるのもメリットとなります。

 

これにより、自宅でも充電が可能となり、この場合はガソリンよりもエネルギーコストを安くすることができるのです。さらにモーターで走ることでBEVと同等の静かさで走れることもPHEVならではの大きな魅力といえるでしょう。

 

バッテリーを刷新してEV走行距離を大幅に延長。内装も質感アップ

アウトランダーは2012年に登場した2代目でこのPHEVにいち早く参入し、以来、PHEVの先駆者として地位を固めてきました。今回のビッグマイナーチェンジでは、PHEVとしての魅力に磨きをかけ、着実な進化を遂げたモデルとなりました。

↑外観はほとんど変わらないが、アルミホイールを新デザインに変更し、ターンシグナルランプをLED化した

 

メインとなる進化のポイントは駆動用バッテリーの刷新です。電池パックの作り直しを行うほど大がかりなもので、その容量は従来の20.0kWhから22.7kWhへと1割以上もアップ。これにより、EVモードでの航続距離は100kmオーバーとなり、これはおそらく国産PHEVの中では最長となるのではないかと思います。

 

そして、この容量アップに伴い床下構造の変更も実施されました。もちろん、一般的に言えば、マイナーチェンジでここまで行うことはありません。しかし、よりモーターで走行する領域を増やし、よりBEVらしい走りに近づけるという開発者の思いが、あえてここまで手を入れさせたというわけです。さらに、三菱自動車によれば「より多くの駆動トルクがタイヤへ伝わるようになり、その対応として駆動系の制御やサスペンションの味付けはすべてやり直した」と言います。まさにフルモデルチェンジ並みの刷新が実施されたのです。

↑ラゲッジスペースは5人乗車時でもゴルフバッグが4個、スーツケースが3個収納できる大容量。荷室長(セカンドシート折り畳み時)2040mm、荷室幅(最小)1070mm、荷室幅(最大)1300mm

 

一方で、従来モデルとの差をほとんど感じないのが外観です。高速走行中のフードのバタ付きを抑えるために、ボンネットフードをアルミからスチールに変更し、ターンシグナルランプとバックランプをLED化したということで、これは見た目ではわかりづらいところ。とはいえ、よく見ればグリルやバンパーのデザインも変更したことで前から見るとシャープさを増した印象を受けますし、アルミホイールも新デザインに変更されています。また、全高は5mm高くなったことでSUVらしさがより強調されたのは確かです。

↑リアビューでも大きな違いはないが、バックランプはLED化された。リアフォグは装備されていない

 

内装でも進化を遂げています。ダッシュボード中央にあるディスプレイは、12.3インチに大型化され、ここではApple CarPlayやAndroid Autoへの対応も可能。ルームミラーはフレームレスのデジタルミラーとなって先進性をアピールしています。快適性については前席にシートヒーターに加えてベンチレーション機能を装備しています。また、アルミペダルの採用もあり、全体として一段と質感が向上した印象を受けます。

 

モーターが活躍する領域が増えて、トルクフルでスムーズな加速を実現

さて、実際に走ってみましょう。スイッチをONにしてアクセルを踏むと、車体はほとんど音もなく前へと進み出しました。スタート地点から西湘バイパスまでの一般道でエンジンがかかることは一切なく、西湘バイパスの本線へ流入する際、アクセルを少し強めに踏んだところで初めてエンジンが動き出したのです。この加速は極めて力強く、アッという間に本線の流れに乗ることができました。

↑回頭性が素晴らしく良く、大柄なボディにもかかわらず取り回しの良さは特筆に値する

 

モーターは特性上、ゼロスタートからトルクをフルに出すことができます。つまり、このモーターでの領域が増えたことでその特性をフルに活かせるようになり、それがトルクフルでスムーズな本線への流入につながったのは間違いありません。

↑エンジンは直列4気筒2.4Lで、これに前85kW/後100kWのモーターを組み合わせている

 

西湘バイパスに入ってからも車内は極めて静か。時折、海側から吹いてくる強い風がボディを襲いましたが、それでもアウトランダーはびくともせずに快適に車体を走らせます。低速域で若干大きめに聞こえたジェネレータの音もほぼ聞こえなくなり、足腰のしっかりとしたサスペンションは、西湘バイパスの準高速域でも快適な乗り心地を提供してくれました。

 

市街地に入ってからは、この大柄で2t近い重量級のボディとは思えないフットワークの良さが光ります。車線変更はもちろんのこと、交差点での操舵フィールも良好で、ステアリングを操作する度に運転する楽しさを実感させてくれるのです。さらに狭い路地に入っても、ボディの見切りの良さがサイズ感を感じさせないスムーズな走行を可能にしてくれました。このあたりは、「パジェロ」などの大型SUVで培った、三菱ならではの経験が活かされているに違いありません。

 

ぜひ一度は聴いて欲しい、YAMAHAが作った渾身のサウンドシステム

そして、ビッグマイナーチェンジを受けたアウトランダーPHEVで見逃せないのが、YAMAHAサウンドシステムの搭載です。グレードによって、12スピーカー+デュアルアンプの「Dynamic Sound Yamaha Ultimate」(※「P Executive Package」に標準装備、「G」「P」はオプション)と、8スピーカー「Dynamic Sound Yamaha Premium」(※「M」「G」「P」は標準装備)の違いはあるものの、それぞれが純正オーディオとしてはハイレベルなサウンドを聴かせてくれたのです。

↑12スピーカー+デュアルアンプの「Dynamic Sound Yamaha Ultimate」

 

↑「Dynamic Sound Yamaha Ultimate」に組み合わされるサブウーファーはラゲッジスペース左側にある

 

もちろん、両者を聴き比べればUltimateに軍配が上がります。特に中低域の再現性が高く、女性ボーカルを再生した時はその声質に思わずウットリしてしまったほど。また、背後のベースの量感も豊かで、これはUltimateだけのサブウーファーの搭載が効果を発揮しているのだと思います。とはいえ、どちらもダッシュボード上にステージが展開される様子を見事なまでに再現しており、音楽を楽しむにはいずれも十分に満足がいくレベルでした。

↑8スピーカー「Dynamic Sound Yamaha Premium」

 

ただ、Ultimateには大きなアドバンテージがあります。それは、周囲の騒音を把握して、周波数帯に応じた補正機能を備えていること。ノイズキャンセルではないものの、その補正を加えていくと確かに細部の音が浮かび上がり、より聴きやすくなるのです。これをON/OFFすればその差は歴然。この操作がややわかりにくいのが残念でしたが、この効果は多くの人にぜひ体験してほしいと思いました。

↑「Dynamic Sound Yamaha Ultimate」を試聴中の筆者

 

SPEC【P Executive Package(7人乗り)】●全長×全幅×全高:4720×1860×1750mm●車両重量:2180kg●パワーユニット:2359cc直列4気筒DOHC 16バルブ●エンジン最高出力:98kW/5000rpm[モーター最高出力:前85kW/後100kW]●エンジン最大トルク:195Nm/4300rpm[モーター最大トルク:前255Nm/後195Nm]●WLTCモード燃費:ハイブリッド燃料消費率17.2km/L・交流電力量消費率227Wh/km●一充電消費電力量:23.22kWh/回

 

撮影/松川 忍

 

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