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2025/6/4 19:45

プロがひとつ選ぶなら?4タイプ出揃ったトヨタの16代目「クラウン」がもつ個性とチェックポイント

1995年に発表された初代クラウンから数えて、現行モデルのクラウンは16代目となります。2025年3月13日に発売したエステートによって、新型クラウンシリーズが出揃いました。ということで、今回はモータージャーナリストの岡本幸一郎さんにそれぞれの現行クラウンの特徴と、もし岡本さんが購入するならどのグレードなのか?について語っていただきました。

 

クラウンの歴史は“革新と挑戦”

“革新と挑戦”というキーワードのもと、クラウンは歴代ずっと、ユーザーに寄り添い、求められているものにいかに応えるかを考えて企画されてきた。従来とはガラリと変わった16代目クラウンも、その点は変わらず、さまざまなユーザーの多様なライフスタイルやライフステージに対応できるクラウンを目指して開発された。

↑2022年新型クラウン発表会のステージに立ったトヨタ豊田章男社長。

 

16代目はセダンをやめようというところからスタートしたが、結果として、やっぱりセダンもやろうということになり、さらにハッチバックモデルの「スポーツ」、SUVとセダンを融合させたモデルの「クロスオーバー」、SUVモデルの「エステート」が加わり、計4タイプもの個性がそろうことになったのは、すでに報じられているとおりだ。

↑「クラウン(セダン)」730万円(税込)〜。

 

↑「クラウン(スポーツ)」590万円(税込)〜。

 

↑「クラウン(クロスオーバー)」515万円(税込)〜。

 

↑「クラウン(エステート)」635万円(税込)〜。

 

パワートレーンは、トヨタの大定番である2.5リッターのシリーズパラレルハイブリッドと、4タイプそれぞれの個性にあわせてもうひとつ何か特色のあるものを組み合わせるという考え方から、クロスオーバーにはターボを、スポーツとエステートにはPHEVを用意。スポーツではモーターのパワーを使ってキビキビと俊敏に走れるように、エステートでは逆にロングドライブを余裕をもって快適に走れるように味付けしたという。

 

クラウンスポーツは、ショートホイールベース化と凝縮感のあるスタイルで纏められ、最上級クラスのモデルとしては珍しい、軽やかな躍動感のあるスポーティカジュアルなキャラが印象的だ。一方のセダンについては、公用車や法人のユーザーにも水素が使えるならと積極的に選んでもらえるようにと、ハイブリッドとともにFCEVが設定されている。

 

デザインについては巧みに共通化と差別化を図っている。4タイプ全車にトヨタのアイデンティティであるハンマーヘッドを用いているが、それぞれに相応しく差別化されていて、一堂に並べると意外と見た目の印象が違うことがわかる。

 

基本となるクロスオーバーでは黒の加飾を印象的に使い、セダンではアイラインのように上側の部分を強調してハンマーヘッドを表現しているところ、唯一スポーツではヘッドライトを二重にして間にハンマーヘッドをはさんでいる。エステートはグリルを特徴的なデザインとしているのも目を引く。

↑セダン。鋭さとワイド感を強調するハンマーヘッドと、縦基調のパターンを施した大型台形グリルの「アンダープライオリティ」の組み合わせにより、トヨタのフラッグシップとしての存在感を強調したフロントフェイス。

 

↑スポーツ。クロスオーバーから進化させたハンマーヘッドフェイスは、レンズ幅を薄くしたデイランプを黒色部内に集約し、よりシャープで精悍な表情を実現。

 

↑エステート。グリルをバンパーと一体化し、ボディと同色とすることでスタイリッシュな独自性のある意匠としたほか、上から下にメッシュパターンが変化するデザインで、洗練さを表現。

 

パッケージングもそれぞれまったく異なる。基本のクロスオーバーは、ややリフトアップした伸びやかなSUVスタイルとしているのに対し、スポーツではハッチバックを採用するとともに、反対にホイールベースとオーバーハングを短くしてグッと凝縮し、よりタイヤが四隅で踏ん張っているイメージを強調している。リアフェンダーの造形も印象的だ。ほかの3タイプが大柄なこともあり、スポーツぐらいの全長ならなんとか持て余さずに済むという人も少なくないだろう。

 

クラウンが持つ品格と機能性が同居した「大人のアクティブキャビン」を目指したという最後発のエステートは、ワゴンとSUVを融合させることで、4タイプの中でもダントツで高いユーティリティを実現している。

↑エステートの室内空間。

 

全長が5m近くあるワゴンボディのテールゲートを開けると広々とした荷室が出現し、さらにリアシートを倒すと奥行きが2mもあるフラットなスペースが創出できるのは圧巻だ。アウトドアで使う大きな道具もラクに載せることができるし、車中泊もしやすい。引き出し式のデッキチェアやデッキテーブルなど気の利いた装備が設定されていて、旅先でちょっとくつろいだりと、仲間や家族とのアクティブライフをより楽しめるようなつくりとなっている。

 

フル乗車しても狭さを感じないよう後席の居住空間や装備も十分すぎるほど確保されているほか、前席から後席までつながる広大なパノラマルーフのおかげで、どの席に座っても絶大な開放感を味わうこともできる。

↑通常時に570Lの荷室容量を確保しているエステート。リヤシート格納時には1470Lまで広がる。

 

一方、セダンだけ他のタイプとは異質で、SUVの要素は入っておらず、インテリアのクオリティ感も他のタイプよりもだいぶ高い。ただし、水素タンクを3本も搭載するためのスペースを確保した影響で、後席の居住空間はそれほど広いわけではない。あくまでセダンとしての格式に則してしつらえらえられたクルマだと認識すればよいだろう。

 

似たようなクルマがなく、見てかっこよく、乗って楽しく、所有する歓びも大きい

そんな4つの個性が出そろったところで、筆者が買うとしたらどれを選ぶかと聞かれたら、それぞれに魅力があるのでなかなか答えに困る。定番のクロスオーバーやチャレンジングなスポーツもいいし、セダン好きなのでセダンもいいし、エステートでアクティブにカーライフを楽しむのもいい。

 

というわけで大いに悩むわけだが、どれかひとつといわれたら、2025年5月の時点では、スポーツだ。16代目クラウンの4タイプがそれぞれ個性的で独自の魅力を持っている中でも、とりわけそれを強く感じさせるのがスポーツだと思う。世界を見わたしても似たようなクルマがなく、見てかっこよく、乗って楽しく、所有する歓びも大きいに違いない。

 

HEVでも十分に満足できるが、より瞬発力がありハンドリングが俊敏でエキサイティングな走りが楽しめるPHEVの走りを知ってしまった。だから、筆者はそれなりに価格差があろうとPHEVを選ばずにいられない。

 

ボディカラーは、エモーショナルレッドとアッシュとマスタードのどれにするか迷うところだが、これまた他にはない点を重視して、スポーツの特徴的なフォルムによく似合うマスタードを選びたい。せっかくだからブラックルーフで。街中でとっても目立ちそうだ。

↑岡本さんが購入するなら「クラウン(スポーツ)」。マスタードというボディカラーのチョイスがニクい。

 

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